2017年05月08日号

(2017年05月01日~2017年05月05日)

先週の為替相場

6月の利上げ期待強まる

 1日からの週は、ドル円が一時113円を付けるなど、円安が優勢な展開となった。週前半の米企業決算が軒並み強く、米株高が進行。また、5月7日のフランス大統領選決戦投票を前に世論調査で中道派のマクロン候補の支持率が上昇し、ルペン氏と相当な差がついたことによる政治リスクの後退がドル買いを誘った。

 2日、3日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、事前見込み通り金融政策の現状維持を決定。3月に追加利上げに踏み切ったばかりということで、今回のFOMCでの利上げ期待はほとんど見られず、据え置き自体は予想通り。注目された声明では、1-3月期GDPが前期比年率+0.7%に鈍化したことについて、「一過性のもの」である可能性が高いという認識を示し、労働市場の堅調さがますます強まっていると、従来通りの前向きな姿勢を維持したことで、6月の追加利上げへの期待感が広がった。

 5日に発表された4月の米雇用統計では、前回3月分が前月比+9.8万人(その後+7.9万人に下方修正)とかなり弱めに出た非農業部門雇用者数が、+21.1万と事前予想の19.0万人をも超え、節目である20万人の大台にのせる好結果に。前回4.5%とかなりの低水準となった失業率は、4.6%への鈍化予想に対して、4.4%と約10年ぶりの低水準を記録するなど、こちらも好結果に。平均時給の伸びが鈍かったものの、全般に好結果で、FOMCに続いて6月の米利上げ期待を押し上げた。

 もっとも、ドル円は4日に113円を付けた後は、若干調整の動き。ドル高基調は継続も、東京勢がGWで不在となる中で、高値追いの動きに慎重な姿勢が見られた。

 ユーロは3日に行われたテレビ討論会の結果、マクロン氏が支持を広げ、ルペン氏との差を広げたことから、週の後半にかけて安心感からのユーロ買いに。世論調査結果という形でマクロン氏のリード拡大を確認した4日の海外市場からユーロ買いの動きが加速し、週末には対ドルで1.10を試す展開に。対円ではドル円などでの円安の動きも加わって、124円を試す動きが見られた。

 資源国通貨、特に豪ドルはやや軟調。主要な輸出品である鉄鉱石の下落(用語説明1)が嫌気されて、対米ドルを中心に豪ドル売りが進んだ。米国の6月の利上げ期待拡大により、豪ドルとの金利差縮小の流れが嫌気された面も。

今週の見通し

 フランスの大統領選の決選投票が7日に終了し、欧州の政治リスクが後退。FOMCや雇用統計といった米国の注目イベントも過ぎ、全般にリスク警戒の動きが後退している。

 市場の注目が政治リスクからファンダメンタルズ(経済の基礎的な状況)に移ってきている。こうした中、6月の追加利上げ期待が広がっている米ドルは買われやすい展開に。

 CMEFedWatch(用語説明2)で示されているFF金利先物市場の動向から計算された利上げ確率をみると、先週初め時点で6月13日、14日のFOMCで利上げが実施される確率は7割弱となっていた。FOMC、米雇用統計を受けて、先週末時点では8割弱まで上昇してきており、利上げ期待が広がる展開に。

 こうした政策金利見通しの変化は中期的に大きな材料となることが多い。ドル円は上方向を意識する展開に。

 113円台にしっかり乗せると、ターゲットは3月に付けた115円台半ばか。

 欧州通貨も上昇期待が強い。政治リスクが後退したことで、ドイツなどから緩和政策解除への圧力が強まることが予想される。

 ドラギ総裁は緩和政策を維持する姿勢を崩していないが、先週発表されたユーロ圏小売売上高の好結果などにもみられるように、ユーロ圏経済は回復傾向にあり、現状の主要政策金利ゼロ、中銀預金金利マイナスという金利政策に加えて、量的緩和を実施している超緩和的な現状の政策への批判が強まる可能性も。

 出口戦略の話題が出てくると、いったんユーロ買いの流れに。

 先月17日の安値からすでに約9円も値を上げているユーロ円であるが、ユーロ買いと円売りの両面から上昇圧力を受けており、もう一段の上昇が期待される。昨年12月に付けた高値近辺までの動きとなっているが、この水準をしっかり超えると、次のターゲットは126円近辺まで。

用語の解説

鉄鉱石価格の下落 世界有数の資源大国である豪州は、資源の中でも最大の輸出品が鉄鉱石関連である。直近2017年3月の商品輸出データを見ると、全輸出の実に31.1%が鉄鉱石関連となっている。中国の建設ブームを受けて昨年夏ごろから上昇を続けてきた鉄鉱石価格であるが、このところ大きく下落中。中国の大連先物市場での価格を見ると、3月17日に735元を付けていたが、先週5日には445.5元と、1か月半ほどで実に40%弱も下落しており、豪州経済にとって深刻な状況となっている。
CMEFedWatch シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが、1年後までのFOMC毎に、予想金利水準を割合で示したもの。ニューヨーク連銀が公表するFF実効レート(FFER)を元にしたFF金利先物市場(CMEグループのシカゴ商品取引所CBOTに上場)の価格動向から計算されている。

今週の注目指標

G7財務相・中央銀行総裁会議
5月11日~13日
☆☆
 5月11日から13日までイタリアのバーリでG7(主要7か国)財務相・中央銀行総裁会議が開催される。保護主義的な動きを強めるトランプ政権と、他のG7諸国との意見の相違などが注目材料に。先月行われたG20財務相・中央銀行総裁会議では、従来からの合意事項である「通貨安競争の回避」が再確認された。トランプ大統領がドル高を牽制する姿勢を示し、日本に対して通貨安政策をとっていると批判する中で、G7に出席するムニューシン米財務長官らに、日本の立場について理解が得られるのかなども注目されるところ。トランプ政権への批判が広がるようだと、リスク警戒感からドル売り円買いの動きが強まりそう。ドル円は111円を意識する展開も。
英中銀金融政策会合(MPC)
5月11日20:00
☆☆☆
 英中銀の金融政策会合(MPC)の結果発表が11日20時に行われる。今回は3か月に一度のスーパーサーズデー(英中銀会合結果、四半期インフレ報告における経済見通しの発表、カーニー総裁の記者会見が揃う日)にあたっており、通常のMPCよりも注目度が高い。
とはいえ、来月総選挙を控える中で今回のMPCで金融政策が変更される可能性はほとんどないと見られている。
注目は総裁会見と経済見通し。英国の消費者物価指数は2月分以降インフレターゲットである2%を超えてきており、ブレグジットの影響がなければ、利上げに踏み切っていてもおかしくない状況。今後の利上げに向けた姿勢が会見や見通しから意識されるとポンド買いにつながりそう。ポンド円は147円をしっかりつけると、150円が視野に入ってくる。
米小売売上高(4月)
5月12日21:30
☆☆☆
 米国の6月の追加利上げ実施が期待される中、やや警戒されているのが個人消費の鈍化。先月発表された1-3月期のGDPにおいて、GDP全体の約7割を占める個人消費が前期比年率でわずか+0.3%の伸びにとどまったことが、GDPの弱さにつながった。個人消費動向を示す小売売上高の数字も、2月、3月と前月比マイナス圏に沈んでおり、個人消費の鈍化を意識させる結果となっている。もっとも、3月の小売売上高の低迷は寒波の影響によるところも大きいと見られている。今回天候要因がなくなることで、一気に前月比+0.6%と大きく回復することが期待されている。期待通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、6月の利上げ期待を後押しし、ドル買いにつながると期待される。ドル円は113円台にしっかり乗せて、中期的なターゲットである115円から116円にかけての水準を意識する展開も。

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