2017年06月05日号

(2017年05月29日~2017年06月02日)

先週の為替相場

ドル売り意識

 29日からの週は、週の前半に米債利回りの低下などを嫌気してドル円が110円台半ばを割り込む場面が見られたが、その後、ADP雇用者数の好結果などを受けて、金曜日の雇用統計発表を前に期待感からのドル買いが広がり、111円台後半まで上昇する展開となった。

 注目された米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく下回り、前回値、前々回値も下方修正されるという弱い結果に。関連指標の好結果で、予想以上の数字を期待していた市場に大きなサプライズを与え、一気にドル売りが進行した。

 ドル円は111円台半ばから110円台半ば割れへ急落。その後の戻りも鈍く、110円台前半で週の取引を終える格好となった。

 8日に総選挙を控えるポンドは神経質な展開に。22日に英中部マンチェスターで起きたテロ事件に対する与党保守党への不満や、最大野党労働党による景気浮揚を前面に出したマニュフェストへの好感などから、保守党と労働党の支持率の差が3ポイント程度に縮小。この結果、保守党が単独過半数を割り込み、第一党は維持したとしても、ハングパーラメント(用語説明1)状態になるとの思惑が広がり、週前半のポンド売りを誘った。もっとも31日に、米債利回りの低下を受けてポンドドルで一気にポンド買いドル売りが進むなど、不安定な展開が続いた。

 OPECなどの協調減産延長決定を受けて下落トレンドが一服していたNY原油は、リビアの増産見通しや、米国内での生産拡大見込みなどを受けて、再び下げが強まる展開に。米トランプ大統領がパリ協定(用語説明2)からの離脱を宣言したことで、米国内のシェールオイル生産が拡大するとの思惑が、原油安につながった面も。こうした動きはカナダドルや豪ドルの重石となった。

今週の見通し

 木曜日のイベントをにらむ展開も、下値リスクを警戒。

 今週は木曜日にECB理事会、英下院の総選挙、米コミー前FBI長官の上院議会証言など、重要なイベントが重なっている。

 これらの結果次第では中長期にわたる投資資金の移動を誘う可能性がある大きな材料だけに、それまでは動きにくさも。

 金曜日の雇用統計の相当弱めの結果を受けても、今月のFOMCでの利上げ期待は変わらず。FF金利先物市場から見た6月の利上げ確率を示すCMEFedwatchは、95%以上の利上げを見込んでいる。7月以降の追加利上げに関しては、年内あと一回の見通しから、年内打ち止めに変化してきており、ドル売りを誘う格好に。もっとも見通しの変化は穏やかで、影響は限定的。

 ポンドは頭の重い展開が続きそう。

 8日の総選挙での苦戦は、結果次第では今後の英国とユーロ圏各国との交渉に悪影響が出る可能性が高く、ポンドの懸念材料に。保守党が単独過半数をやや超えた水準である現有議席を超えてくるようだとポンド買い。この場合は直近の高値である145円台前半が意識されるところ。

用語の解説

ハングパーラメント 選挙において、どの政党も単独で過半数を獲得できず、少数与党による政権運営や、複数政党での連立内閣となるもの。英国の場合、直近では2010年に保守党と自由民主党による連立内閣が発足している。
 英国がこの状態に陥った場合、EUに対するブレグジット関連の交渉を行う中で、メイ首相の求心力の低下や、議会への配慮などが、障害となる可能性がある。
パリ協定 2015年12月に、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された地球温暖化防止のための国際的な協定。1997年に採択された京都議定書以来の18年ぶりとなる気候に関する国際的な協定。世界の平均気温上昇を産業革命前から比べて2度未満に抑え、さらに1.5度未満を目指すことを目標としたもの。
 トランプ大統領は、同協定では米国の負担が大きすぎるとして、選挙戦の時から離脱姿勢を示していた。

今週の注目指標

ECB理事会
6月8日
☆☆☆
 8日のECB理事会では、政策金利の現状維持が確定的。景気見通しについては、何らかの上方修正があると見込まれており、フォワードガイダンスの変更にどこまで踏みこんでくるのかがポイントに。これまでに声明や会見で指摘されていた今後の利下げや債券買い入れの増額について言及した文言が削除されることや、これまで下振れリスクが指摘されていた景気見通しについて、リスクが均衡していると、表現を上方修正してくる可能性などが予想されている。声明や議長会見全体を通じて慎重姿勢が目立つようだと、ユーロが大きく売られる可能性も。この場合123円がターゲットに。
英総選挙
6月8日
☆☆☆
 8日に英下院の総選挙が実施される。メイ首相は昨年6月の国民投票を受けてキャメロン前首相が退陣した後を受けて首相に就任しており、選挙という形で国民の信任を得ていない。高い支持率を背景に、選挙で政権基盤を安定させて、EUとのブレグジットに関する交渉に向かうとの意向で、今回の解散総選挙が実施されたとみられた。当初は与党保守党が支持率で二位以下に大差をつけ、楽勝ムードが広がっていたが、最大野党労働党の打ち出した景気対策を中心としたマニュフェストへの支持もあり、直前になって、情勢は混とんとしている。
 与党保守党が勝利するものの、単独過半数には届かなかった場合、ハングパーラメント状態を嫌ったポンド売りが進む可能性。ポンド円は140円割れをトライする可能性も。
米コミー前FBI長官議会で証言
6月8日
☆☆☆
 トランプ大統領が、ロシアとの関係が取りざたされたフリン前大統領補佐官に対する捜査の終了を求めて当時のコミーFBI長官に圧力をかけたとされる問題で、トランプ大統領に解任された前長官が8日、上院情報特別委員会において議会証言する予定となっている。圧力が実際にあったのかどうかが注目されるところ。大統領による司法妨害の疑いが強まると、政治リスクへの懸念からドル売り円買いが強まると予想される。ドル円は108円をターゲットに値を落とす可能性。

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