2017年09月19日号

(2017年09月11日~2017年09月15日)

先週の為替相場

リスク懸念後退などでドル円上昇、ポンドは利上げ期待で急騰

 

 11日からの市場、ドル円はリスク警戒感が後退する中で、大きくドル高円安が進む展開となった。 

 9日の北朝鮮建国記念日前後での挑発行為が懸念されていたが、無事週末を通過すると、週明けの11日にリスク警戒感の後退からドル高円安が進行。週明け108円台前半と、8日NY市場での107円台後半からドル高円安方向に窓を開けて週の取引がスタート。もう一つの懸念材料であったハリケーン・イルマが熱帯低気圧に勢力を弱めたこともドル買い円売りを誘い、109円台まで上昇する展開に。

 リスク警戒感の後退は、株高の動きも誘い、ダウ平均やS&Pが史上最高値を更新する動きに。米株高を好感したドル高円安の動きもドル円を支え、節目の110円の大台を超える動きとなった。

 トランポノミクスに絡んで、米ホワイトハウスと共和党議員が税制改革のガイドラインを9月末に発表との報道もドル買い円売りを誘い、ドル円は111円台まで上値を伸ばす展開となった。

 その後若干調整が入ったところに、15日早朝の北朝鮮のミサイル発射を受けて、一気にドル安円高が進み109円半ばへ急落する場面も見られたが、その後再び111円台を示現するなど、地合いはかなりのドル高円安に。

 その他目立ったのは利上げ期待が広がったポンドの上昇。

 12日の物価統計、特にインフレターゲットの対象である消費者物価指数(CPI)前年比が予想を大きく上回る+2.9%と、ターゲットの許容上限とされる+3.0%に迫る高水準となり、ポンド買いの動きに。

 14日には英中銀金融政策会合(MPC)において早期の緩和解除が示唆され、ポンドはさらに大きく上昇。

 15日には英MPC委員の中で最も慎重派(ハト派)とされるブリハ委員(用語説明1)が、講演の中で今後数カ月以内の利上げを示唆し、さらにポンド高が進むという流れに。ポンド円は週初から8円以上も上昇した。

今週の見通し

 流れはドル高円安の継続。リスク警戒感が後退したことで、好調な米経済動向などを背景にしたドル高基調に復する展開となっている。

 もっとも今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えており、その結果次第という面が大きい。利上げの可能性はほぼないとみられるが、バランスシートの正常化(用語説明2)について、今回のFOMCで決定するという見方が強く、大きな材料となっている。

 また、今回のFOMCは参加メンバーによる経済・物価・金利見通しの発表(プロジェクション)が予定される回にあたっている。

 前回6月の調査では16名中12名が年内の利上げを見込んでいた。しかし金利市場での年内利上げの織り込みは一時約30%まで下落。その後少し戻したが、年内利上げか据え置きかで市場の見通しが分かれている状況。

 ドットチャートという形で示される今年年末時点での政策金利水準の予想結果などを確認する展開となりそう。

 無難にこなすようだと、ドル高円安の基調が継続。

 先週大きく上昇したポンド円などのクロス円の買いにも支えられて、113円をトライする展開が期待されるところ。

用語の解説

ブリハMPC委員 ヘルチャン・ブリハ(GertjanVlieghe)、英国の金融政策を決定する金融政策会合(MPC)の外部委員。キング英中銀総裁の経済関連のアシスタントを務めた後、銀行を経由して、ロンドンに拠点を持つヘッジファンドのシニアエコノミストとなった。その後、退任したマイルズ委員の後任として2015年9月からMPCの外部委員に就任した。MPC委員就任後の投票結果や発言などから、現在のメンバーの中で景気動向を最も重視し、金融引き締めに慎重なハト派とみなされている。
バランスシートの正常化 リーマンショック後の金融危機への対応や景気刺激などを目的に、これまで3回にわたって行われてきた米国の量的緩和政策の結果、FRBのバランスシートは約4.5兆ドルまで膨れ上がった。この異常な額にまで膨らんだバランスシートの早期縮小への動きが強まっている。もっとも保有している債券を市中に売却すると、大きな金融引き締めにつながるため、現在はすべて再投資に回っている償還が来た債券の、再投資額を減らしていく方針が取られるとみられている。現在有力な案として報じられているのが、当初は月額で国債を60億ドル、政府機関債と住宅ローン担保債券(MBS)を40億ドルの計100億ドルを上限として再投資を減額し、徐々に額を増やして月額300億ドル規模で再投資を減らしていくという方法。これにより3~5年程度にかけてバランスシートを縮小していく。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月21日 03:00
☆☆☆
 今回は年8回開催されるFOMCのうち、半分の4回で実施される参加メンバーによる経済・物価・金利などの見通しを示すプロジェクションの公表とイエレン議長の記者会見が予定される重要な回にあたっている。そのため、元々は今回のFOMCで今年3回目の利上げを実施するという見方が強かった。しかし、物価の鈍化傾向もあってそうした期待はほぼ払しょくされ、現在の市場の注目はバランスシートの正常化が決定されるかどうか、プロジェクション内のドットチャートにおいて、メンバーの年内の利上げ期待がどれだけ変化しているのか、声明や記者会見で今後の利上げについてどこまで前向きな姿勢が示されるのかなどに集まっている。
 12月のFOMCでの利上げ期待が強まるようだと、ドルは大きく上昇する可能性。この場合、ドル円は113円超えも期待されるところ。
日銀金融政策決定会合
9月21日 時刻未定
☆☆☆
 9月20日、21日に開催される日銀金融政策決定会合では、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の維持が示される可能性が高い。同政策が導入されて1年がたち、日銀としては所与の効果が発揮されていると示しているが、物価上昇が進まず、物価目標の達成時期については先送りが続いている。こうした状況に対する懸念はあるものの、当面は現行政策が継続されるとみられ、波乱要素は少ない。注目は黒田総裁の会見で、どこまで現行の緩和政策維持を示してくるのか。米国・カナダが利上げサイクルに入り、欧州でも利上げ圧力が強まる中で、日本の緩和維持姿勢は特徴的なものとなる。こうした状況が強調されるようだと、円売りも。ドル円は112円台に乗せるきっかけとなりそう。
NZ総選挙
9月23日
☆☆☆
 23日にNZ議会の総選挙が実施される(NZは一院制)。夏ごろまではイングリッシュ首相率いる与党国民党の支持率が高く、波乱要素は少ないと見込まれていた。しかし、8月1日に最大野党労働党の党首が交替し、新党首の下で一気に支持率が上昇。8月末ごろから世論調査によっては労働党の支持率が国民党を上回るものが出てくるなど、かなりの混戦となっている。市場はリーマンショック後の2009年から財務相として経済政策の指揮を執り、昨年12月に首相についたイングリッシュ首相への信頼が高く、世論調査で与党優勢となるとNZドル買い、野党優勢となるとNZドル売りで反応している。実際に野党が選挙戦に勝利した場合、かなりのNZドル売り材料となりそう。NZドル円は77円トライもありそう。

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