2017年06月26日号

(2017年06月19日~2017年06月23日)

先週の為替相場

小動き続く

 19日からの週は、主要通貨に動きが乏しく、ドル円は111円台前半を中心としたレンジ取引に終始した。特に週の後半は上下ともに動意なく、狭いレンジでもみ合いとなった。

 ドル円は111円ばさみの水準で始まった後、米ダウ平均株価が史上最高値を更新するなど、株高の動きが世界的に強まったこともあり、ドル買いが優勢に。

 金融政策の実務を担い、FOMCでは副議長も兼ねる重要人物であるダドリーNY連銀総裁が、早期の利上げに前向きな発言を行ったことも材料となり、111円台後半をトライする展開となった。

 もっとも、利益確定の売りなどに111円70銭台で上昇を阻まれると、上値トライはいったん一服。ムニューシン財務長官が「ドル高は輸出に不利な面も」と発言したことなども材料となり、111円台前半まで値を落とした。

 供給過剰懸念からの原油安の動きなどから111円割れを付ける場面も見られたが、111円割れでは買いが入る展開が続き、その後は111円台前半でもみ合った。

 要人発言で振幅を見せたのはポンド。

 カーニー英中銀総裁が20日、マンションハウス(用語説明1)で行った演説において、英国のインフレについて抑制的であるとし、利上げを行うべき時ではないと、早期の利上げをはっきりと否定。

 これを受けてポンドは下落。対米ドルで1.2750近辺から1.27割れに急落すると、その後1.26割れまで値を落とす展開となった。

 しかし、翌21日に英中銀のホールデン金融政策会合(MPC)委員(用語説明2)が、今回のMPCで利上げの可能性について考慮した。年の後半には刺激策の一部解除が望ましいと発言。一気にポンド買いが広がった。

 今月のMPCでは、据え置き5名対利上げ3名で据え置きが決定していたが、そのうちかねてから利上げを主張していたフォーブス委員が、今回のMPCをもって退任することから、今後の利上げの期待が後退。また、今回のMPCで利上げを主張した3名すべてが外部委員であったことも、市場の利上げ期待を抑制する要因となっていた。

 しかし、今回英中銀の金融政策分析担当理事でチーフエコノミストの職にもあるホールデン氏が、利上げに前向きな発言を行ったことで、一気に利上げ期待が広がった。

 同発言を受けてポンドドルはカーニー総裁発言後の下落分をほぼ解消する動きとなった。

今週の見通し

 ドル円は111円台前半でのレンジをどちらに抜けるのか、見方が分かれている状況。

 FOMC後のドル高基調が継続しており、下値では買いが入る展開。111円割れでは買い意欲が見られる。

 もっとも、FOMC後も年内の利上げ期待は広がっていない。

 金利先物市場動向から計算されたCMEFEDWATCHによる年内利上げ確率は、50%前後での推移が続いており、FOMC前の45%前後からそれほど大きな変化とはなっておらず、あくまで五分五分。

 米債利回りも大きな変化はなく、為替市場への影響は限定的に。

 世界的な株高傾向はドル円にとって買い材料であるが、原油安への懸念が続いていることは売り材料で、売り買いの材料が交錯している状況。また、ともにパニック的な大きな動きではなく、相場の短期的な要因とはなりにくい。

 こうした状況を受けて、当面はレンジ取引が予想される。

 週後半のPCEデフレータなどの経済指標発表をきっかけに、111円台後半の売りを崩せると、もう一段の上昇も。

 原油を除くと、リスク警戒の材料はかなり落ち着いており、期待感としては上方向か。

 111円台前半を中心としたレンジ取引から、113円に向けた動きへ変化することを期待したいところ。

 ポンドは上方向への動きが継続しそう。

 カーニー総裁は依然として利上げに否定的であるが、英中銀は米、日、ユーロと違い、総裁/議長の意見が必ずしも通らない(米FRB、日銀、ECBは近年の政策会合で議長提案が否決された例はない)。

 ホールデン・チーフエコノミストが利上げに回ると、他の内部理事への影響も大きく出ると考えられる。同数では総裁の意見が通るため、利上げには4対4ではなく、3対5となる必要があるが、可能性は十分に意識されており、ポンドの買い材料となりそう。

 利上げへの期待感が広がると、ポンド円も堅調な動きが期待される。目先のターゲットは145円。

用語の解説

マンションハウス ロンドン市の中心地で金融街でもあるシティ・オブ・ロンドン(シティ)にあるロンドン市長(Lord Mayor of London、名誉職であるシティの長であり、公選によって選ばれるロンドン市長(Mayor of Londonとは別)の公邸。財務相や中銀総裁による演説で利用されることでも知られる。
ホールデン英中銀理事 英中銀のチーフエコノミスト兼金融政策分析担当役員。1989年にワーウィック大学で経済学修士号を取ったあと、英中銀に入行したプロパーの英中銀金融政策メンバー。2014年の6月から英中銀金融政策会合に参加しており、今年5月が第一期の任期であったが、再任され、2020年の6月までが任期となっている。
 2014年にタイムズ紙が選ぶ世界に影響を与える100人のうちの1人に挙げられるなど、対外的にも有名なメンバーである。

今週の注目指標

米耐久財受注(5月)
6月26日 21:30
☆☆☆
 米国の設備投資動向に重要な影響を与える耐久財受注。前回4月分は全体の数字が前月比-0.8%、輸送部門除くコアが同-0.5%とかなり弱めの数字となった。航空機を除いた非国防資本財、いわゆるコア資本財の数字は前月比変わらずで、こちらも冴えず。米国のGDPは1-3月期が前期比年率+1.2%(改定値)と、弱めの数字となったが、4-6月期は+2%を超える高成長が期待されている。しかし、前回の耐久財受注の弱さを受けて、NY連銀やアトランタ連銀が自身のGDP予想を下方修正するなど、厳しい数字という見方が一般的に。今回は全体の数字こそマイナス圏も、輸送部門除くコアは+0.4%と回復が期待されている。期待通り堅調な数字が出てくると、ドル買いの流れが強まる可能性も。ドル円は112円にしっかり乗せるきっかけとなる可能性も。
イエレン議長講演
6月28日 02:00
☆☆☆
 ロンドンで英国の大学教授との対談という形で実施される。主題はグローバルエコノミーについてとなっており、米金融政策動向についての話がどこまで出てくるのかは未知数であるが、聴衆との質疑応答の時間も設けられており、何らかの話が出てくる可能性が高い。今月のFOMC後の記者会見では、米経済について「第1四半期の減速の後に回復」と自信を見せ、また懸念されるインフレの鈍化については「一時的な要因が大きく影響」と、長期的なものではないことを示すなど、ハト派な議長にしては、かなり前向きな姿勢が示された。こうした姿勢が維持されると年内の利上げ期待が強まりドル買いにつながると期待される。ドル円は113円をターゲットにドル高が強まりそう。
米PCEデフレータ(5月)
6月30日 21:30
☆☆☆
 米国のインフレターゲットの対象指標であるPCE(個人消費支出)デフレータが30日21時半に発表される。予想は前年比+1.5%と、4月の+1.7%から鈍化見込み。同コアデフレータは前年比+1.4%と、4月分の+1.5%からこちらも鈍化見込み。長期低迷傾向から、2月分でいったん+2.1%と、ターゲットを超える水準となり、米国の利上げ基調を支えた同指標。エネルギー価格の低下などを背景にインフレ圧力が低下する中で、2%から離れた水準まで低下しており、予想通りもしくはそれ以下の数字が出てくると、年内の利上げ期待が後退する可能性がある。この場合、ドル円は下値トライの可能性。111円をしっかり割り込む動きが予想される。

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