2017年09月04日号

(2017年08月28日~2017年09月01日)

先週の為替相場

振幅目立つも、週後半にかけてややドル買い

 28日からの市場は、ドル円は振幅を交えながらややドル高円安の展開となった。

 25日のジャクソンホールでのイエレン議長講演で金融政策動向への言及が見送られたことや、米メキシコ湾岸を襲ったハリケーン・ハービー(用語説明1)の影響でダウ平均など米株式市場の頭が抑えられたことが、ドル売りを誘った。

 29日早朝には北朝鮮が中距離弾道ミサイル・火星12を発射。日本上空を超えて襟裳岬の東1180キロの太平洋上に落下する事態に、リスク警戒感が広がり、ドル円は108円台前半まで売り込まれる場面が見られた。

 しかし、この売りが一服してからは、一転してドル買いが優勢に。

 同日のNY市場で米株の回復などをきっかけにドルが買い戻されると、北朝鮮問題でいったんポジション整理が進んだこともあり、ドル買いの勢いが加速。ドル円は一気に109円台後半を回復すると、翌日には110円台を超えてドル高円安の流れに。

 米第2四半期GDPの好結果などもドル買いに寄与し、110円台後半まで上昇する場面が見られた後、米PCEデフレータの弱さなどで110円割れの場面も見られたが、ドル売りは続かず、110円台前半で注目された米雇用統計を迎えた。

 米雇用統計は非農業部門雇用者数、失業率、平均受給がいずれも予想よりも弱い数字を示すなど、厳しい結果となり、いったんドル売りが進行。ドル円は109円台を付ける動きに。

 しかし、7日にECB理事会を控える中で、ECB関係者筋から、12月の理事会まで債券購入プログラム(QE・用語説明2)の縮小についての議論をまとめることは難しいとの発言があり、一気にユーロ売りドル買いが入ると、ドル円でもドルの買い戻しが広がって、110円台を回復して週の取引を終えている。

 もっとも週末には北朝鮮が6回目の核実験を実施したことが報じられ、リスク警戒感が強まっている。

 北朝鮮関連では豪ドルの動きが目立った。リスク材料に対する相場の反応が大きいことで知られる豪ドルは、29日の北朝鮮のミサイル発射を受けて対円だけでなく対ドルなどでも下落。豪ドル円はドル円以上に値を落とし、87円近辺から85円台後半まで下落した。

 その後の買い戻しで一転して上昇を見せ、87円台後半まで約2円の大幅高。その後は87円台を中心にした推移が続いた。

今週の見通し

 ドル買いが優勢な展開に、北朝鮮リスクが水を差す展開。

 有事リスクは基本的に円買いでの反応が見られるだけに、対応がかなり難しい。

 トランプ大統領は北朝鮮とビジネスをする国との貿易を停止する旨の発言を行っているが、額面通りに受け取ると中国が対象となってしまうだけに、今後の情勢への注目度が高まっている。

 先週末の米雇用統計のかなり弱い結果でも底堅さを見せただけに、ドル円、クロス円には買い意欲が広がっているが、北朝鮮問題という大きなドル売り円買い材料の台頭に、慎重な姿勢が広がっている。当面は神経質な展開が続きそう。

 ドル円は下値リスクを意識しながらも、北朝鮮問題が収まればドル買いが優勢という、難しい状況。報道などを確認しながらの展開か。

 110円を超えて111円トライの動きを予想しているが、北朝鮮関連報道次第では108円トライも。

 ドル円以外の注目通貨ペアは7日にECB理事会を控えるユーロドル。

 ドラギ総裁は12月末が期限となっている現行の債券購入プログラム(QE・用語説明2)の今後についての議論を秋から開始すると表明している。

 今回の理事会でQEの縮小の決定もしくは今後の縮小への示唆などが見られると、ユーロ買いの動きが広がる可能性が高い。この場合1.20を再びしっかり超えて、上値をトライする可能性が高そう。

用語の解説

ハリケーン・ハービー 米国のメキシコ湾岸を襲った大型ハリケーン。25日にテキサス州南部に上陸後、同地域で停滞し、長期間にわたって雨を降らせる事態となったことで、被害が大きく拡大した。全米第四の都市であるヒューストンの一部が冠水、少なくとも13人が死亡、数万人が避難する大災害となった。米国のメキシコ湾岸は石油の製油施設が集中していることから、ガソリン価格が急騰するなど、米経済全体への悪影響も予想されている。これまで米政府によるハリケーン災害への支援額は、2005年のカトリーナによる1102億ドルが最大となっているが、被害を受けたテキサス州のアボット知事は1250億ドル以上の支援が必要と発言しており、同じく被害を受けたルイジアナ州への支援と合わせ、過去最大規模の支援が必要な大きな被害が生じている。
ECB債券購入プログラム 英名Asset purchase programmes(APP)。ECBが量的緩和政策(QE)として実施している金融政策。2014年10月に資産担保証券購入プログラムとカバードボンド購入プログラムとしてスタートし、翌年4月に購入対象に国債を加える形で本格化。昨年12月に今年4月からの購入額をそれまでの毎月800億ユーロから600億ユーロに減額して12月まで継続すると発表された。12月末が期限となっているが、今回の期限での打ち切りは想定されておらず、徐々に減らしていき最終的には停止するテーパリングが2018年より始まるのではとの期待がある。

今週の注目指標

豪中銀(RBA)金融政策理事会
9月5日 13:30
☆☆☆
 5日に豪中銀の金融政策理事会の結果が発表される。政策金利は現行の1.50%の維持が見込まれている。ロウ豪中銀総裁は先月の半期議会証言で政策金利を当面現水準に据え置く方針を明らかにしている。次回の変更については利上げになる可能性が高いとしたものの、その変更はしばらく先と発言している。家計債務が高水準にとどまる中、利上げの悪影響が大きいとみているほか、豪ドル高への警戒感も示された。もっとも、主力輸出品である鉄鉱石や石炭の価格上昇もあって、豪州経済はかなり好調。国内投資の拡大傾向もあって、比較的早い段階で利上げが必要になる可能性は高い。声明などで今後の利上げの可能性が強調されるようだと、豪ドル買いが広がる可能性。豪ドル円は88円台にしっかり乗せてくるとみられる。
ECB理事会
9月7日 20:45
☆☆☆
 ECB理事会の結果が7日の20時45分に発表され、21時半からドラギ総裁の会見が予定されている。ドラギ総裁は、年内いっぱいが期限となっている現状の量的緩和策(債券購入プログラム)について、今回の理事会から議論を開始する姿勢を示している。期限までには今回に加え、10月26日、12月14日と後二回の理事会が予定されているが、今回及び12月の理事会は参加メンバーによる経済見通しが発表される回にあたっている。ECB理事会をはじめ、米FOMC、英MPC、日銀金融政策決定会合などは、現在いずれも年8回開催で、そのうち半分の4回で経済見通しの発表を実施する形式を採用しており、金融政策の重要な変更はこの発表回を充てるケースがほとんど。そうした意味では今回及び12月の理事会で決定がなされる可能性が高い。12月ではぎりぎりという見方もあることから、元々は今回の理事会で結論が出てくるのではとの期待が強かった。もっとも、先週末に関係者筋からの報道として、12月まで結論が出てこない可能性が指摘されており、期待感はやや後退している。今後に結論が先送りとなった場合、いったんはユーロ売りも。ユーロドルは1.16をターゲットに値を落とす可能性がある。
ダドリーNY連銀総裁講演
9月8日 08:00
☆☆☆
 ダドリーNY連銀総裁が現地時間7日にNY大学で講演を行う。米国の金融政策の実務を担当するNY連銀の総裁として、FOMCでは副委員長も務める同総裁は、先月依然として年内あと一回の利上げを見込んでいると明らかにした。もっとも、その後イエレン議長が慎重な姿勢を示していることや、ハリケーン・ハービーが米経済に大きな悪影響を与えたことなどから、今後についてより慎重な姿勢を示してくる可能性がある。同総裁が年内据え置き派に回ると、FOMCの投票メンバーの内訳的にほぼ据え置きが確定することもあり、注目されている。今回の講演はテーマが米経済の先行き、質疑応答の時間も予定されており、突っ込んだ発言が期待されるところ。発言次第ではドル売りが広がり、108円をトライする可能性も。

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