2017年04月17日号

(2017年04月10日~2017年04月14日)

先週の為替相場

地政学的リスクを意識

 10日からの週は地政学的リスクを強く意識した展開となった。

 週の初めは、7日に報じられたダドリーNY連銀総裁によるFRBのバランスシート正常化に関する発言の影響が残り、ドル買いがやや優勢な展開となったが、月曜日のNY市場からは全般的にドル安円高の流れに。

 米原子力空母の朝鮮半島付近への配備などに対して、北朝鮮側が強く反発したことなどが、市場のリスク警戒感を誘った。

 シリア問題での米ロの対立もドル円の重石となっており、11日のNY市場では、米ロ外相会議に向かったティラーソン米国務長官が利用する空港で、長官の到着直前に黒煙騒ぎが起こったこと(その後テロとは無関係と判明)などを嫌気し、これまで下値を支えてきた110円をしっかり割り込む動きが見られた。

 12日の海外市場ではトランプ大統領による「ドルは強すぎる」発言を受けて、109円割れまでドル安円高が進行。その後少し戻したものの、戻りは鈍く、地合いの重さが印象的に。

 北朝鮮が15日の故・金日成主席生誕105年祭に向けて、核・ミサイル実験を強行するのではとの憶測も、ドル円の重石となり、ドル安円高が優勢なまま週の取引を終えた。

今週の見通し

 地政学的リスクを意識した展開が当面続きそう。

 北朝鮮情勢に関しては、トランプ大統領が16日のツイッターで「中国が北朝鮮問題で米国と協力している限り、為替操作国と呼ぶ必要はない」と発言するなど、中国からの圧力拡大が期待されている。期待通り中国が北朝鮮をコントロールする姿勢を示すことが出来れば、警戒感は一服する可能性も。

 ただ、この後も25日に朝鮮人民軍創設80周年記念式典が予定されているなど、北朝鮮ではイベントが続く。金正恩委員長が国威発揚のための核・ミサイル実験を実施する可能性が懸念されるだけに、当面は頭の重い展開が続きそう。

 日銀短観で示された17年度の想定為替レート(用語説明1)108円43銭を割り込む動きとなっており、実需関連での売り遅れも懸念材料に。戻ったところでは本邦輸出勢などからの売りが予想され、頭を抑えてくる可能性。

 23日に迫ったフランス大統領選(用語説明2)に関する警戒感も本格的に強まりそう。最新の世論調査では、ルペン氏とマクロン氏による支持率トップ争いという構図自体は変化がなかったものの、フィヨン氏とメランション氏が追い上げており、上位4名の支持率の差が縮まってきた。このうち極右といわれるルペン氏と、急進左派であるメランション氏の決選投票という形になった場合、ユーロへの影響がかなり大きくなるとして警戒感を誘っている。

 選挙当日までは状況が不安定なだけに、ユーロドル、ユーロ円ともに頭の重い展開となりそう。ユーロ円は115円をしっかり割り込み、重要なサポートである112円を意識する展開も。

 北朝鮮リスクに加え、フランス大統領選を前にしたユーロ円でのユーロ売り円買いの可能性もあり、ドル円は頭の重い展開が続きそう。105円を意識する展開となる可能性も。

用語の解説

想定為替レート 企業が業績見通しや今後の事業計画を決める際に前もって決めておく為替レートのこと。輸出企業の場合、想定為替レートよりも円安に進めば為替差益が生じ、円高に進めば為替差損が生じる。
 日本銀行が短観調査の中でアンケートをもとに年度や半期の数字を公表している。2017年3月調査で示された大企業製造業の17年度ドル円想定レートは108円43銭。
仏大統領選 5年に一度行われるフランスの大統領を決める選挙。一回目の投票で過半数の票を獲得する候補がいない場合、2週間後に上位2名による決選投票が行われる。1965年以降、一回目の投票で決定したことはない。今回は4月23日に第一回目の投票が実施され、5月7日に決選投票が行われる。
 現時点で支持率トップを争うマクロン前経済相、ルペン国民戦線党首でも、支持率は20%台前半であり、第一回目の投票で大統領が決まる可能性はほぼない。
 両氏と、フィヨン元首相、メランション左翼党共同党首の4名が20%前後の支持率で争っており、5位以下を少し引き離しているため、この4名のうちの2名が決選投票に進むとみられている。

今週の注目指標

日米経済対話
4月18日
☆☆☆
 2月に行われた安倍首相とトランプ大統領との初の日米首脳会議の場で開催が決定した麻生副首相兼財務相とペンス副大統領という日米のNo.2同士による会合が、18日に初めて開かれる。
 12日にトランプ大統領が「ドルは強すぎる」と発言するなど、貿易不均衡の是正に意欲的なトランプ政権だけに、ペンス副大統領も通商問題を最優先課題として対話に臨むと見込まれる。日本側としてはいかにうまく批判をかわして米国への協力体制をアピール出来るかが焦点となる。ペンス副大統領からドル高牽制発言が示されるようだとドル売り円買いに。ドル円は106円台に値を落とす可能性も。
G20
4月20日・21日
☆☆☆
 20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、20日、21日に米国のワシントンD.C.で開催される。先月ドイツのバーデンバーデンで開かれた前回会議では、これまで共同声明に盛り込んできた「保護主義に対抗する」との文言が外され、米国の圧力が意識された。先週末に米財務省高官が「為替問題は重要」と発言するなど、米国は貿易不均衡の是正に積極的な姿勢を継続しており、今回のG20でも通商問題をめぐって激しい議論が期待される。
 今回は前回の会議から時間がそれほど立っていないこともあり、共同声明の提出は見送られる見込み。それだけに市場としては若干反応が難しいが、同会議を受けての要人発言において、米国の保護主義的な姿勢が強調されるとドル売りに。ドル円は105円を大きなターゲットとして下方向のリスクが強まりそう。
仏大統領選
4月23日
☆☆☆
 フランスの大統領選の第一回投票が23日に行われる。極右といわれる国民戦線のルペン党首と中道無所属のマクロン前経済相が支持率トップで争っている。両者による決選投票になった場合は、極右勢力への忌避感からマクロン氏が優位に立つとみられており、市場に与える影響は限定的なものとなりそうだ。
 ただ、ここにきて急進左派であるメランション左翼党共同党首が支持率を一気に伸ばしてきており、3番手につけていたフィヨン元首相に支持率で並んできた。上位二名との支持率の差もそれほどなく、決選投票に進む可能性は十分にある。もし、ルペン候補との決選投票となった場合、極右対極左と、中道不在の決選投票になり、どちらが大統領となった場合でもかなりの混乱が予想される。
 この場合一気のユーロ売りが入る可能性も。ユーロ円は112円がターゲットに。

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