2017年05月15日号

(2017年05月08日~2017年05月12日)

先週の為替相場

米利上げ期待からドル高へ

 8日からの週は、6月の米利上げ期待がドル高を誘い、ドル円が一時114円台を付ける場面が見られるなど、ドル高円安の動きが広がった。

 7日に行われたフランス大統領選決戦投票において、事前見通し通り中道派のマクロン候補が勝利し、反EU主義のルペン候補が敗れたことで、欧州の政治リスクが後退。市場の注目が政治情勢から各国の経済情勢に移ったことで、利上げ期待が広がる米ドルの買いが入りやすくなった面も。

 2日、3日の米連邦公開市場委員会や5日の米雇用統計を経て強まった6月の米利上げ期待は、先週前半にさらに強まり、FF金利先物市場動向から計算された利上げ確率は一時9割近くまで上昇する場面が見られた。

 利上げ期待の拡大に押し上げられる形でドル円は114円台を付ける動きに。もっとも、高値圏では利益確定の売りなども見られ、週の後半は113円台に押し戻された。

 注目された12日発表の4月の米小売売上高は、前月比+0.6%の予想に対して+0.4%、変動の激しい自動車部門を除いた数字も前月比+0.5%の予想に対して+0.3%と、予想を下回る結果となった。

 堅調な雇用情勢に裏付けられた経済成長が米国の利上げ期待の背景にあるが、懸念されているのは個人消費の鈍さ。先月28日に発表された米第1四半期GDPが前期比年率+0.7%と低調な数字にとどまった主要因である個人消費については、第2四半期以降の拡大が期待されていたが、今回、個人消費動向を示す小売売上高が冴えない結果となったことで、利上げに対する警戒感につながった格好。

 米小売売上高と同時に発表された米消費者物価指数も弱めに出たこともあり、6月の利上げ確率は一時7割弱まで低下。ドル円が113円台前半まで値を落とすなど、ドル売りの材料となった。

 11日木曜日が英中銀金融政策会合(MPC)の結果および議事録の公表と四半期インフレ報告の発表が同時に行われるスーパーサーズデーとなった英国。

 消費者物価指数が二か月連続でターゲットを超えるなど、物価上昇傾向が著しいこともあり、今後の利上げへの動きを見せるかと期待された英中銀であったが、四半期インフレ報告では今年のインフレ見通しこそ引き上げられたが、2018年、2019年の見通しを引き下げてきた。会合後のカーニー総裁の会見では、インフレについて、国内のコストや賃金は依然抑制されていると、物価上昇圧力を懸念していないことが示されており、当面現状の緩和的な政策が継続するとの見通しが強まった。

 ポンドはインフレ報告や総裁会見を受けて売りが優勢に。ポンド円は147円台から146円台に値を落とし、金曜日の米指標を受けての円高もあって、週末には145円台までポンド安が進んだ。

今週の見通し

 6月の米利上げ期待が少し落ち着いたこともあり、それまでの急激なドル高期待がやや収まり、もみ合いの展開となっている。

 もっとも、依然として6月の利上げ期待が大勢であり、下がったところではドルの買い意欲が見られる。

 米主要企業決算が基本的に好調な結果に終わったこともあり、世界的な株高傾向が継続。リスク選好の動きが強まっていることも、ドル円、クロス円のサポート材料となりそう。

 週末14日に実施された北朝鮮の弾道ミサイル実験への警戒感は限定的。もっとも、中国が国策として力を入れている一帯一路構想の中での、第一回一帯一路サミット(用語説明1)の初日に実施したことで、今後の中国と北朝鮮との関係悪化が見込まれ、状況次第ではリスク警戒感が強まる可能性も。

 今週はそれほど目立った材料がなく、米株式市場や債券市場動向を見ながら、6月の利上げ期待の変化を探る展開となりそう。

 ドル円はもみ合いを経て、114円台を再び伺う展開か。

 114円台半ばから115円にかけての売り意欲は健在も、先週の高値からの調整が限定的なものにとどまっているため、あきらめて高い水準でドル買い円売りに回る参加者も予想され、展開次第では115円上抜けも。

 クロス円も基本しっかり。ただ、商品市場がまだ不安定で、資源国通貨は買いにくい。ユーロ円やポンド円などで、欧州通貨買い円売りの動きか。

 特にポンド円に関しては、先週後半に値を落とした分、買い戻しに期待感。インフレターゲット(用語説明2)の水準をここ二回連続で上回っている英消費者物価指数が16日に発表され、3か月連続でのターゲット超えが期待されている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、利上げ期待につながり147円から148円にかけての上値抵抗水準を試す可能性も。

用語の解説

一帯一路サミット 一帯一路とは、中国の習近平国家主席が2014年のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議において提唱した現代版シルクロード経済圏構想。この構想に基づいた第一回一帯一路国際協力サミットフォーラムが14日、15日に中国の北京で開催される。中国は同構想を国家プロジェクトとして推進している。ロシアのプーチン大統領や今年のG7議長国であるイタリアのジェンティローニ首相など29か国の首脳が同フォーラム内のサミットに出席予定。安倍首相の出席予定は無いが、日本からは二階自民党幹事長らがフォーラムに出席する。
英インフレターゲット インフレターゲットとは、政府や中央銀行が物価の上昇率に対して明示した目標のこと。英国の場合、1992年に政府から英中銀に小売物価指数から住宅ローン金利を除いたコア部分を前年比2.5%にするというターゲットが課せられ、2004年から現行の消費者物価指数前年比2.0%がターゲットとなった。上下1%が許容水準とされており、同水準を超えると、中銀総裁が議会で説明を行う必要がある。

今週の注目指標

英消費者物価指数(4月)
5月16日17:30
☆☆☆
 5月16日17時半に4月の英消費者物価指数(CPI)が発表される。英CPIは2月、3月と前年比2.3%を記録。インフレターゲットの2.0%をはっきりと超えてきている。今回は2.6%とさらに上昇する見込み。カーニー総裁は先週の会合後の記者会見で、今年終盤に2.8%を超える水準でピークに達すると発言。2%を超えていく状況を許容する姿勢を見せている。ただ、予想を超えてさらに強めの数字が出てくると、英インフレターゲットの許容上限である3.0%超えが現実味を帯びてくる。この場合、利上げ圧力が高まると予想され、ポンド買いが強まる可能性も。ポンド円は先週の高値水準148円近辺を超えて上昇する可能性も。
米週間石油在庫統計
5月17日23:30
☆☆
 米エネルギー庁エネルギー情報局が毎週発表している石油関連の在庫状況。先週10日の発表では、原油在庫が前週比524.7万バレルと今年最大幅となる減少を記録。市場の供給過剰懸念を大きく後退させ、NY原油先物市場が上昇する展開となった。今週の在庫統計でも減少傾向が継続すると、NY原油先物がもう一段持ち上げられ、50ドルの大台を回復してくる可能性も。この場合、豪ドルなど資源国通貨の買いにつながると期待される。豪ドル円は85円台の回復も。
日本GDP速報値(第1四半期)
5月18日08:50
 18日に日本の第1四半期GDP1次速報値が発表される。予想は前期比年率+1.8%と、昨年第4四半期の+1.2%から上昇する見込み。雇用環境の改善などが下支えし、好数字が期待されている。予想前後もしくはそれ以上の数字が出てくると日本の出口戦略への期待感につながるが、黒田日銀総裁が慎重姿勢を崩していないため、出口戦略期待での円高効果は限定的か。強めの数字を好感した円売りの影響が勝ると見られ、ドル円は114円台半ばに向けてしっかりの展開か。

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