2017年05月22日号

(2017年05月15日~2017年05月19日)

先週の為替相場

トランプ大統領の情報漏洩問題を受けてドル売り広がる

 15日からの週は、トランプ大統領がロシアのラブロフ外相らへ中東過激派組織ISに関する機密情報を漏洩したという疑惑を受けて、大きくドル売りが進む展開となった。

 週明けはユーロ買いで始まった。7日のフランス大統領選決戦投票で中道無所属のマクロン候補が勝利したことを受けて、買われやすくなっていたところに、14日に行われたドイツ最大の州ノルトライン=ヴェストファーレン州の地方選挙でメルケル首相率いる与党CDUが勝利したことを好感し、欧州政治リスク後退からのユーロ買いが強まった。

 15日のNY市場夕方(日本時間16日早朝)に、トランプ大統領の情報漏洩疑惑の第一弾が報じられたが、当初は市場の反応はいまいちなものとなった。

 大統領は情報の開示に関して、かなり強い権限を持っており、たとえ機密情報であったとしても、必要とあれば第3者に開示する権限を有していることから、大きな問題にはならないという見方が広がっていた。

 しかし、翌日になって情報提供元がイスラエルであると追加情報が入り、外交問題になるとの認識が強まったことで、一気に懸念が拡大。コミー前FBI長官(用語説明1)の更迭問題も加わって、トランプ大統領への批判が強まった。

 こうした政治的な混乱により、トランプ政権が進める大型減税やインフラ投資などの政策実現性が低下するとの懸念もあって、一気にドル売りが進行。

 ドル円は一時110円台前半へ、ユーロドルが1.12台に乗せるなど、ドルは基本的に全面安基調。また、ユーロ円などクロス円ではリスク回避の円高が進行した。

 週末金曜日には警戒感が少し落ち着き、同問題で大きく下げた米株にしっかりとした買い戻しが入るなど、リスク回避の動きが収まったことで、ドル円やクロス円は少し買い戻された。

今週の見通し

 リスク警戒感が残るものの、ドル円に関してはドル高円安の動きを期待している。

 トランプ大統領の情報漏洩問題に関しては、警戒感が残り、ドル売り円買い材料となる可能性がある。ただ、短期に事態の進展が進む材料ではなく、安値からドル売り円買いを進めるだけの材料とはなりにくい。

 ドル売りが進んだ大きな要因である、今回の混乱を受けての6月の米利上げ期待の後退に関しては、金利市場の織り込み度合いから見た利上げ確率が回復してきており、ドルの買い戻し材料に。

 23日に提出する予算教書(用語説明2)において、大型減税とインフラ投資の基本方針について、詳細を示してくることも、基本的にはドル買い材料。ただし、こちらに関しては情報漏洩問題で議会との関係悪化が目立つ中で、政策の実現性に対する懸念が広がるようだとドル売りに作用してくる可能性があり、市場の反応に要注意。

 25日に行われるOPEC総会で、来月末で期限を迎える協調減産について9か月の延長合意が決まりそうな状況も、ドル買い円売りに寄与しそう。このところ6週間連続で米国の原油在庫が減少している(米エネルギー庁エネルギー情報局調査)ように、今年1月からの減産の結果、供給過剰といわれていた原油の需給バランスの調整が進んでいる。効果が見られる施策が延長されることで、原油価格の上昇を誘い、その他商品市場にも波及して、豪ドルやカナダドルの買いにつながる期待。対資源国通貨での円安進行は、ドル円にとっても大きな買い材料となる。

 こうした状況から、下値リスクは残るものの、ドル円は基本的に回復する流れを予想している。目先のターゲットは113円。

用語の解説

コミー前FBI長官 ジェームズ・コミー氏は2013年9月にオバマ前大統領によってFBI(連邦捜査局)長官に任命され、2017年5月9日にトランプ大統領により解任されるまで、同職を務めた。長官在職中は、ヒラリー・クリントン前国務長官のメール問題に関して、大統領選の投票日目前に捜査再開を公表したことで、批判を浴びたこともある。かつてはブッシュ政権下で司法副長官を務めたこともある。
予算教書 米大統領は、予算を決定する連邦議会に出席する権利を基本的に持たないため、自身の予算方針について、予算教書という形でまとめ、議会に提出する。通常は2月の第1月曜日を目途に提出されるものであるが、新大統領が就任する年は、就任後に正式に作成を始めるため、提出が遅くなる。予算の編成権は議会にあるため、予算教書に強制力はないが、大統領は議会が作成、承認した予算法案について、拒否権を有するため、教書の内容は、概ね予算法案に反映されることとなる。

今週の注目指標

米予算教書
5月23日
☆☆
 トランプ政権は23日に2018会見年度(2017年10月から2018年9月)の予算教書を議会に提出する。トランプ政権下では初めての予算教書となる。18年度予算に関しては3月に540億ドルの削減という基本方針が示されており、今回の予算教書でその詳細が示される形。低所得者向け公的医療保険(メディケイド)の適用厳格化による支出削減や、環境関連予算の大幅削減などで、予算を抑える一方、国防や国境の壁などインフラ関連へ予算を配分する姿勢を示す見通し。削減予定の予算には、共和党議員が支持しているものも含まれているため、予算教書のままでの現実化はかなり困難となる見込み。大型減税の実現性への懸念が広がるようだとドル売りに。ドル円は111円割れを意識。
FOMC議事録
5月25日03:00
☆☆
 5月2日、3日に行われた米FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が、現地時間24日、日本時間で25日午前3時に発表される。6月13日、14日に開催される次回のFOMCでの利上げ期待が強まる中、5月のFOMCでどのような議論を行ったのかに注目が集まる。委員会後の声明では前期比年率+0.7%にとどまった第一四半期の経済成長について、一時的な公算が大きいとした。こうした見通しに至った議論にも注目。議事録の結果6月の利上げ期待が確実視される状況になると、ドル買いの動きに。ドル円は112円を超えてくる可能性。
OPEC総会
5月25日
☆☆☆
 半期に一度のOPEC(石油輸出国機構)総会が、25日に本部のあるウィーンで開かれる。今月の15日に北京で開かれたサウジアラビアとロシアの代表団との協議では、今年1月からはじまり、来月6月末が期限となっているOPECとロシアなど非OPECの有力国との協調減産について、9か月間の延長で基本合意した。
今回の総会において、9か月の延長がOPEC加盟国及びOPEC非加盟協力国との間で正式に合意され、減産がスタートされるのかがポイントに。減産合意によりNY原油先物が高値をトライしてくるようだと、豪ドル円やカナダ円の買い材料。豪ドル円は84円を目指す可能性。

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