2017年07月24日号

(2017年07月17日~2017年07月21日)

先週の為替相場

ロシアゲート疑惑がドル全面安に

 19日、20日と開催された日銀金融政策決定会合及びECB理事会が注目される展開となった。

 日銀による経済・物価情勢の展望(展望レポート)の発表回にあたっていた今回の日銀金融政策決定会合では、景気見通しを上方修正してきたものの、物価見通しは下方修正。2%の物価目標達成時期については2019年度ごろに先送りとなった。黒田日銀総裁の任期中には達成しないという見通しを示した今回のレポートを受けて、ドル円は若干買いが入り、111円台まで落ちていた水準から112円40銭を付ける動きを見せた。

 同日のECB理事会では、理事会後のドラギ総裁の会見において、資産買い入れプログラム(APP)の今後について「秋に協議」という発言があり、一気にユーロ高が強まった。今年12月が期限となる現行のAPPに関しては、延長が見込まれているが、月毎の購入額を漸減していくテーパリング(用語説明1)が期待されている。今回の総裁発言で9月のECB理事会でテーパリング開始が決定されるのではとの見通しが広がり、ユーロ買いが強まった。

 ユーロドルの上昇(ユーロ買いドル売り)が、その他通貨に対するドル売りにもつながり、ドル円も日銀会合後のドル高円安ムードが一服した。

 さらに、ドルに関しては政治リスクも売り材料となった。

 共和党のマコネル上院院内総務(用語説明2)がまとめたオバマケアに代わるヘルスケア修正法案は、共和党側の反対者が複数現れ、成立が困難となったことで、週明け審議入りを断念した。

 オバマケアの廃止、修正案の成立はトランプ大統領にとって大きな公約の一つだっただけに、政治リスクが警戒される形でドル売りが広がった。

 さらにロシア疑惑に関する報道がドル売りを誘った。トランプ大統領の長男がロシア人弁護士と交わしたメールが公開されたほか、同疑惑を捜査するモラー特別検察官がトランプ大統領や関係者のビジネスに絡んだ取引にまで捜査を拡大しているとの報道が、疑惑への警戒感を高め、ドル売りとなった。

 同疑惑に関しては、米報道機関での関連報道が続いたことで、週末まで続くドル安の要因となった。

 ドル円は結局111円ちょうど近くまで値を落とす展開に。週末の終値も安値に近く、ドル全面安の意識が強い週となった。

今週の見通し

 ドル安の流れ継続が意識されている。

 今週はFOMCや米第2四半期GDPなどの材料が控えており、これらは結果次第でドル買いの反応を誘いそうだが、現状では政治リスクを意識した展開となっており、ドルの頭は重い。

 ユーロドルが節目の1.15をしっかり超えて、上値を試す展開となっていることで、ドル全面安の流れに。ドル円自体は110円ー111円のサポート水準を前に、値ごろ感からの買いも入りそうだが、円高ではなくドル安の流れが強まる中で、勢いを止めることは難しい。ドル売りが広がる展開となりそう。

 FOMCは前回6月のFOMCで利上げを実施したところでもあり、現状維持の見込み。一部でバランスシート正常化を決定するとの期待もあるが、大勢の見方は9月のFOMCでの決定となっており、今回は声明で若干の示唆がある程度か。政治リスク拡大の流れも考えると、今回は声明内での慎重な姿勢も維持し、しっかりとしたバランスシート調整の示唆は8月末のジャクソンホールでのシンポジウム待ちとなりそう。

 ユーロやポンドなどは上昇基調継続へ。

 ユーロに関しては先週のECB理事会で秋にもテーパリング決定の可能性が示唆されたこともあって、買われやすい展開。対ドルを中心にした買いが続きそう。

 ドルを中心とした流れが続いており、ユーロ円などのクロス円はやや蚊帳の外。リスク警戒感から少し重くなる可能性も、突っ込んだ売りは避けたい。

 オセアニア通貨は、豪ドルが消費者物価指数の発表を控え、やや神経質に。先週金曜日に豪中銀副総裁が市場の利上げ期待を牽制する発言を行い、豪ドル高への警戒感が強く見られたこともあり、他の通貨に比べて買い上げに慎重になる可能性も。

 一方、同じく先週金曜日に財務大臣が通貨高の容認姿勢を示したNZドルは買われやすい流れに。通貨高をけん制することが多い同国政府要人としては、かなり意外感のある発言だけに、NZドル買いに安心感が出ている。

用語の解説

テーパリング Tapering、漸減を意味するTaperからきた用語。量的緩和策として実施される中央銀行による国債などの資産の買い入れについて、一気に終了すると市場に与える影響が大きくなるため、市場へのインパクトを小さくとどめるために徐々に減らしていくこと。現在ECBは12月末までの期限で月額600億ユーロの資産買い入れを実施している。この買い入れプログラムに関して毎月100億ユーロの買い入れ枠減少を行い、半年をかけて終了するという見通しが市場で広がっている。
院内総務 米国の二大政党、共和党、民主党は伝統的にともに党首という役職が存在しない。上院、下院の各院において党を代表する存在となるのが、院内総務である。下院の場合は、多数党のトップは下院議長となり、その下に院内総務が存在する。少数党のトップは院内総務。上院の場合は、議長は副大統領であり、上院議員でトップの役職である上院仮議長も、事実上は名誉職であるため、多数党、少数党ともに院内総務が党のリーダーとなっている。なお、英語では党名ではなくMajority Leader(多数党院内総務)、Minority Leader(少数党院内総務)と呼ばれるため、その時の情勢によって指している党名が違うケースがある。

今週の注目指標

豪消費者物価指数(CPI・第2四半期)
7月26日 10:30
☆☆☆
 議事録での景気に対する明るい見通しの表明などもあり、ここにきて早期の利上げ期待が強まる豪ドル。先週デベル豪中銀副総裁が市場の期待先行にくぎを刺したこともあり、少し落ち着いているが、主要輸出品である鉄鉱石価格の回復や、LNG価格の上昇などが支えとなり、豪経済が好調さを示しているだけに、市場の利上げ期待は根強い。カギを握るインフレ動向への注目度もかなり高まっている。豪中銀が重要視する刈込平均の前年比は+1.8%と、第1四半期の+1.9%から若干鈍化見込み。予想通りだと利上げ期待は少し後退となり、豪ドルには売り材料。とはいえ、総合は前回を上回る+2.2%が予想されており、すべて予想通りだと影響は限定的か。予想を超えて第1四半期を超えるような水準を示すと一気に豪ドル買いに。豪ドル円は90円をしっかり超えて上昇すると期待される。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
7月27日 03:00
☆☆☆
 6月に追加利上げを実施した米国。そこからまだ時間がそれほど立っておらず、影響を見極める時期ということもあり、今回のFOMCでは、金融政策の現状維持が見込まれている。政策金利については、年内の追加利上げの可能性について、市場の見通しが分かれている状況。今月のイエレン議長の議会証言で今後数年での緩やかな利上げという方針が再確認されたこともあり、あるとしても12月のFOMCという見方が強まっている。量的緩和についてはバランスシート縮小開始が早期に始まるという見方が強い。一部では今回で決まるという見通しもある。その場合いったんはドル高に。ドル円は113円超えも期待できる。大方の見方は9月のFOMCでの決定。その場合、今回のFOMC声明で9月の決定を示唆してくるかどうかが焦点に。示唆があった場合はドル買いとなりそう。113円を試す展開に。示唆がなくとも、8月のジャクソンホールシンポジウムでイエレン議長が実施の方向性を示すと、9月のFOMC前の地ならしはできるため、声明が前回を踏襲して、変化がなくとも、ドル売りの動きは限定的か。
米第2四半期GDP
7月28日 21:30
☆☆☆
 前期は速報値ベースで前期比年率+0.7%と衝撃的な弱さを記録した米GDP。改定値、確報値と上方修正され、+1.4%まで改善したものの、昨年第4四半期の+2.1%と比べ、鈍化という印象が強いものとなった。この弱さの背景となったのが個人消費の鈍化。GDPの約7割を占める最大項目である同分野は、速報値ベースで+0.3%にとどまり、確報値ベースでも+1.1%と、第4四半期の+3.5%から一気に鈍化した。労働市場の堅調さが続くものの、平均時給の伸びの鈍さなどもあり消費が伸びておらず、トランポノミクス期待に水を差す格好となった。
 もっとも、その後も労働市場は堅調さを維持し、小売売上高などから見た個人消費の堅調。今回の個人消費は+2.9%と一気の改善が期待されている。GDPも+2.5%とかなりの高水準が見込まれており、期待通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドル買いに安心感が出てきそう。ドル円は113円をターゲットとする動きが期待される。

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