2017年08月21日号

(2017年08月14日~2017年08月18日)

先週の為替相場

政治主導の展開続く

 14日からの市場、ドル円は109円台から111円手前まで上昇した後、108円台に落とされるなど、不安定な展開を見せた。

 米国を中心に政治リスクを意識した展開が続き、神経質な相場展開が見られた。

 週初は北朝鮮リスクの後退が意識され、ドル買いが強まった。北朝鮮による米領グアム近海へのミサイル発射計画を受けて米朝関係の緊張が高まっていたが、北朝鮮側が計画の一端の見送りを発表したことが好感され、ドル買い円売りが強まった。

 しかし米南部バージニア州シャーロッツビルで起こった白人至上主義者の集会での反対派との衝突事件を受けてのトランプ大統領の発言が大きな批判を浴びる中で、米政治リスクへの警戒感が強まり、ドルは高値から一転して軟調な地合いに。

 トランプ政権への支持を表明していた米企業経営者などからの批判も続き、こうしたメンバーが中心となる製造業諮問委員会と戦略・政策フォーラムが解散となる中で、リスク警戒の動きが広がった。

 さらに週末にはスペインバルセロナで多数の死傷者を出すテロ事件が発生し、リスク警戒の動きが広がり、ドル円だけでなくユーロ円などでも円買いが強まる展開に。ドル円は一時108円60銭近辺までと、週の高値から2円以上もドル安円高が強まった。

 もっとも金曜日のNY市場でバノン主席戦略官・上級顧問の解任が報じられ、ドルは買い戻しが入る展開に。

 大統領最大の腹心と見られていた同氏に関しては、今回問題となっている白人至上主義に思想が近いとの懸念があったほか、一部イスラム圏からの入国禁止や、環境問題でのパリ条約からの離脱を主導したとの批判があり、政権の火種となっていただけに、市場では解任を好意的に受け止めた格好。

 その他通貨ではユーロが不安定に。

 今週行われるジャクソンホールでの経済シンポジウムに、3年ぶりの出席を表明しているドラギECB総裁。秋のECB理事会での決定が期待されるテーパリングについての示唆を市場に対して行うとの期待感が一部で広がっていたが、関係者筋からの話として、そうした見通しが否定され、ユーロ売りに。

 さらにバルセロナでのテロを受けての欧州株安なども重石となりユーロ売りの場面が見られた。もっとも対ドルでは政治問題でのドル安に際してユーロ買いが入る場面が見られており、不安定な振幅が見られた。

 ポンドは15日に発表された7月の英物価統計において、インフレターゲットの対象である消費者物価指数(CPI)の前年比が予想を下回り、6月分と同水準にとどまったことで、今後の利上げ期待が後退し、売り圧力を受けた。

今週の見通し

 政治リスクを意識。

 バノン氏の解任は、米政治リスクからのドル売り円買いの流れを変化させる可能性を持つ大きな材料であるが、目先は頭の重さが続きそう。

 21日から米韓共同軍事演習(乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン・UFG)(用語説明1)が開催され、米朝関係の緊張が意識されることが、ドルの重石となりそう。例年の行事であるが、北朝鮮側は同演習に強く反発する姿勢を示しており、米領グアム近海へのミサイル発射計画につながった経緯がある。

 北朝鮮だけでなく、中国からも同演習を中止して引き替えに北朝鮮の核・ミサイルテスト中止を要求する譲歩案が示されるなど、演習の実施に注目が集まる場面も見られたが、ダンフォード統合参謀本部議長(用語説明2)は演習の実施を表明しており、北朝鮮側からの反応が注目されるところ。

 一転してのグアム近海へのミサイル発射などの可能性は低いが、米国への挑発が目立つようだと、米朝関係の緊張感の高まりがドル安円高を誘う可能性も。ドル円は108円台半ばをトライする可能性も。 

 もっとも同問題への対応が限定的なものにとどまるようだと、ドルは回復する可能性が高い。バノン氏は一部イスラム圏からの入国禁止やパリ条約からの脱退など、トランプ政権下で評判の良くない政策を推進していた人物だけに、今回の解任を受けての政局安定への期待感がかなり強い。

 今回の解任劇を主導したとみられるケリー首席補佐官への期待感も強く、政治リスクの後退が期待されるところ。

 政治リスクさえ後退してしまえば、米国は経済的にはかなり好調。

 今週のジャクソンホールシンポジウムでイエレン議長がバランスシート縮小開始について強く示唆してくる可能性も高く、ドルは底堅い展開に。

 ドル円は111円を超え、先週の高値を超えて上値を目指す可能性。

用語の解説

乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン・UFG 北朝鮮との有事に備えるために実施される米軍と韓国軍の定例合同軍事演習のこと。2008年まで乙支フォーカスレンズと呼ばれており、2009年に改称された。今回の演習では米軍側から1万7500人、韓国軍から1万1000人が参加見込みで、合計参加人数は28500人に上る。乙支とは6世紀後半から7世紀にかけての高句麗の将軍・大臣であった乙支文徳にちなんでいる。同将軍は西暦612年の隋による高句麗遠征において、隋を相手に大勝利を収めた人物。
統合参謀本部議長 米軍における制服組といわれる軍人のトップ。大統領および国防長官の軍事顧問も務める。階級は大将(現在の米軍には元帥は存在しないため、階級としては最上位となる)。任期は2年、二期4年務めるケースが多い(理論上は8年まで可能、戦時中は制限が廃止される)。議長になる資格を有するのは統合参謀本部(JCS)のメンバーである副議長と米四軍(陸、海、空、海兵隊)のトップに加え、各統合軍司令官。四軍のトップと同様に作戦指揮権は有さない。

今週の注目指標

米韓合同軍事演習(乙支フリーダムガーディアン) 
8月21日~31日
☆☆☆
 米韓の合同軍事演習(乙支フリーダムガーディアン)が8月21日から31日までの11日間にわたって行われる。北朝鮮は同演習を例年批判しており、昨年は演習期間中に潜水艦発射弾道ミサイルSLBM(北極星1)の発射実験を実施した。今回の開催についても強く批判しており、グアム近海へのミサイル発射計画の発表などは、同演習に対する抗議の一つと見られている。中国などからも中止圧力があるが、予定通り実施される見通し。同演習中に北朝鮮側から強い挑発行為などがあった場合、米朝関係の緊張拡大から、ドル売り円買いが進む可能性。ドル円は107円台を目指す可能性も。
イエレンFRB議長講演(ジャクソンホール) 
8月25日 23:00
☆☆☆
 2年連続でジャクソンホールでの年次経済シンポジウムに参加するイエレン議長は、実質的なシンポジウムのスタートとなる25日(前日は晩餐会のみ)の冒頭午前8時から金融の安定をテーマに講演を行う予定。市場が注目する今後の利上げについては言及されない可能性が高いが、バランスシート縮小開始については、テーマとも密接に関係しており、言及がある可能性が高い。9月のFOMCでの開始決定を強く示唆してくると、ドルに対する買い材料となる。ドル円は111円を超えて上昇する期待も。政策金利についても、言及がある可能性がある点にも要注意。
ドラギECB総裁講演(ジャクソンホール) 
8月25日 時刻未定 
☆☆☆
 3年ぶりにジャクソンホールへの出席を予定しているドラギECB総裁は、イエレン議長と同じ25日に講演を行う予定が発表されている。時刻はまだ未定で、24日の現地時間(米中部時間)午後6時(日本時間25日午前9時)のプログラム発表で示される見込み。当初は、世界中が注目する同シンポジウムでの講演で、今後の量的緩和縮小・廃止(テーパリング)に向けた姿勢が示されるのではとの期待があったが、関係者筋情報として、総裁は同シンポジウムで新たな金融政策についての言及を行わないと報じられており、期待が後退している。シンポジウムの共通テーマである力強いグローバル経済の促進についての講演となる模様。ただ、テーマに沿う場合ユーロ圏経済・物価の今後の見通しについての言及はありそう。前向き姿勢が目立つようだとテーパリング期待につながりユーロ買いも。ユーロドルはターゲットである1.19-1.20を意識する展開に。

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