2017年07月10日号

(2017年07月03日~2017年07月07日)

先週の為替相場

円安基調強まる

 3日からの週は、ドル円が一時114円台を付けるなど、ドル高円安基調が強まる展開となった。先々週から続くユーロ高の流れも健在で、ユーロ円は一時130円台と、2016年2月以来の高値圏での推移となった。

 週の前半は北朝鮮リスクなどから円高が進む場面も見られた。独立記念日で米国が休場となった4日。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM・用語説明1)の発射実験を実施。有事リスクが高まったとしてドル安円高が進む場面が見られた。

 翌日には、リスク警戒感が一服。格付け大手ムーディーズが韓国の格付けの据え置きを発表したことなどが、市場参加者のリスク警戒感を抑える格好となった。

 その後原油安などのリスク警戒要因を交えながら、ドル円は雇用統計をにらみ113円台での推移。先月27日のECBフォーラムでのパネルディスカッション以降欧州債の利回りが上昇傾向にあり、それが米債などにも波及して、世界的に利回り上昇傾向が強まったことが、外貨買い円売りにつながる面も。

 日本国債も利回り上昇圧力を受けていたが、7日午前に日銀は2月以来3度目となる指値オペ(用語説明2)を通告。金利上昇を抑えるという日銀の強い姿勢が円安を誘い、113円台後半を付けてもみ合いに。

 注目された6月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく上回り、節目となる20万人をもしっかり超える22.2万人の雇用増を記録。失業率、平均時給などはいまいちの結果となったが、前回値の上方修正まで入る強めのNFPの影響が勝り、ドル円は114円台に。

 ユーロ円が130円台を付けるなど、欧州通貨買い円売りの動きも優勢で、円は全面安。

今週の見通し

 円安基調の継続が期待される展開。

 先週末の米雇用統計の好結果を受けて、警戒材料となっていた米労働市場の鈍化懸念が後退。ドル買いに安心感が出ている。

 年内の追加利上げ期待も広がっており、中期的にもう一段のドル高余地がありそう。

 先月のECBフォーラム以降、ECBの出口戦略に向けた動きへの期待感も広がっているほか、同フォーラムでのカーニー英中銀総裁の発言を受けてポンドも年内利上げへの期待感が拡大。同じくフォーラムに参加していたカナダ中銀は12日の中銀政策金利発表で利上げが濃厚となった。

 こうした主要国・先進国通貨の金融緩和政策の後退姿勢に対して、金曜日に指値オペに踏み切った日銀の緩和継続への強い姿勢は、かなり対照的な印象を与えており、当面の円安ムードに。

 ドル円は114円台半ばから115円にかけては売りが入りやすい水準。高値警戒感もあり、いったん調整が強まる局面も予想されるが、流れはまだ上方向。

 振幅を交えながら、115円を試す展開が予想されるところ。

 12日の中銀金融政策会合で利上げが濃厚となったカナダはすでに88円台まで上昇してきている。同水準は昨年12月の高値トライで上値を抑えた水準であり、利上げをきっかけにしっかりと超えることが出来るかが注目されるところ。現水準近辺が高値となる可能性もあるが、しっかり抜けると92円をターゲットにもう一段のカナダ高期待。

用語の解説

大陸間弾道ミサイル(ICBM) 有効距離が超長距離で、大陸間を飛行する能力を持ったミサイルのこと。正式な英語名はIntercontinental Ballistic Missile。戦略兵器制限条約の定義では、有効射程距離が5500キロ以上のものを指す。この距離は旧ソ連の北西部と米国本土の北東部を結んだ距離から計算されている。
指値オペ 2016年9月の日銀金融政策決定会合で採用された長短金利操作付き量的質的金融緩和における政策手段として導入されたオペレーション。日銀があらかじめ定めた利回り(債券価格)で、金融機関から無制限に買い入れるオペレーションのこと。2016年11月17日に初めて実施され、2017年2月3日に2回目の実施、今回7月7日に3回目の実施となった。今回の指値オペは世界的な金利上昇圧力の影響で10年債利回りが約5か月ぶりの高水準である0.105%近辺まで上昇したことを受けてのもの。指値水準は0.11%で、市場水準よりも高く(債券価格が低く)設定されており、さらにオペ通告を受けて市場金利水準が下がった(債券価格が上昇した)ため、実際の応札はゼロとなった。

今週の注目指標

カナダ中銀政策金利
7月12日 23:00
☆☆☆
 カナダ中銀の政策金利が12日に発表される。カナダ中銀の金融政策会合は年8回開催され、そのうちの半分で金融政策報告が同時に発表される。今回はその発表される会合にあたっており、金融政策の変更が実施されやすい回となっている。6月半ばごろまでは据え置き予想で市場の見通しが一致していたが、先月末にウィルキンス上級副総裁が早期の利上げに前向きな姿勢を示すと、今月に入ってポロズ総裁が同様の姿勢を複数回に渡って示しており、今回の会合での利上げ見通しが濃厚となった。声明や金融政策報告などで今後の追加利上げが示唆されてくると、もう一段のカナダ高も期待される。その場合、ここ一年頭を抑えている89円近辺をしっかり超えて上値を試す可能性も。
イエレンFRB議長下院議会証言
7月12日 23:00
☆☆☆
 イエレン議長が12日に下院の金融サービス委員会、13日に上院銀行委員会で議会証言を行う。通常2月と7月の年二回定例で行われているもの。両日の証言でのテキストは同様のものが利用されるため、初日に行われる証言に対する注目度が高い(上院と下院でどちらからスタートするのかは決まっていない。交互となる場合が多い)。ただし、質疑応答などの結果から、二日目の証言で相場が大きく動く可能性もある。今回の注目はバランスシートの正常化開始の時期と、追加利上げ姿勢についての発言となりそう。イエレン議長が直近の比較的前向きな姿勢を議会証言という公式の場でも継続して示してくるようだと、年内の利上げ期待が強まり、ドル買いにつながりそう。ドル円は115円に向けた動きも。
米消費者物価指数(CPI・6月)
7月14日 21:30
☆☆☆
 先週末の米雇用統計の好結果を受けて、利上げに向けた鍵となるFRBの二大命題、雇用の最大化とインフレのターゲット水準での安定のうち、インフレ動向への注目が集まりそう。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータであり、CPIではないが、水準には違いがあるものの、基本的には同様の傾向が見られるため、発表時期の早いCPIが注目される傾向がある。今回の予想は総合、コアともに前年比+1.7%。総合の水準は前回の+1.9%から低下している。エネルギー価格の低下などが主要因と見られ、大きな心配はされていないが、予想よりもさらに下がってくるようだと、早期の利上げ期待に水を差す可能性も。この場合、ドル円はいったん113円割れまで調整が入る可能性も。

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