2017年05月01日号

(2017年04月24日~2017年04月28日)

先週の為替相場

地政学的リスクが後退し、円売り広がる

 24日からの週は、23日に行われたフランス大統領選の第一回投票の結果を受けて、欧州の政治リスクへの警戒感が後退し、円売りが広がる展開となった。

 フランス大統領選の第一回投票では、中道無所属のマクロン候補と極右国民戦線党首ルペン候補(24日に党首を一時辞任)が得票数上位二名となり、5月7日の決選投票に駒を進めることとなった。

 市場が懸念したルペン氏とメランション氏の極右・極左対決が避けられたことや、マクロン氏とルペン氏の決選投票の場合、マクロン氏が相当に優勢との見方が広がったことなどから、安心感からのユーロ買い円売りが強まった。

 ユーロ円は117円近辺から122円近辺に。ユーロ円に支えられる格好でドル円も109円台から111円台に乗せる動きとなった。

 もう一つの懸念材料、北朝鮮リスクに関しても、25日の朝鮮人民軍創建85周年記念日前後での実施が懸念された核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験が見送られたことから、リスク警戒感が後退。円売りを誘う展開となった。

 週の後半にかけてもドル高ユーロ高円安の基調が継続。

 木曜日のECB理事会は事前見通し通り金融政策の現状維持を決定。理事会後のドラギ総裁会見では、景気判断の上方修正が見られ、いったんはユーロ買いが広がったが、出口戦略やフォワードガイダンス変更について、議論がなかったと明言されたことで、一転してユーロ売りが強まった。

 フランス大統領選の決選投票に関する世論調査で、一貫してマクロン氏の優勢が報じられたことも、市場の安心感を誘った。

 12月に合意した暫定予算の期限が4月28日までということで、4月29日以降の政府閉鎖が懸念された米国の予算問題(用語説明1)について、28日に暫定的に1週間のつなぎ予算が承認されたことで、懸念が後退したことも、ドル円のサポートとなった。

今週の見通し

 東京勢が祝日となる週の後半に重要イベントが並んでいる。基調はドル買い円売り。5日の米雇用統計で好結果が期待されていること、7日の仏大統領選の決選投票でマクロン氏の優位が続いていることなどが、ドル円、クロス円のサポートに。

 地政学的リスクが後退し、市場の注目がファンダメンタルズに移れば、6月の利上げ期待が強い米国の状況が好感される格好となる。

 今週のFOMC、雇用統計などの結果次第では、6月の利上げに加え、9月にも利上げを実施し、12月のFOMCでバランスシートの正常化(用語説明2)に向かうというシナリオが現実味を帯びる。この場合、中長期的にかなりのドル買い材料となりそう。

 ドル円はしっかりとした流れの中、ターゲットの113円を意識か。110円ちょうどから半ばにかけての水準がサポート水準。同水準を割り込まない限り、トレンドは上方向。

 ユーロは決選投票への期待感からしっかりの展開。マクロン氏とルペン氏の得票見込みは各世論調査とも60%対40%前後で一致しており、ここからのルペン氏の逆転は難しいと見られている。

 今週発表される世論調査結果に大きな変化がなければ、ユーロは堅調地合いを維持しそう。選挙前でユーロ買いを控える動きが一部であるため、選挙後はもう一段の上昇も期待されており、今週は基本しっかりの展開に。

 ドル円の上昇基調もあり、ユーロ円は直近高値を超えて、3月に上値を抑えた123円手前への戻りを試す可能性も。

用語の解説

米予算 米政府の会計年度は10月1日から9月30日まで。2017年度予算の場合、通常2016年10月1日から2017年9月30日までとなるが、少数与党であった民主党と共和党の間で予算案がまとまらず、当初は10月1日から12月9日まで、12月9日に12月10日から4月28日までの暫定予算案で合意し、4月29日以降9月30日までの本予算を4月28日までに決定することとなっていた。期限までに本予算もしくは暫定予算で合意がないと、政府機関が一部閉鎖されることとなる。これまでの例では、2013年10月1日から始まる2014年度予算が期限までに暫定予算でも合意できず、政府機関が一時閉鎖された。
バランスシートの正常化 米FRBはこれまで3回に渡って量的緩和(QE)政策を行い、その結果としてバランスシートがリーマンショック前の約9000億ドルから、約4兆5000億ドル規模にまで拡大した。米当局は膨れ上がったバランスシートを、将来的に、より正常に近い状況に縮小する意向を示しているが、一気に縮小を進めると金融引締効果が大きくなりすぎる懸念があるため、FRBいわく「徐々に予測可能な形で行う」必要がある。保有する債券を売却するのではなく、現在は全て再投資に回っている満期償還された債券について、一部の再投資を取りやめる形でバランスシートの正常化を図る方針が取られると見られている。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
5月2日・3日
☆☆
 2日、3日に米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。結果発表は日本時間4日の午前3時。前回3月のFOMCで追加利上げに踏み切ったばかりであり、今回のFOMCでは金融政策は据え置かれる見込みで市場の見方が一致している。
 また、今週のFOMCは、会合後の議長会見や、会合参加メンバーからの経済・金利見通しの発表が行われない回にあたっており、もともと利上げ見通しは小さいものであった。
 ただ、市場は6月のFOMCでの利上げを期待しており、今回のFOMC声明などで、6月の利上げに向けたヒントが出るのではとの期待が一部である。声明内容が今後の利上げに前向きな姿勢を示したものとなると、6月の利上げ期待が押し上げられ、ドル買いが広がる可能性も。この場合、112円台にしっかりと乗せるきっかけとなりそう。
米雇用統計(4月)
5月5日21:30
☆☆☆
 前回は非農業部門雇用者数が予想を大きく下回り、前月比わずか9.8万人増にとどまったものの、失業率が予想よりも低く、約10年ぶりの低水準となるなど、まちまちな結果を見せた米国の雇用統計。
 前回の雇用者数の減少は米国東部を襲った寒波の影響などが指摘されており、今回は19.3万人増と、一気の改善が見込まれている。失業率はさすがに少し戻すものの、4.6%とかなりの低水準となる見込み。
 予想通りの数字が出てくると、米国の雇用市場の堅調さが意識され、6月のFOMCでの利上げ期待を押し上げてくる可能性。この場合ドル円は113円を意識する展開も。
仏大統領選決選投票
5月7日
☆☆☆
 4月23日に第一回投票が行われたフランスの大統領選挙は、上位二名に入ったマクロン候補とルペン候補が5月7日の決選投票に駒を進めた。両者の第一回投票での得票率は24.01%と21.30%と、比較的僅差であったが、決選投票に向けた世論調査結果は60%対40%程度と、かなりの差をつけてマクロン氏がリードしている。極右政党国民戦線の党首であったルペン氏に対する極右への忌避感が、第一回投票で敗れた候補を支持していた層のマクロン支持につながっている。
 事前見通し通りマクロン氏が勝利した場合、大きなサプライズ感はないが、安心感からユーロはしっかりの展開が予想される。万が一ルペン氏が勝利した場合、ユーロはパニック売りも。この場合、ユーロ円は一気に115円を目指す可能性も。

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