2017年09月11日号

(2017年09月04日~2017年09月08日)

先週の為替相場

リスク警戒感強まり、ドル安円高の流れが加速

 

 4日からの市場、ドル円はリスク警戒感が強まる展開となり、週末にかけて107円台まで値を落とす流れとなった。

 週初からドル安が進行。3日に北朝鮮が6回目の核実験を実施したことを受けて、週明けは、前週末の終値水準から一気にドル安円高方向に窓を開けて始まった。

 オセアニア市場で109円台前半までと、前週末から約1円のドル安円高を記録したドル円は、109円台後半まで値を戻したものの、その後110円が重くなる展開となった。

 さらに、5日には北朝鮮が大陸間弾道弾(ICBM)の発射準備を行っているとの報道が流れ、ドル売り円買いの流れが加速。9日の北朝鮮の建国記念日に昨年5回目の核実験が行われたこともあり、今年も同日が危ないとの思惑が広がり、ドル円は警戒感から108円台に。

 その後も安値圏でもみ合った後、6日のNY市場で、トランプ米大統領と米民主党が債務上限引き上げ(用語説明1)について、ハリケーン被害の救済と組み合わせる形で暫定合意との報道が流れ、いったんドル買いが強まった。ドル円は109円台を回復する場面が見られた。

 しかし、この材料を受けても110円が遠く、頭の重さが意識されると、ハリケーン被害への警戒感などから再びドル安が優勢に。ハリケーン・ハービーによって、全米第4の都市ヒューストンの一部が冠水するなど、テキサス州やルイジアナ州に大きな被害を与えたばかりであるが、大西洋上のハリケーンとしてはここ10年で最大というハリケーン・イルマが、週末にフロリダ州へ上陸との報道が流れたことで、リスク警戒によるドル売りが広がった。

 さらに8日にはメキシコ南部チアバス州沖でM8.2という大地震が発生し、こちらも市場の警戒感につながりドル安円高が進行。ドル円は107円台前半まで一時値を落とし、少し値を戻したものの、107円台後半で週の取引を終えている。

 ドルが全面安となる中、ユーロドルは節目の1.20を超え、直近高値も超えて上昇を見せた。

 7日のECB理事会では政策金利・量的緩和(QE)ともに現状維持が発表された。その後のドラギ総裁による記者会見では、12月末が期限となる現行のQE(債券購入プログラム)の今後について、次回10月の理事会で大枠を決定するという方針が示され、ユーロ買いに。

 期限ぎりぎりとなる12月の理事会まで決定が先送りされるとの見方が広がっていただけに、市場はECBが前向きな姿勢を示したと捉えた。

 その他、サプライズが大きかったのはカナダ。

 6日のカナダ中銀(用語説明2)金融政策理事会は、大方の予想に反し、0.25%の利上げを決定した。このところのカナダ経済はかなり堅調であるが、7月に7年ぶりの利上げに踏み切ったところだけに、今回の理事会で利上げに踏み切るという見方は少数派となっていた。

 ドルカナダは1.24近辺から一気に1.21近くまで、300ポイント弱の急落(ドル安カナダ高)、カナダ円も87円台から一気に89円台に上昇を見せた。

今週の見通し

 北朝鮮リスクをどこまで見込むかがポイントとなりそう。昨年は5回目の核実験を実施した9月9日の北朝鮮建国記念日が無事に通過したことで、懸念がやや後退しているが、11日に国連安保理で北朝鮮に対する追加制裁の決議が予定されており、結果次第では北朝鮮が新たな挑発行為を行う可能性は十分にある。

 もっとも、北朝鮮リスクが一服すると、ドル高トレンドに復する可能性が高く、判断の難しい展開に。

 先週末に米議会は債務上限の一時撤廃とハリケーンの被害救済を含む12月までの暫定予算を成立させた。これにより懸念されていた米国のデフォルトや政府機関閉鎖の可能性が当面なくなり、ドル買いを誘っている。

 メキシコとの壁を含むトランポノミクスの今後をにらみ、10月からの新年度予算交渉がトランプ政権にとって最大のネックとなるとの懸念が強かっただけに、12月まで交渉時期が伸びたことは、ドル買いに安心感を与えている。

 ユーロドルは1.21手前でいったん上値を押さえらえたことで、ユーロ高に一服感も。1月からの上昇傾向が、夏以降加速する形で上昇してきており、高値警戒感も強い。

 23日に総選挙を控えるNZは、期日前投票が始まり、与野党の接戦が伝えられる中で、やや警戒感が出ている。世論調査結果も接戦となっており、政治リスクが意識される展開に。 

 木曜日に金融政策理事会(MPC)を控えるポンドは、MPCの現状維持決定が見込まれていることもあって、波乱要素は少なそう。

用語の解説

債務上限引き上げ 財政赤字を抱える米国は、米国債の発行によりその赤字を支える必要がある。しかし、無秩序な国債発行による経済の混乱を避けるため、1917年に制定されたリバティボンド法によって、上限を定めることが決められている。19兆8000億ドルがその上限であったが、3月にその上限に達しており、財務省による特例措置によって対応されている。この措置のもと、米政府は新規の国債発行が制限されており、10月中にも資金が枯渇する可能性があった。
カナダ中銀 英名Bank of Canada 仏名Banque du Canada。カナダの金融政策をつかさどる中央銀行。設立は1935年と、先進国の中では比較的遅い。金融政策理事会は、米、英、欧、日などと同じく、年に8回開催される。総裁の任期は7年で、カナダ政府には罷免権がなく、独立性が確保されている。現在の総裁は2013年から務めるステファン・ポロズ。前総裁のカーニー氏が英中銀総裁に就任するために辞任した後を受けて、総裁を務めている。

今週の注目指標

英中銀金融政策会合(MPC)
9月14日 20:30
☆☆☆
 英中銀の金融政策会合(MPC)の結果が14日に発表される。年8回の会合のうち、今回はインフレ報告などが実施されない回にあたっており、波乱要素は少ないとみられる。注目は利上げ主張のメンバー数か。3月のMPCから0.25%の利上げを主張し続けたタカ派フォーブス委員が退任したこともあり、前回のMPCではマカファティ委員とサンダース委員の二名のみが利上げを主張した。今回もう一人でも利上げ主張に向かうようだと、ポンド買いが強まる可能性。内部委員ではチーフエコノミストでもあるホールデン氏の動向が特に注目される。同氏が利上げを主張してくると、ポンドは一気に上昇へ。この場合ポンドドルは1.33を試す可能性も。
米消費者物価指数(CPI・8月)
9月14日 21:30
☆☆☆
 9月19日、20日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、バランスシートの正常化についての決定が期待されている。6月に利上げに踏み切ったあとも、雇用市場は比較的堅調。今後の金融政策動向に関しては、物価情勢が大きなキーとなる可能性が高いだけに、14日に発表される米消費者物価指数(8月・CPI)への注目度が高い。米国のインフレターゲットはPCEデフレータであるが、発表が遅いこともあり、CPIがより注目を集める傾向がある。予想は前年比+1.8%と、前回の+1.7%から上昇も、食品・エネルギーを除くコアが+1.6%と、前回の+1.7%から低下。ガソリン価格(米全種平均)が7月に比べて8月に上昇した分、全体は押し上げられているが、コアは鈍い。また、総合の数字にしてもインフレターゲットの2%水準に届いていない。ターゲット対象のPCEデフレータはCPIよりも低く出ることが一般的なこともあり、やや厳しい数字か。予想程度の水準は織り込み済みとみられるが、予想よりも低く出た場合、ドル売りが広がる可能性も。ドル円は107円を意識する展開に。
米小売売上高(8月)
9月15日 21:30
☆☆☆
 米GDPの約7割を占める個人消費動向を表すこともあり注目度が高い同指標。予想は前月比+0.1%と、7月分の同+0.6%から一気に低下見込み。ただし、これはハリケーンの影響などで最大部門である自動車販売が低迷した影響が大きい。自動車を除いた数字は前月比+0.5%と7月と同水準の伸びが期待されている。予想前後の数字が出てくると影響は限定的。コアの数字も全体同様に鈍化しているようだとドル売りにつながる可能性も。この場合ドル円は107円割れを試す可能性。

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