2017年06月19日号

(2017年06月12日~2017年06月16日)

先週の為替相場

米指標やFOMCで神経質に推移

 12日からの週は、13日、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)前後に動きが出る展開となった。

 110円を挟んだ展開が続いた後、14日の米国市場朝に発表された5月の米消費者物価指数(CPI・用語説明1)と小売売上高がともに予想を下回る弱めの結果となり、ドル売りが進行した。

 とくにCPIのうち変動の激しい食品とエネルギーを除いた数字が、前年比+1.7%と、予想外に前回の+1.9%から鈍化したことは、今後の利上げ圧力の低下を意識させ、ドル売りに繋がった。

 注目されたFOMCでは事前見込み政策金利を0.25%引き上げ、それまでの+0.75%~1.00%から、+1.00%~+1.25%とした。この発表自体はすでに織り込み済みで、市場の反応は限定的に。

 注目されたFOMC参加メンバーによる年末時点での政策金利見通し(ドットチャート)は、3月発表分と同じく年内あと一回の利上げを見込む水準が中心値となった。

 このところのインフレ圧力の低下などから、金利市場では6月の利上げで年内は打ち止めという見通しが強まりつつあっただけに、ドットチャートの結果はドル買いに。

 前日の米指標で値を落とした分を解消し、さらにドル買いが進む展開となった。

 FOMCでの声明や、その後のイエレン議長の記者会見などで、年内のバランスシートの正常化開始について、前向きな姿勢が見られたことも、ドル買いに寄与した。

 もっとも、週末前には利益確定のドル売りなどにドル円が110円台後半に値を落とすなど、上値での買いには慎重な姿勢も見られた。

 その他、目立ったのはカナダドルとポンドの動き。

 カナダドルは、カナダ中銀のウィルキンス上級副総裁が12日、国内の景気回復が各地域に広がっており、政策当局者に勇気ある決断に向かう理由を与えていると、早期の利上げについて前向きな発言を行い、一気にカナダ買いが広がった。

 ポンドは15日の英中銀金融政策会合(MPC・用語説明2)において、利上げを主張したメンバーがそれまでの1名から3名に増加したことが、早期の利上げへの期待につながり、ポンド買いとなった。

 カーニー英中銀総裁は、これまで慎重な姿勢を崩していないが、英国のMPCは議長提案が否決されて、議長が少数意見に回るケースが過去に何度もある(米国・日本・ユーロは近年議長提案が否決されたことはない)ことから、市場の期待感が強まった面も。

今週の見通し

 FOMCでは年内後一回の利上げ見通しが維持された一方、利上げを決める重要なファクターとなるインフレについて見通しが大きく引き下げられており、今後利上げ見通しが後退する可能性が十分にある。

 金利先物市場の動向から計算された年末までの利上げ確率はほぼ50%と、FOMC前と比べて大きな変化がなく、市場は今後の状況変化を見守っている。

 FOMCが終了したことで、FRB理事や地区連銀総裁による講演会や議会証言などの機会が目白押しとなっており、市場の注目を集めている。

 要人発言などで市場の利上げ見通しがどこまで変化するのかなどを意識しながらの展開となりそう。

 FOMCでのドットチャートは、6月の利上げで年内打ち止めが4名、後一回利上げが8名、後二回利上げが4名という分布。利上げの有無ということに限ると、4対12であり、利上げ期待がかなり残っている状況だけに、何もなければドルはしっかりか。

 110円台での買い意欲を確認しながら、ドル円は上値トライを意識する展開へ。ターゲットは113円50銭近辺。

 今週からブレグジットに関する英国と欧州との交渉が本格的にスタートする。先週のロンドン高層アパートの火災で一時棚上げされていた与党保守党とDUPとの協力体制についても、今週議論が本格化すると見られており、ポンドは神経質に。ポンド円は144円をターゲットに上方向を意識しているが、一時的に売りを試すなど、不安定な展開となりそう。

用語の解説

米消費者物価指数(CPI) 米国のインフレターゲットの対象は、PCEデフレータであり、日本やユーロ圏、英国など殆どの国が採用する消費者物価指数(CPI)ではない。もっとも、計算が複雑なPCEデフレータよりも、計算が簡単で、発表の早いCPIが市場で注目されるケースが多い。傾向は両指標とも似たようなものとなるが、対象商品の違いや、対象の入れ替わりの定義などが違い、一般的にはCPIのほうが高めに出るケースが多い。
英金融政策会合(MPC) 英国の金融政策を決定する会合。年8回開催され、そのうち2月、5月、8月、11月の会合は中銀四半期インフレ報告や、カーニー総裁の記者会見が予定されている。総裁、副総裁を含む内部理事5名と、外部委員4名からなる9名による多数決で政策が決定される。3月に就任したホッグ副総裁が、利益相反問題ですぐに辞任したことで、現在欠員が一名おり、8名。現在のカーニー総裁の意見が少数派となり否決されたケースはないが、前任のキング総裁は何度も少数派に回っている。

今週の注目指標

ダドリーNY連銀総裁 ビジネスディスカッション出席
6月19日 21:00
☆☆☆
 米国の金融政策の実務を担当し、FOMCでは副議長を兼ねるダドリーNY連銀総裁は、金融政策見通しにおいて、イエレン議長についで重要視されるメンバー。基本的に景気を重視し利上げに慎重なハト派として知られるが、柔軟な発言を行うこともあり、昨年12月の利上げ決定前には、早期の利上げに前向きな姿勢を示し、市場の期待感が一気に強まったケースが有る。同総裁が年内の追加利上げに前向きな姿勢を示すと、市場の利上げ期待が一気に上昇し、ドル買いが広がる可能性も。この場合113円台半ばがターゲットとなりそう。
NZ中銀政策金利
6月22日 06:00
☆☆☆
 NZ中銀による政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の発表が22日午前6時に行われる。現状の+1.75%での据え置きが見込まれている。ただ、このところNZ経済は堅調となっており、声明でこれまで見られた「金融政策は長期間に渡って緩和的にとどまる」との文言が変更される可能性がある。より前向きな表現に変更された場合、NZドル買いの材料となりそう。昨年12月、今年1月と二度に渡って上値進行を止めた82円台後半がターゲット。
パウエルFRB理事 上院議会証言
6月22日 23:00
☆☆
 今年の4月からFRBにおいて銀行監督を担当するパウエルFRB理事が、上院銀行委員会の公聴会に出席し、議会証言を行う。今後の金融政策動向についても質問が飛ぶ可能性があり、注意が必要。中立派として知られている同理事が年内の追加利上げに前向きな姿勢を示すと、市場の期待感を押し上げる可能性も。講演などではなく、議会証言という公的な場だけに、発言に重みが出る点にも要注目。市場の利上げ期待が押し上げられるとドル買い。ターゲットは113円台半ば。

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