2017年09月25日号

(2017年09月18日~2017年09月22日)

先週の為替相場

FOMC受けてドル買い円売り強まる

 

 18日からの市場、ドル円はFOMCを受けて大きくドル買い円売りが進む展開となった。FOMCまではイベントを前に行き過ぎた動きに警戒感が強まり、上下ともに動きにくい展開に。FOMCはドル買い材料になるとの期待が強く、下値はしっかりも、111円台後半での売りが出る展開となった。

 注目のFOMCは事前見通し通りバランスシートの縮小を10月に開始することを決定。政策金利については据え置きとなった。焦点となった参加メンバーによる金利見通し(ドットチャート)では、16名中12名が年内少なくとも1回の利上げを見込む見通しを示した。前回6月のFOMCで示されたドットチャートと比べると、年内後二回しか開催がなくなった分、年内に後0.5%の利上げを見込む参加者が4名から1名に減ったものの、1回以上という意味では12名で変わらず、据え置きが依然と同じ4名という結果に。

 6月のFOMC後の物価鈍化傾向から、据え置き見通しが増えるのではとの市場の見通しを裏切る強気なものとの認識から、ドル高円安が強まった。

 声明において、ハリケーンの被害の影響が短期的なものにとどまると示し、物価鈍化についても短期的と表現したことも、ドル高円安に寄与した。

 これを受けてドル円は112円台に一気に買い上げられ、112円台後半まで。高値からは調整も、112円台もみ合いに。

 しかし、北朝鮮リスクが重石となった。21日に朝鮮労働党の金委員長が「史上最高の超強硬的対応措置の断行を慎重に考慮する」と、北朝鮮メディアを通じて、異例となる直々の声明を発表した。その時の市場の反応は限定的なものにとどまったが、翌日国連出席のためNYに訪問中の北朝鮮の李外相が超強硬的対応措置とは太平洋上での水爆実験だと思うなどと発言し、一気にドル売りに。

 24日のドイツ連邦議会選挙を控えるユーロは、今月のECB理事会を受けて10月にテーパリング決定の期待が強まったこともあり、FOMC前に対ドルで1.20台を回復する動きに。

 もっともFOMCを受けてのドル全面高に、1.18台に落とされ、その後週末にかけて再び1.20台を付けるなど、振幅が見られた。

 注目の選挙は出口調査の結果メルケル首相率いる与党CDU/CSU(用語説明1)が第一党を確保も、第三党に躍進したAfD( 用語説明2)などに押されて、議席を大幅に減らしており、連立の行方が気になるところも。

 英中銀金融政策会合(MPC)を受けて11月の利上げ期待が強まったポンドは、ユーロ同様にFOMCまで対ドルで上昇。1.36台を付ける動きが見られた。もっとも、FOMCでのドル全面高に1.34台に下落。その後1.36近くまで上昇も、再び値を落とすなど不安定な展開に。

今週の見通し

 北朝鮮リスクへの警戒感は残るが、ドル高円安基調が継続しそう。

 FOMCでのドットチャートを受け、年内利上げ期待が広がっており、ドルの支えに。

 金利先物市場動向から見た年内の利上げ確率は、今月初めには3割程度しかなかったが、FOMC前に5割程度まで上昇、FOMC後は一気に7割超えまで上昇している。こうした利上げ期待の強まりは、ドルに対する大きな買い材料となるだけに、中長期的にドル買いが強まると期待されるところ。

 北朝鮮リスクに加え、週末の選挙を終えたドイツやNZの今後の連立への動きなども波乱要素。政治リスクが強まると、ドル円の頭が重くなる可能性もあるが、こうしたリスク警戒感が限定的なものにとどまると、ドル円は113円を試す可能性も。

 ユーロ円などのクロス円は基本的にしっかりも、ドル円に比べると安定感を欠く展開となりそう。

 米国の年内利上げ期待の拡大は、対ドルでの資源国・新興国通貨売りを誘っており、オセアニア通貨などはやや頭が重くなる可能性も。世界的なリスク選好の動きが今週も株高につながると、円安が進み、クロス円もしっかりと期待される。

 もっとも、週末の選挙でドイツとNZの与党がともに過半数を取れなかったことで、今週は両国で連立政権についての動きが報じられるとみられ、こちらは波乱要因。

 極右の台頭が見られたドイツの状況などが嫌気されると、対ドルでの欧州通貨売りを通じて、ユーロ円も重くなる可能性。ユーロ円は133円割れも。

用語の解説

CDU/CSU メルケル首相率いる中道右派CDU(ドイツキリスト教民主同盟)とバイエルン州を地盤とする地域政党CSU(キリスト教社会同盟)の連合。CDUはバイエルン州で活動を行わず、CSUはバイエルン州以外では活動を行わない為、実質上は一つの政党として機能している(党のカラーは少しだけ違い、CSUの方がより保守的といわれる)。ドイツの政局はこのCDU/CSUとSPD(社会民主党)の事実上の二大政党制に近い形となっている。
AfD 反EUなどを掲げるドイツの保守政党。正式名はAlternative für Deutschland、日本語に訳すとドイツのための選択肢。ギリシャショックをうけて経済的に危機に陥ったギリシャなどへの支援で、ドイツ国民の負担が増えたことなどを受けて、反EUを掲げて2013年に結党された。移民政策にも強く反対していることから、極右政党と称される場合もある。

今週の注目指標

ダドリーNY連銀総裁講演
9月25日 21:30
☆☆☆
 米国の金融政策の実務を担当するNY連銀総裁は、他の地区連銀とは別格扱いとなり、FOMCで常に投票権を持つ上に、FOMC副議長も兼ねることとなっている要職。ダドリー総裁はそうした重要な地位にいることに加え、中立派としてFOMC全体の状況を表す人物として発言が注目されている。
 今回NY州シラキュースのオノンダガコミュニティカレッジで行われる講演のテーマは労働力の発展。利上げ決定の重要な要素となる労働市場動向への言及が期待されるうえに、質疑応答時間が設けられているため、金融政策見通しなどについても言及がある可能性が高い。
 年内の利上げ見通しをはっきりと示してくると、ドル買いの材料となる可能性が高い。ドル円は113円を意識する展開に。
イエレンFRB議長講演
9月27日 01:45
☆☆☆
 イエレン議長が全米企業エコノミスト協会(NABE)のカンファレンスで、物価、不確実性、金融政策をテーマに講演を行う。今後の金融政策動向にズバリのテーマであり、さらに観衆からの質疑応答時間が設けられているため、突っ込んだ話が出る可能性が高い。質問する観衆もエコノミストであることから、質の高い質疑応答が期待されるところ。
 今月のFOMCでの金利見通しでは0.25%の利上げを見込んだとみられるイエレン議長であるが、従来はハト派であり、講演で慎重な姿勢を前面に出してくると、利上げ期待の後退につながる可能性も。この場合、ドル円は110円台を試す可能性。
日本消費者物価指数(CPI・8月)
9月29日 08:30
☆☆
 先週の金融政策決定会合で従来の長短金利操作付き量的質的緩和政策の現状維持を決めた日本銀行。米、英、欧州など主要国で金利の上昇や量的緩和の解除など、引き締め方向の動きが強まる中で、日銀の緩和維持姿勢が目立つ状況となっている。とはいえ、2%の物価目標達成が遠い現状、緩和政策を維持する姿勢を崩すのも難しい。
 今後の日銀の緩和政策の維持に向けて、物価目標の対象である消費者物価指数への注目度は高い。予想は総合・生鮮食料品除くコアともに前年比+0.7%と、7月分を上回る高水準が見込まれている。すぐに緩和後退見通しにつながるわけではないが、ある程度円買いに作用する可能性も。ドル円の上値を抑える要因となり、111円割れを試す可能性も。

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