2017年07月18日号

(2017年07月10日~2017年07月14日)

先週の為替相場

議会証言などがドル安円買いに

 10日からの週は、週初こそドル高円安が優勢となったが、その後値を落とし、週末には112円台を付ける展開となった。

 週初は7日の米雇用統計の好結果を受けたドル高の流れが継続。ドル円は7日の高値を超えて114円台にしっかり乗せる展開となった。

 米国の年内利上げ期待に対する期待感が雇用統計の好結果で高まり、ドル買いを誘った格好。

 しかしブレイナードFRB理事が講演の中で最近の物価の鈍化に振れ、利上げに賛成するためには物価情勢を確認する必要と、年内利上げに慎重な姿勢を示したことで、いったん調整ムードに。

 トランプ大統領の長男とロシアの弁護士とのメール公開によって、ロシア疑惑が強まったことも、同日のドル売り円買いを誘い、113円台で先週最大の注目材料イエレン議長の議会証言に。

 議会証言では先立って公表されたテキストに利上げの時期の記載がなく、今後数年での緩やかな利上げと、従来の姿勢を踏襲。インフレの不透明性への警戒なども見られ、これまで同様もしくはそれ以上に慎重な姿勢が印象的な証言となった。

 ダドリ―NY連銀総裁やウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁など、比較的議長に近いといわれるメンバーが、利上げに前向きな姿勢を示していただけに、今回の議長の慎重姿勢は失望感を誘い、ドル売りが広がった。

 さらに金曜日には米小売売上高と消費者物価指数(CPI)という二つの重要指標がともに弱めとなった。

 議会証言でインフレの不透明性に触れられ、物価動向への注目度が高まっているところだけに、弱めのCPIなどへの反応が大きくなり、ドル売りが強まった。

 その他目立ったのはカナダドル。

 カナダ中銀は12日の金融政策会合で7年ぶりとなる利上げを決定した。ポロズ・カナダ中銀総裁などが事前に利上げを示唆していたこともあり、利上げ自体は完全に織り込み済み。もっとも、会合の声明において、経済成長見通しが引き上げられ、今後の追加利上げ期待が広がったことは想定外で、カナダドルは急伸した。

今週の見通し

 ドル安円高進行のリスクが高い展開となりそう。

 先週の議会証言を受けて、米国の年内利上げ期待がやや後退。さらに、金曜日の指標を受けて、証言で利上げに慎重になる要因として示されたインフレの鈍化が予想以上に進んでいるとの印象を与えており、ドルの重石となっている。

 水曜日、木曜日の日銀金融政策決定会合への警戒感も円買いに。

 今回の会合では金融政策の現状維持が見込まれている。市場の見通しはほぼ一致しており、注目は同時に出る経済・物価情勢の展望(展望レポート)(用語説明1)に。

 同レポートでは、物価見通しについて引き下げが濃厚。前回のレポートで示された物価見通しは2017年度が前年度比+1.4%。直近5月のコアCPIが前年度比+0.4%にとどまる中で、達成は相当難しいとみられている。

 物価見通しの引き下げは、緩和政策の長期化期待につながり、円売り材料であるが、もっとも、状況はすでに市場に広まっており、影響は限定的か。

 注目は物価目標の先送りを決めるかどうか。2%という数字は現実的にはかなり厳しいという印象であるが、目標自体の先送りには慎重な見方も多い。今回物価目標を据え置くと、いったんは円買いに反応する可能性も。

 ユーロは対ドル、対円ともに上昇が期待されている。

 木曜日に行われるECB理事会では、日銀会合同様に金融政策の現状維持が濃厚。

 注目はその後のドラギ総裁の会見。直近の好調な指標動向を受けて、出口戦略への姿勢を一歩進めてくる可能性がある。

 ECB資産購入プログラム(用語説明2)の段階的な縮小などへの期待感が強い中、これまで示されてきた必要であれば購入プログラムの拡大・延期をという文言の修正などが予想されている。

 実際に前向きな姿勢が確認できるとユーロ買いにつながりそう。

用語の解説

経済・物価情勢の展望(展望レポート) 年に8回開催される日銀金融政策決定会合のうち、半分にあたる4回で公表される日銀による経済や物価情勢の見通しをまとめたレポート。通常、展望レポートと呼ばれる。同レポートの中に、直近の年度末時点での経済及び物価の見通しが示される部分がある。前回のレポートでは、2017年度末に前年度比+1.4%、2018年度末に前年度比+1.7%とされている。
ECB資産購入プログラム ECBは量的緩和の手段として、市中から国債などの債券を購入する資産購入プログラム(APP)を実施している。購入対象はユーロ圏19か国の国債、ドイツ・フランスなどの政府機関債、EUの国際機関債、資産担保証券、担保付銀行債など。今年3月末を期限として月額800億ユーロの購入を実施していたが、昨年12月にプログラムの今年12月末までの延長を決める際に、月額600億ユーロに減額されている。今年12月末の期限で終了するという見通しは少なく、延長を見込む参加者が多いが、さらなる減額など、出口戦略に向かう姿勢を同時に示すのではとみられている。

今週の注目指標

豪雇用統計
7月20日 10:30
☆☆☆
 ここ3か月連続で雇用者数が4万人以上の増加を示すなど、好調な豪州の労働市場。強い労働市場の影響で家計消費に伸びが見られるなど、好調な豪経済の象徴的な状況となっている。今回の雇用統計では雇用者数の予想が1.5万増、失業率が0.1ポイント悪化の5.6%と、これまでに比べると一息という印象も、水準的には好調を維持しており、予想程度もしくはそれ以上に好調な数字が出てくると、豪ドル買いに弾みがつきそう。豪ドル円は90円の大台を意識してくる可能性も。
日銀金融政策決定会合
7月20日 12:00前後
☆☆☆
 日銀金融政策決定会合が19日、20日に開催される。結果発表は会合終了後で、未定であるが、12時前後となるケースが多い。その後15時半から黒田日銀総裁が会見を行う。
 金融政策の現状維持は決定的。一部報道でETF買い入れについての疑問が出ていたが、今会合では変更されるという見通しはほとんど見られない。市場の注目は結果よりも、同時に発表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)や黒田総裁会見に向いている。展望レポートでの焦点は、物価2%目標の達成時期の先送りがあるかどうか。昨年11月の会合で2017年度中から2018年度ごろに先送りされた同目標。ただ、現状の物価状況からみて、2018年度という見通しは相当厳しいと見られ、今回の会合で先送りが決まる可能性がある。この場合円売りの材料となり、ドル円が113円台に値を戻すきっかけとなる可能性。
ECB理事会
7月20日 20:45
☆☆☆
 ここにきて金融緩和の後退が意識されているECBの理事会の結果発表が20日に行われる。その後、ドラギ総裁の記者会見が予定されている。
 ドラギ総裁は先月のECB年次フォーラムにおいて「インフレの要因はすべて一時的」と発言し、直近のインフレ鈍化傾向をあまり気にしない印象を与えた。景気回復が顕著なユーロ圏にとって、現状の緩和政策を維持する大きな理由の一つがインフレの鈍化だけに、総裁の発言のインパクトは大きなものとなった。今回の理事会後の会見でこうした見通しについて、どこまで強気なものとなるのかが焦点に。
 政策金利の変更はまだかなり先という見通しが強いが、年末が期限となっている資産購入プログラム(APP)の減額もしくは停止などが示されると、一気にユーロ買いに。ユーロドルは1.1750がターゲットとなりそう。

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