2017年07月03日号

(2017年06月26日~2017年06月30日)

先週の為替相場

欧州通貨高優勢に

 26日からの週は、欧州通貨高が目立つ展開となった。

 ECBは26日夜から28日にかけて、ポルトガルのシントラで、例年通り各国の中央銀行総裁らを招いて年次フォーラムを開催した。ドラギ総裁は、現地時間27日朝に行われた基調講演において、ユーロ圏の経済成長に自信を示す一方で、直近のインフレ鈍化について「鈍化の要因はすべて一時的なもの」と発言した。金融政策については、「当面非常に緩和的な政策が必要」と従来の慎重姿勢を維持したものの、インフレについてのかなり楽観的な見方に、市場では早期の利上げ期待が一気に広がる形となり、ユーロが急騰した。

 ユーロドルは1.11台から1.14手前まで急騰。翌日になってECBの複数の関係者が、総裁発言を利上げ期待に結び付ける市場の反応は誤解という旨の発言を行い、事態の鎮静化を図ったが、28日の同フォーラムで行われたパネルディスカッションの中で、ドラギ総裁自身から訂正などの発言が見られず、市場は利上げ期待を逆に強める格好となって、1.14台まで上昇する展開に。

 ユーロ円でも大きな買いとなり、124円台から127円台まで急騰した後、128円台後半まで買い進まれる場面が見られた。

 同フォーラムでのパネルディスカッションでは、カーニー英中銀総裁も注目を集めた。慎重派で知られる総裁は、これまで英金融政策について緩和政策維持の意向を示していた。しかし、パネルディスカッションの中で「年内にある程度の刺激策解除が必要となる可能性」と発言。早期の利上げに前向きな姿勢を示した。

 英中銀では21日にホールデン英中銀金融政策会合(MPC)委員(英中銀チーフエコノミスト)が利上げに前向きな発言を行ったが、カーニー総裁の意向に反してMPCで利上げを決めるには現在の8名のメンバーのうち5名の賛成(4対4の同数の場合総裁意見が優先されるため)が必要で、実質的には難しいとの見方があったが、総裁の利上げ前向き発言で流れが一気に変わり、ポンド高となった。

 ポンドドルは1.27台から27日のドラギ発言でのユーロ高につられて1.28台へ、さらにカーニー総裁発言で1.29台半ばを付けると、その後も上昇を続け1.30台を付ける動きに。ポンド円も142円近辺から146円台まで買いが進んでいる。

 ドル円はこうした欧州通貨を中心とした円売りの動きにも支えられ、111円台から112円台に。原油安の動きが一服したことによるリスク選好の動きもあって、一時113円手前まで買われる場面が見られた。

 その後、欧州通貨高ドル安の動きに押されて、111円台後半まで調整が入る場面も見られたが、週末には112円台を回復するなどしっかりに。

今週の見通し

 ドル円はリスク選好の動きから上値期待が強い展開となりそう。

 ドル円の頭を抑える大きな材料の一つであった原油安に関して、21日のNY市場で約10か月ぶりの安値である42ドル台前半を付けてからは、買い戻しが優勢に。原油安の要因である供給過剰懸念に関して、EIA(用語説明1)が週報で米国内の原油生産減少について報じたほか、週末には米石油サービス大手ベーカー・ヒューズ社の調査による石油掘削装置(リグ)稼働数(用語説明2)が、24週ぶりに減少に転じたことなどから、懸念が後退。原油の買い戻しが優勢となった。

 原油安懸念の後退は資源国通貨買い円売りの動きを強めたほか、全般的なリスク選好の動きにもつながって円安に寄与。ドル円、クロス円の下値を支える格好となっている。

 また、欧州の早期利上げ期待の拡大の影響がまだ残りそうな状況である。

 昨年12月からの米国の利上げ姿勢により、金利面ではドル買いが中心の動きとなっていた。しかし、先週になってユーロ及びポンドの早期利上げ期待が拡大。すでにある程度市場は反応しているが、世界の投資資金の流れを大きく決める金融政策見通しの変化だけに、まだまだ中長期的に影響が残ると考えられ、当面は欧州通貨高円安の流れとなりそう。ドル円にも大きなサポート材料に。

 欧州通貨以外ではカナダドルに利上げ期待が強まっている。先週のECBフォーラムでのパネルディスカッションでカナダ中銀のポロズ総裁は早期利上げに前向きな姿勢を示した。その前には同国での利下げの果たす役割は終えたという旨の発言を行っており、利上げにかなり前向きな姿勢を示している。先月にはウィリアムズ上級副総裁も早期利上げを示唆しており、市場では7月12日の理事会での利上げを期待する動きが広がっている。この動きはカナダ全面高を誘っている。カナダ円の買いから、ドル円にもサポート材料に。

 こうした状況からドル円は上を試す可能性が高いと考えられる。先週は頭を抑えた113円手前の売りを崩して、114円を目指す展開に。

用語の解説

EIA Energy Information Administrationの略。米国のエネルギー省(DOE)の傘下にあるエネルギー情報局のこと。エネルギー(石油に限らず石炭・天然ガス・原子力など)に関するデータの収集・分析・発表を行っている部署。石油に関しては週ベースで原油、ガソリン、留出油などの在庫状況や、石油生産、輸入、製油設備稼働率などについて発表している。
石油掘削装置(リグ)稼働数 地下にある石油や天然ガスを取り出すための井戸を掘る装置のことをリグと呼ぶ。掘削、生産に必要な労働者や機械などを収容した大規模な構造物となっている。石油サービス大手のベーカー・ヒューズ社が実際に稼働している数を調査し、毎週発表している。シェール革命と呼ばれた米国でのシェールオイル、シェールガス生産の拡大を受けて、2014年には一時1600基を超えていたが、原油価格の低下を受けてコスト割れする油田が続出し、2016年春には300基台まで減少。2016年夏ごろからは生産再開が目立ち、700基台まで回復している。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(6月)
7月3日 23:00
☆☆☆
 米国供給管理協会(ISM)による製造業景気指数が3日23時に発表される。前回5月分は54.9と4月分の54.8から変わらずとの事前予想を小幅上回り、9か月連続での好悪判断の境である50超えとなった。内訳をみると重要視される新規受注指数が59.5と4月の57.5から上昇。雇用指数は53.5と水準的に強いというほどではないが、4月分の52.0からは上昇という結果に。全体の数字、内訳ともに比較的好結果という印象で、ドル買いの流れに寄与した。
 今回の予想は55.2と若干ながら2か月連続での改善見込み。予想通りの数字が出てくるとドル買いに寄与しそう。金曜日の雇用統計に向けて雇用指数の数字が改善してくると更なるドル買いに。113円台へ向かうきっかけとなる可能性も。
豪中銀(RBA)政策金利
7月4日 13:30
☆☆☆
 2016年8月から政策金利を同国にとって史上最低水準となる1.50%で据え置いている豪中銀。第1四半期のGDPが前期比+0.3%、前年同期比+1.7%と低水準に落ち込んだ豪州。ただ、先月ロウ総裁が同国の経済成長率が年初の冴えない状況から加速するとの見方を示すなど、落ち込みは一時的との見方が広がっており、これ以上の緩和期待が後退している。もっとも、すぐに利上げに向かう状況でもなく、当面は政策金利の現状維持を続けると予想されている。
 注目は声明内容で、直近の豪中銀関係者の比較的前向きな姿勢を反映して、強気な表現が目立つようだと、年終盤から来年にかけての利上げ期待が強まり、豪ドル買いにつながる可能性も。豪ドル円のターゲットは87円台半ば。
米雇用統計(6月)
7月7日 21:30
☆☆☆
 米国の年内利上げ見通しに大きな影響を与える米国の雇用統計が7日に発表される。前回結果が事前予想値を大きく下回ったうえに、前回値、前々回値も下方修正されるかなり弱めの数字となった非農業部門雇用者数(NFP)は前月比+17.7万人と、前回よりも雇用の伸びが強まると期待されている。前回2001年5月以来、約16年ぶりの低水準となった失業率は、前回水準の4.3%を維持の見込み。
 完全雇用に近いといわれる米雇用市場の堅調さ維持が印象付けられると、市場の年内利上げ期待の拡大につながり、ドル高につながる可能性も。
 個人消費動向に影響を与える平均時給の数字も併せて確認しておきたいところ。前月比・前年比ともに前回を上回るという事前予想となっており、期待通りの強めの数字が出るとドル買いに。
 予想通り全般に強めの数字が出てくると、ドル円にとっては大きな買い材料。114円台をターゲットに上昇が進む可能性。

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