2017年04月24日号

(2017年04月17日~2017年04月21日)

先週の為替相場

フランス・北朝鮮中心に地政学的リスクを意識

 17日からの週は、これまでの流れを引き継いで地政学的リスクを強く意識した展開が続いた。

 週明けは、16日に行われた北朝鮮のミサイル実験に関する懸念から円買いの動きが優勢となった。

 ドル円はイースターマンデーで海外の取引参加者が少なくなる中で、一時108円10銭台まで値を落とす動きに。

 もっとも、108円の大台を維持したことによる利益確定の動きに加え、マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官(用語説明1)が、「今こそ軍事的選択肢を除くあらゆる行動に出るべき時だ」と、北朝鮮を強く非難する姿勢を示しつつも、すぐの軍事行動に否定的な姿勢を示したことで、有事リスク後退を意識した円買いの動きが収まった。

 同日のNY市場でムニューシン財務長官が年内の税制改革に向けて、改革案を早期に提出する意向を示したことも、ドル円の買い戻しにつながった。

 翌18日はメイ英首相の声明に振り回される格好となった。ロンドン市場の朝方に、この後メイ首相から重大な発表があると報じられ、市場は警戒感からポンド売りが進行。首相は6月8日に総選挙(下院・用語説明2)を行う意向を示し、一転してポンド買いが進んだ。メイ首相の支持率の高さや、ブレグジット対応への評価の高さから、総選挙の結果、首相の政権基盤が安定し、ブレグジットがよりスムーズに進むとの期待がポンド買いを誘った。

 週末にかけては23日のフランス大統領選をにらむ展開に。直前の世論調査で中道無所属のマクロン氏が極右国民戦線のルペン氏を抑えて支持率でトップに立ったことが、ユーロの買い戻しを誘った。

 市場はこのところ急速に支持率を伸ばしていた急進左派のメランション氏が上位二名に食い込み、ルペン氏との間で極右対極左の決選投票になる事態を懸念していたが、マクロン氏が支持を伸ばしたことで、その可能性が後退したとみて、ユーロ買いに。

 仏独株の堅調な地合いもあって、ドル円が109円台に乗せるなど、リスク懸念後退による円売りも進んだ。

今週の見通し

 北朝鮮リスクなどを警戒する動きは当面続きそうだが、市場は円売り方向への期待を強めつつある。

 フランス大統領選に関しては、5月7日の決選投票待ちということになるが、極右に対する強い忌避感からマクロン氏が勝利するという見通しが大勢を占めている。

 ルペン氏が新大統領となりフランスのEU離脱への動きが本格化するという、長期的に世界の投資資金の流れを大きく左右する事態が避けられる見通しとなったことで、短期のみならず、中長期的にも警戒感が後退し、地政学的リスクへの対応を中心にした展開から、経済的な状況へ目を向けた展開に市場の流れが変化するのでは、という期待が広がっている。

 この場合、6月の利上げ期待が根強いドルに対する買いが強まる可能性が高い。

 ドル円はポイントの110円をいったん超えたことで、上値トライがやりやすくなっている面もあり、株式市場動向次第では112円をトライする展開も。

 これまで買いに慎重になっていた欧州通貨に対する買いも強まりそう。

 ユーロに関しては、今回のフランス大統領選リスクを意識したユーロ売りの調整がもう少し続く流れか。

 ユーロポンドなどでもユーロ売りが広がっていただけに、ユーロにはもう一段の上昇余地。ユーロ円は3月の高値122円台後半がターゲットとなりそう。

 最大のリスクは北朝鮮情勢。25日の朝鮮人民軍創設85周年記念において、国威発揚のための核・ミサイル実験などを強行してくると、有事リスクが再び強まる展開に。この場合ドル円・クロス円での円高が広がりそう。ドル円は108円を意識する展開も。

用語の解説

国家安全保障問題担当大統領補佐官 National Security Advisor (正式にはAssistant to the President for National Security Affairs)は、国防を中心に外交なども含めて大統領に助言・政策の立案を行う職務。外交問題担当閣僚の国務長官、国防・軍事担当閣僚の国防長官などとともに、大統領を国防面で支える重要職で、コンドリーザ・ライス氏やコリン・パウエル氏、ヘンリー・キッシンジャー氏など、同職を経て、その後国務長官を務めた例もある(キッシンジャー氏は一時両職を兼務)。
英総選挙 英国の下院(庶民院)の議員を決定する選挙。下院の任期は5年であるが、かつては任期前に解散総選挙が行われることが一般的であった。その後の法改正で首相の解散権に制限がかかり、解散に際して議会の2/3の賛成が必要となったこともあり、2010年、2015年と2期連続で任期満了後の選挙となっていたが、今回、野党労働党なども賛成して6月8日に総選挙が実施されることとなった。なお、英国の上院(貴族院)は各議員の立場(世襲貴族・一代貴族・法務貴族・聖職貴族)によって貴族院の一員となるため、選挙は行われない。
 

今週の注目指標

トランプ大統領税制改革案発表
4月26日
☆☆☆
 トランプ大統領は21日、「水曜日(26日)に税制改革に関する重大な発表をするつもりだ」と発言。大規模な減税を柱とする税制改革の大統領案を発表することを明らかにした。
 下院共和党は法人税の国境調整を提唱しているが、WTOのルールに抵触する可能性が高く、慎重な対応が必要となる。国境調整をトランプ大統領案でも採用した場合、ドル買いに繋がる可能性が高い。ドル円は112円台を試す可能性も。
ECB理事会
4月27日20:45
☆☆
 ECB理事会が27日に開かれる。政策金利は現状維持で見通しが一致している。最大の懸念材料であったフランスの大統領選第一回投票が終了したこともあり、市場は今後の緩和政策の後退時期を探る動きを強めている。ドラギ総裁はこれまで現状の緩和姿勢を維持する意向を示しているが、ドイツなどから緩和解除に向けた圧力が強まりそうなだけに、理事会後の総裁会見に注目が集まる。今後の緩和後退を示唆するようだとユーロ買いに。ユーロドルは1.10をターゲットとしそう。
米第1四半期GDP(速報値)
4月28日21:30
☆☆☆
 先月利上げを実施、6月にも追加利上げが期待されるなど、利上げサイクルに入っている米国。背景には雇用を中心に力強い米国の経済状況がある。そうした中、28日には、米国の第1四半期GDPが発表される。前回2016年第4四半期のGDPは好調な個人消費に支えられて前期比年率+2.1%となかなかの数字を記録した。しかし、今回の数字は一気に伸びが鈍化して同+1.1%が予想値となっている。これは昨年通年のGDP成長率+1.6%と比べても弱めの数字。
 2月3月の小売売上高が前月比マイナスとなるなど、個人消費に陰りが見られることが、弱めの見通しの背景にある。ある程度は織り込みが済んでいると見られるが、増加率が1%を割り込むなど、予想以上に鈍化が進んだ場合は、今後の利上げ期待の後退につながり、大きなドル売りとなる可能性も。この場合ドル円は108円台を意識する展開となりそう。

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