2017年05月29日号

(2017年05月22日~2017年05月26日)

先週の為替相場

神経質な展開続く

 22日からの週は、ドル円が112円台を回復する場面が見られるなど、円高の進行が一服する場面が見られたが、その後再び110円台に値を落とす場面が見られるなど、神経質な展開となった。

 週の初めは、先々週同様にトランプ大統領による情報漏洩疑惑を受けたドル安の流れに110円台をトライする展開に。6月の利上げ期待が回復したこともあり、111円台に回復も、英中部マンチェスターで起きた爆破テロ事件の影響もあり、110円台に急落する場面が見られるなど、頭の重い展開に。

 注目された23日の米予算教書提出では、3月に示された基本方針から大きな変化がなく、発表直後の市場の反応は限定的に。もっとも、その後米株が上昇、米債券利回りの上昇も見られ、ドル円が112円台を回復するなど、ドル高円安が優勢に。

 24日の米連邦公開市場委員会(FOMC・5月2日、3日開催分)では、「景気減速が一過性であるという証拠を待つのが賢明」との言及があり、早期利上げ期待が後退する格好で、ドル売りが進行。もっとも、金利市場などで6月の利上げ期待が根強かったことに、下値では買いが出る展開となった。

 OPEC総会では事前見込み通り減産の9か月延長を決定。事前に織り込みが進んでいたことや、市場の一部が期待していた減産枠の拡大などのサプライズ要素もなかったことから、発表後は原油安が進行。豪ドルやカナダドルでの対円での売りにつられて、ドル円などでも円買いが進んだ。

 もっとも23日に発表された米第1四半期GDP改定値にもみられるように、米景気動向は基本的に堅調。6月の利上げ期待もあり、110円台では買いが出る展開が週の後半まで続いた。

今週の見通し

 下値しっかり感も、上値の重さを感じさせる展開に。

 トランプ大統領による情報漏洩疑惑を受けたドルの重さリスク警戒感が残るものの、6月の利上げ期待が下値を支えている。

 FF金利先物市場動向から計算された利上げ確率を示すCMEFedwatchによると、トランプ大統領による情報漏洩疑惑を受けて、一時60%台まで落ちていた6月の利上げ確率は、直近で88.8%と、90%に迫る動きとなっており、ほぼ織り込み済みといった状況。

 今回のFOMCで追加利上げを実施すると、7月のFOMCでいったん状況を確認し、9月19日、20日のFOMCでさらに利上げすることで、今年の利上げ回数としてFOMCメンバーからも言及のある年3回の利上げをクリア。年末12月12日、13日のFOMCでバランスシートの縮小に踏み切るというシナリオが現実味を帯びる。

 こうした流れはドルにとって中長期的にもかなりの買い材料。

 ドル円は当面しっかりとした展開となりそう。

 そうした中、今週は木曜日にISM製造業景気指数、金曜日に雇用統計と、重要な指標が週の後半に予定されている。よほどの数字が出てこない限り、利上げ見通しに変化はないと思われるが、やや神経質な反応を示す可能性があり、要注意。

 110円台での買い意欲が意識されたまま、週の後半の指標が強めに出ると、ドル円は113円トライに向かう可能性も。

 なお、3日土曜日からFOMC前のブラックアウト期間(用語説明1)に入り、FRB関係者の発言が基本的になくなる。今週は、火曜日にブレイナード理事、水曜日にカプラン・ダラス連銀総裁(今年のFOMCでの投票権〈用語説明2〉あり)、木曜日にパウエル理事、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁(今年のFOMCでの投票権無し)などが講演を予定しており、FOMC前の重要な材料となるだけに、要注意。

 利上げに前向きな発言が目立つようだと、ドル買いの材料となりそう。112円台に乗せるきっかけとなるか。

 その他通貨では8日の下院の総選挙を予定している英ポンドに注目。

 28日に報じられた英紙の世論調査では、与党保守党の支持率は44%と、最大野党労働党の38%と6ポイント差となっている。今月上旬には10ポイント以上差が開いており、保守党の楽勝ムードが広がっていたが、かなり差が縮まってきた。先週マンチェスターで起きたテロ事件などが支持率の低下につながっているとみられる。

 英総選挙で保守党が大勝すると、メイ首相の政権基盤が安定し、ブレグジットに関する交渉でのリーダーシップ発揮が期待されるとの思惑があり、与党の支持率低下はポンド売り材料となる。今週も同傾向が続き、混戦ムードが広がると、もう一段のポンド売りも。ポンド円は140円の大台をトライする可能性も。

用語の解説

ブラックアウト期間 金融政策を決定する会合前後の一定期間、会合参加者の発言を禁じるルールをブラックアウトルールと呼び、該当期間をブラックアウト期間と呼ぶ。会合直前の要人発言によって、市場が混乱することを避けるための決まり。日本の場合、日銀金融政策決定会合の2営業日前から、会合終了後の総裁会見終了時までが当該期間に相当する。米国の場合、FOMCが開催される前々週の土曜日から会合が終了した日いっぱいまでとなっている。今月のFOMCは6月13日、14日に行われるため、3日土曜日から14日木曜日までがブラックアウト期間となる。
FOMCでの投票権 米国の連邦公開市場委員会において、政策決定の投票権を常に有しているのは、FRB議長、副議長を含む7名の理事(現在は2名空席で5名)と、12ある地区連銀の総裁のうち、金融政策の実務を担当するNY連銀総裁(FOMCの副委員長を兼ねる)のみとなっている。NY連銀を除く11の地区連銀総裁は、4つのグループに分けられて、1年毎の輪番で投票権を持つかたちとなる。ただし、投票権を持たない地区連銀総裁も会合には参加している。

今週の注目指標

米ブレイナード理事講演
5月30日
☆☆
 ブレイナードFRB理事の講演が5月30日に予定されている。ハト派(景気を重視し、利上げに慎重な姿勢)で知られる同理事。昨年の利上げを前に、同理事が利上げに前向きな姿勢を示したことが、市場の利上げ期待を押し上げた。今年3月の追加利上げの前にも、利上げを示唆する発言を行っており、6月のFOMCを前に、同理事の発言への注目が集まっている。利上げを示唆する発言が出てくると、市場の利上げの織り込みが進み、113円台トライのきっかけとなりそう。
ISM製造業景気指数(5月) 6月1日23:00
☆☆
 速報性が高いこともあり、注目されている同指標。前回4月分は3月分から2.4ポイント低下の54.8となった。2か月連続の低下となっている。構成項目のうち、注目度の高い新規受注が7.0ポイントの低下、雇用が6.9ポイントの低下と、それぞれ大きく落としており、市場の警戒感を誘った。
 今回の予想は54.6と、小幅ながら3か月連続の低下見込み。好悪判断の境目である50.0を依然として上回っており、影響は限定的とみられるが、予想以上に低下を見せるようだと、ドル売りに作用する可能性も。110円台トライの材料となりそう。
米雇用統計(5月)
6月2日
☆☆☆
 6月13日、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げが期待される中、利上げを決定の重要な材料となる雇用統計(5月)の発表が2日に予定されている。
 前回4月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比19万人増前後との予想を上回る21.1万人増を記録。予想を大きく下回り10万人の大台にも届かなかった3月分から一気に改善し、米国の早期利上げ期待を後押しした。失業率は3月分の4.5%から4.6%程度に鈍化する見込みが、まさかの低下で4.4%となり、完全雇用に近いというFOMCの見通しを支える結果に。
 今回の見通しは、非農業部門雇用者数が18.5万増と、20万人の大台を割り込むものの、まずまずの数字。失業率は4.4%で維持の見込み。
 個人消費動向に影響を与えることもあり、注目度の高い平均時給は、前月比+0.2%と前回の+0.3%から鈍化も、前年比では+2.6%と前回の+2.5%を上回る伸びが期待されており、こちらもまずまずの数字が見込まれている。
 予想前後の数字が出てくると6月の利上げへの期待を後押ししてきそうで、ドル買い材料に。ドル円は113円に向けた動きが期待される。

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