2017年06月12日号

(2017年06月05日~2017年06月09日)

先週の為替相場

英総選挙でポンド急落

 5日からの週は、8日にECB理事会、英総選挙、米コミー前FBI長官の議会証言と、重要なイベントが集中したことで、神経質な展開となった。

 週の前半はドル安円高の動きが優勢に。

 8日の英総選挙で与党保守党が苦戦しているとの世論調査結果を受けて、警戒からのポンド円の売りが優勢に。

 6月13日、14日のFOMCに関して、利上げ自体は織り込み済みも、参加メンバーによる金利見通しが引き下げられ、年内は今月のFOMCで打ち止めとの思惑が広がったことも、ドル売り円買いに。米長期債利回りがこうした思惑で低下しており、ドル売りが入りやすい地合いとなった。

 8日の一連のイベントでの反応はいろいろ。

 ECB理事会では経済成長についての自信を見て、景気リスクについて従来の下方リスクへの言及をやめ、リスクは均衡と見通しを修正。一方でインフレ見通しについては2017年、2018年、2019年いずれの年も引き下げた。インフレ見通しの低下は、出口戦略開始の大きなハードルとなることもあり、ユーロ売りが強まる展開に。

 いったん値を落としたところから回復する場面も見られたが、週末にかけて対ドルでユーロ売りが強まるなど、ユーロの重石となった。

 米コミー前FBI長官の議会証言では、トランプ大統領によるフリン氏に関する捜査中止について、要請であったと発言。命令ではなかったことで、捜査妨害とみなすには厳しいという見通しが市場で広がり、ドル買いにつながった。ドル円は110円台を回復する動きに

 もっとも大きな反応が見られたのが英総選挙。日本時間9日午前6時に投票が締め切られ、直後に報じられた出口調査結果で、与党保守党が第一党も過半数を取れずと示されたことでポンドが急落。対ドルで1.29台半ばから1.27近辺に。対円では142円台半ばから139円台半ばまで値を落とした。

 その後、少し値を戻す動きとなったが、開票が進み実際に過半数割れが確定するともう一段の下げに。対ドルでは出口調査結果発表直後の安値をさらに更新し、1.26台へ値を落とす場面が見られた。

 しかし、与党保守党に北アイルランドの地域政党DUP(用語説明1)が閣外協力し、合わせて過半数を超える見込みが報じられ、ポンドは買い戻しに。139円台を付けていたポンド円は141円台を回復する場面が見られた。

今週の見通し

 米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げは織り込み済みも、ドットチャートに対する見通しが分かれており、やや不安定な展開となりそう。

 13日、14日に行われるFOMCでの利上げはほぼ確定的。金利先物市場での利上げの織り込みも進んでおり、利上げ自体の相場へのインパクトは相当弱いと見込まれている。

 注目を集めているのが、FOMC参加メンバーによる経済・金利見通し(プロジェクション)の中でも、年末時点での金利見通しを示すドットチャート(用語説明2)。

 3月のFOMCで示されたドットチャートでは年内3回の利上げ(6月の利上げに加えて、年内あと1回の利上げ)見通しが大勢となり、それ以上の利上げを見込む動きも見られた。

 しかし、エネルギー価格の低迷からインフレ圧力が後退していることもあり、利上げの継続に慎重な姿勢がやや優勢に。

 金利市場での織り込みでは年内は今週の利上げで打ち止めという見方が優勢になっている。こうした状況を踏まえ、ドットチャートでの参加者の見通しがどれだけ変化しているのかが注目材料に。

 3月と同様に9月もしくは12月にもう一回の利上げを見込むようだと、ドル買いの動きが強まると見られる。ドル円は113円をターゲットに。

 その他注目は、英国の政局。

 過半数を取れなかった保守党としては、過半数確保のためにDUPと組むか、法案などの成立に支障が出るケースを考慮しても少数与党政権で挑むかという選択肢が考えられる。

 保守党との共通項も多いDUPであるが、プロテスタント色が強く、同性同士の結婚を禁止するなど、保守党と相いれない部分も大きい。

 特にスコットランド国内での保守党勢力であるスコットランド保守党はディビッドソン代表が同性愛者であり、DUPに配慮しすぎると、同勢力の離反を招く可能性もある。

 メイ首相は党首選で戦ったゴーブ元司法相を閣僚に任じるなど、党内融和を図っているが、党内での求心力低下は否めず、状況次第でポンドは大きく値を崩す可能性も。メイ首相への辞任要求などが強まるようだと、ポンド円は135円をターゲットに値を落とす可能性も。

用語の解説

DUP 民主統一党(Democratic Unionist Party)の略称。北アイルランドにあるプロテスタント系の政党で、北アイルランドとイギリスとの統合を主張するいわゆる「ユニオニスト」と呼ばれる政党の一つ。北アイルランド議会では第一党となっている。今回の総選挙では北アイルランド系の政党で最も多い10議席を獲得した。
ドットチャート 年8回行われるFOMCのうち、半分の4回、3月、6月、9月、12月のFOMCでは、参加メンバー(投票権の有無にかかわらず全ての地区連銀総裁とFRB理事)による経済・金利などの見通し(プロジェクション)が公表される。経済成長、失業率、インフレなどの見通しが示されるが、このうち政策金利見通しについては、今後3年ほどの各年末時点での金利水準の見通しが、チャート上にドットとして示されている。これをドットチャートと呼ぶ。前回3月のFOMCで示されたドットチャートでは、年内に3回の利上げを実施し、年末時点で1.25%~1.50%となるという見通しが9名と最多意見を占めた。それ以下が3名、それ以上が5名という状況であった。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI)(5月)
6月14日 21:30
☆☆☆
 14日の午後9時半に5月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。米国のインフレターゲットの対象は、PCEデフレータであり、CPIではない。しかし、水準こそCPIの方が高く出がちとはいえ、動きはほぼ一致することもあり、発表の早いCPIに注目が集まる。米国のFRBが与えられている二大命題のうち、雇用の最大化についてはほぼ達成しており、今後の利上げ決定に関しては、物価水準を中長期的に2%近辺で安定させるというもう一つの命題が重要な位置を占めると考えられている。その分、CPIに集まる注目は、これまで以上に高くなると予想される。予想は前年比2.0%と、前回の2.2%から鈍化見込み。食品とエネルギーを除いたコアは前年比1.9%と、前回と同水準。エネルギー価格の低迷が、全体の物価を引き下げ、予想以上に物価が低下しているようだと、今後の利上げ期待が後退し、ドル売りを誘う可能性。その場合109円をしっかり割り込む動きも予想される。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月15日 03:00
☆☆☆
 13日、14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。結果発表は日本時間15日の午前3時。その後午前3時半ごろからイエレン議長による記者会見が予定されている。今回のFOMCでの利上げについては、ほぼ確定的。現行の0.75%-1.00%という政策金利(FF金利翌日物金利目標)を、1.00%-1.25%に引き上げると見られている。為替・株式・金利市場はすでに完全に織り込み済みで、利上げ自体の相場への影響は限定的に。注目はその時発表されるFOMC参加メンバーの経済・金利などの見通し。今回以外にも、年内あと一回利上げを行うという3月の見通しが踏襲されると、ドル円は113円に向けて上昇が期待される可能性。逆に、年内打ち止めが示唆されると、108円に向けてドル売りが強まるとみられる。金利以外の見通しにも要注目。特にエネルギー価格の低迷を受けて、物価見通しが引き下げられるようだと、金利上昇圧力が後退することから、ドル売りが広がる可能性。この場合も目先のターゲットは108円。
日銀金融政策決定会合
6月16日 昼前後
☆☆☆
 6月15日、16日に日銀金融政策決定会合が開催される。結果発表は16日の会合終了後、一般的にはお昼前後となる。金融政策に関しては現状維持で市場の見通しが一致している。注目は午後3時半から開かれる黒田日銀総裁の会見。来年4月に任期満了を迎える黒田総裁。任期中に現在の長短金利操作付き量的・質的緩和の長期金利目標を引き上げる可能性は低いとの見方が強く、金融政策は当面は現状維持が続くと予想されている。一方、量的緩和については、このところ出口戦略についての質問などが国会での答弁などでも出てきている。今回の会見では、出口戦略の議論については時期尚早という従来答弁を繰り返すと予想されているが、何らかの話が出てくると、円買いの動きに。この場合ドル円は108円をターゲットに値を落とす可能性も。

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