2017年10月10日号

(2017年10月02日~2017年10月06日)

先週の為替相場

ドル買い優勢も北朝鮮リスク警戒

 

 2日からの市場で、ドル円は113円台に乗せる場面が見られるなど、ドル買いの動きが優勢な展開が見られた。

 週明け2日のNY市場でISM製造業景気指数が新規受注の伸びなどで2004年5月以来の高水準を記録し、ドル買いが強まる中でドル円113円台に。113円台では利益確定の売りが出て112円台に戻されれるなど、高値警戒感もみられたが、押し目は限定的で、基本的にはドル買いの流れに。4日のISM非製造業景況感指数も強く、米国内の景況感の強さがドル買いの安心感につながる面も。

 サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が先週行われた講演で、利上げはインフレ指標が上向くことを待つ必要はないと発言するなど、FRB関係者の利上げに前向きな姿勢も、ドル買いを支える格好となった。ウィリアムズ総裁は今年に入って利上げに前向きな姿勢を示してきているが、従来ハト派でイエレン議長に姿勢が近いといわれていた総裁だけに、強気な発言のインパクトがあった。

 注目された6日の米雇用統計(9月)は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想に反して前月比マイナスとなったものの、失業率が低下、平均時給が予想を上回る上昇を見せるなど、全体ではかなり強めの数字に。今回のNFPに関してはハリケーンの影響という特殊要因が大きかったという見方が強く、大きく問題視されなかった一方、ハリケーンの影響を受けにくい平均時給の強さが好感された。失業率に関しては、労働参加率が上昇する中で低下しており(一般的には労働参加率が上昇すると失業率も上昇する(用語説明1))、こちらもかなり力強い数字という見方が強まった。

 6日の海外市場では113円近辺がやや重くなっていたが、指標を受けて一気に大台を超えて上昇。113円40銭台まで上値を伸ばす展開が見られた。

 しかしNY市場午後には失速した。きっかけとなったのは北朝鮮問題。先週北朝鮮を訪問していたロシアのモロゾフ下院議員が、北朝鮮は米国の西海岸に届く新たな長距離ミサイルの実験を準備していると発言し、ドル売りを誘った。

 10月10日は北朝鮮労働党の創建記念日にあたることから、この連休中もしくは10日にミサイル実験が行われるのではとの思惑が広がり、ドル売りにつながった。ドル円は112円台へ値を落として週の取引を終えている。

 その他目立ったのはポンド売りの動き。

 英国の下院議員の間で先の総選挙での与党の苦戦に関してメイ首相の責任を問う声が強まり、辞任を求める動きも出ていることを嫌気して、ポンド売りが広がった。

 4日にマンチェスターで行われた英保守党の党大会で行われた党首演説では、コメディアンの乱入や、咳が止まらなくなるハプニングなどで、散々なものとなり、ポンド売り基調を加速させる格好に。ボリス・ジョンソン外相(用語説明2)の対立懸念も広がっている。

 週初1.33台で推移していたポンドドルは、週の半ばに1.32台へ下落。さらに保守党大会での演説などを嫌気してユーロポンドでユーロ買いポンド売りが広がったことで、1.30台まで値を落とす展開が見られた。150円台を付けていたポンド円も147円近辺までの大幅安に。

今週の見通し

 基調はドル高も政治リスクへの警戒続く

 先週末の米雇用統計を受けて、米国の年内利上げ期待はさらに強まり、FF金利先物市場動向から計算されたCMEFEDWATCHでの利上げ確率は9割を超える場面がみられた。一か月前には3割程度であったことを考えると、かなり大きな変化であり、ドル高を支える材料となっている。

 政策金利の上昇傾向は、2年債程度ならばともかく、10年債利回り動向への影響は通常抑えられたものとなるが、直近の米債利回りはかなりの上昇を示しており、こちらもドル買い材料に。

 カタルーニャ問題を抱えるユーロ、メイ首相の辞任要求が強まり政治リスクが一気に強まったポンドが、対ドルで売られ、欧州通貨安ドル高の動きが広がっていることも、ドル全面高の基調を誘っており、ドル円の支えに。

 今週後半には9月の米国物価統計(PPI/CPI)の発表が控えている。前回よりも強めの数字が予想されており、利上げへのハードルとなっている物価の低迷にも一服感が広がりそうなことも、ドル買いを誘いそう。

 リスクは政治情勢。北朝鮮問題は市場の懸念が収まったころに新しい材料が出てくるという状況で、根強いリスク要因に。ミサイル発射などは大きなドル売り円買い材料となるだけに、ドル円の高値追いを押さえる要因となっている。

 ドル高材料となっているカタルーニャ問題や、英国のメイ首相への不信感などは、今のところドル高に作用しているが、状況次第では円高への影響が強まる可能性があり、こちらも注意が必要。特にカタルーニャ問題は泥沼化する可能性があり、警戒感が必要か。

 基本的にはドル買い円売りが優勢で、113円台を再び伺う展開が期待されるが、北朝鮮などの動向次第では112円割れも。

 ポンド円の売りが強まる状況が見られると、こちらも警戒感。ポンド円は145円割れが意識される状況で、まだ下値リスクが高そう。

用語の解説

労働参加率と失業率 一般的に労働参加率が上昇すると失業率も上昇(悪化)する。これは景気の拡大局面において労働市場で求人が増えてくると、これまで就業自体をあきらめていた主婦や早期引退者、生活保護受給者などが、求職活動を行うようになる。失業率の母体となる労働者は、雇用者と求職者のみが対象となっていることから、これまで労働者の範疇に入っていなかった層が加わることで対象者が増加。実際にはすぐに職を得られるわけではないことから、一時的に失業率が悪化するというもの。
ボリス・ジョンソン外相 ジャーナリストを経て、2001年から下院(庶民院)議員。2008年から2016年まで二期ロンドン市長を務め、下院議員へ復帰。メイ政権で外務大臣に就任している。英国でもっとも人気のある政治家の一人で、ブレグジッドに関する国民投票に際しては、ブレグジッドに賛成する政治家の代表格として、流れを作った一人。

今週の注目指標

FOMC議事録
10月12日 03:00
☆☆☆
 10月からのFRBのバランスシート縮小開始を決めた9月のFOMC(9月19日・20日開催)の議事要旨が発表される。FOMC参加者による経済見通し(ドットプロット)で、年内あと一回の利上げ見通しが示されるなど、強気な姿勢が目立ったFOMCでの議論がどのような形で進んだのか。また、年内の利上げについて参加者はどこまで前向きなのかなどが注目材料。議事録を受けて年内の利上げ期待がさらに強まるようだとドル買いに。ドル円は113円台にしっかり乗せてくる可能性が高い。
パウエルFRB理事講演
10月12日 23:30
☆☆☆
 今週も多くの中銀関係者の発言予定が入っているが、なかでも注目を集めているのが、次期FRB議長候補として名前の挙がるパウエルFRB理事。12日には国際金融協会(IIF)の年次総会で講演を行い、13日にはボストン連銀主催イベントで講演を行う予定。
 現在次期FRB議長の有力候補として名前の挙がっているのが、同理事の他に、コーンNEC委員長、ウォーシュFRB元理事、イエレン議長(再任)。ハト派色の強いイエレン議長、タカ派といわれるウォーシュ元理事(コーン委員長は発言自体が少なく判断が難しい)に対して、パウエル理事は中立派といわれており、今後の金融政策についてどのような姿勢を示してくるのかが不透明なところがあるだけに、講演に注目が集まっている。利上げに積極的な姿勢が見られるようだとドル買いを誘いそうで、ドル円が113円台にしっかり乗せるきっかけとなりそう。
米消費者物価指数(CPI)(9月)
10月13日 21:30
☆☆☆
 12月の利上げに向けて、米FRBの二大命題(雇用の最大化と物価の安定)に関する指標への注目度が高まっている。米国のインフレターゲットはあくまでPCEデフレータであるが、発表日が早く、傾向が似ているCPIが注目を集める傾向にある。今回は予想の前年比が+2.3%(前月+1.9%)、同コア前年比が+1.8%(前月+1.7%)と上昇期待が広がっている。エネルギー価格の上昇が目立ち(ガソリンの全米全種平均の価格は8月から9月で10%以上上がっている)、予想前後の上昇は十分に期待できる。ハリケーンの影響での物価上昇も予想されるだけに、予想以上の数字も期待できる。予想を超え、年内利上げ期待が押し上げられると114円に向かう期待も。

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