2017年10月23日号

(2017年10月16日~2017年10月20日)

先週の為替相場

ドル高基調強まる

 

 16日からの市場は、ドル円が113円台に乗せるなど、ドル高基調が優勢な展開となった。

 日経平均が戦後最長に並ぶ14連騰、ダウ平均株価やドイツDAX指数が史上最高値を更新するなど、世界的に株高の動きが強まったことも、ドル高の動きにつながった。

 次期FRB議長人事に関して、テイラー・ルールで知られる世界的な経済学者テイラー・スタンフォード大学教授(用語説明1)が有力との報道が流れたことも、ドル買いに作用した。テイラー・ルールにおける均衡金利が3%を超えていることに加え、教授が過去にFRBの低金利政策を批判していることなどから、次期議長に決まった場合の今後の積極利上げ路線が意識され、短期金利だけでなく、長期金利の上昇につながったことなどがドル買いを誘った。

 金曜日には米上院が予算決議案を可決し、さらにドル買いが強まった。予算決議が通ったことで、今後の減税法案が通りやすくなる(議事妨害が出来なくなり、過半数の賛成で決議が通る)ことから、トランポノミクスへの期待感が広がった格好。

 週末の日本の衆院選への期待感もドル買い円売りを誘った。与党優勢の報道が、これまでのアベノミクス路線の継続や、黒田日銀の緩和政策維持の見通しにつながり、円売りにつながる格好となった。

 その他通貨で目立ったのはNZドル。

 先月のNZ議会選挙では国民党が第一党を維持したものの、過半数を確保できなかった。さらに議席数を伸ばした第二党労働党と第四党となった緑の党が連立を発表して、国民党と労働党・緑の党連合の間で、過半数確保争いが起こっていた。キャスティングボードを握った第三党NZファースト党(用語説明2)は、19日に労働党・緑の党連合に加わると発表。労働党のアーダーン党首が新首相になる形で、9年ぶりの新政権が発足した。

 これまでの国民党政権は、リーマンショック後のNZ経済を立て直し、高成長、安定物価、さらには経常赤字の解消をこなし、市場から信頼されていただけに、新政権に代わったことでNZドル売りが進んだ。対米ドルで0.71台後半から一気に0.70台半ばに急落。その後も戻りなく0.69台まで値を落とす展開となった。

 カタルーニャ情勢などへの懸念から売りが出る場面も見られたユーロは、独DAXの力強い動きなどが支えとなり、買いが入る場面が見られ、振幅が見られたものの、一方向の動きにはならず。

今週の見通し

 ドル高円安基調への期待が広がる。

 世界的な株高の動きなどもあって、リスク選好での円売りが優勢となっており、ドル円はしっかりの展開が期待されている。

 政治リスクへの警戒感が根強いが、北朝鮮リスク警戒での下げが出てもすぐに戻すなど、下値しっかり感が継続。欧州もカタルーニャ情勢がかなり深刻となっているが、ユーロ売りの動きは目立っておらず、政治リスクからの売りが限定的なものとなる展開が続いている。

 政治リスクでのドル安円高が後退すると、従来のドル高円安基調に復する可能性が高い。米経済成長への期待感、米株高を受けての世界からの投資資金の流入期待などがドル買いを誘っている。

 次期FRB議長人事に関しては、テイラー教授が議長もしくはパウエル理事と正副議長での同時指名という形で、FRBに関与すると、ドル買いにつながる。利上げへの積極的な姿勢が、長期金利を押し上げることで、投資資金の米国流入への期待が強い。また、金融規制緩和に積極的なことで知られており、投資銀行業務の活発化などが、ドル買いを誘う可能性も指摘されている。こうした状況から、当面はドル高基調が続くと期待される。ドル円は115円を強く意識する展開が期待される。

 もっとも、イエレン議長が留任となった場合は、いったんドル売りが進む可能性がある。

 上昇が目立つ米株に調整が入った場合も、ドル売り円買いが入る可能性。

 112円台半ばがこれらの調整が入った場合のポイントとなりそう。

 流れはまだドル高円安方面と見ているが、短期的な上昇が著しいだけに、ポジション調整などの動きには十分注意したいところ。

用語の解説

テイラー教授 ジョン・ブライアン・テイラー(John BrianTaylor)スタンフォード大学教授。中央銀行の金融政策を決定する際に、物価水準やGDPなどの動向や均衡インフレ率などの水準を変数として、最適な政策金利水準を示すテイラー・ルールの提唱で知られている。同理論の提唱によりノーベル経済学賞の有力候補として毎年名前が挙がるなど、米国を代表する経済学者の1人。
ジョージ.H.W.ブッシュ政権(ブッシュシニア)の下で大統領経済諮問委員会(CEA)委員、ジョージ.W.ブッシュ政権(ブッシュジュニア)の下で、財務次官(国際担当)を務めるなど、金融政策の専門家でもある。
NZファースト党 1993年に国民党に所属していたピーターズ党首が結成した政党。アジア系を中心とした移民に反対する姿勢や、国有財産の民営化への強い反対姿勢で知られている。国民党との連携の下、ピーターズ党首は1996年から1998年まで副首相を務め、2005年から2008年までは閣外協力の形で外務大臣を務めている。

今週の注目指標

英第3四半期GDP速報値
10月25日 17:30
☆☆☆
 英国の第3四半期GDPの速報値が発表される。比較的堅調な景気回復の下、来月の英中銀金融政策会合(MPC)での利上げ期待が広がる英国であるが、今年に入ってGDPはやや期待外れ。第1四半期は前年比+1.8%、第2四半期は前年比+1.5%(ともに確報値)と、伸び悩んでおり、上期としての伸びは2012年上期以来の弱いものとなった。第3四半期も予想は前年比+1.5%と冴えない。輸出が伸びて全体を何とか支えているが、ブレグジッドに絡んで今後の交易状況への警戒感が広がっている中だけに、内訳についても警戒感が広がっている。予想前後もしくはそれ以下の数字が出てくるとポンドにとっては売り材料となりそう。ポンドドルは1.30の大台を意識か。
ECB理事会
10月26日 20:45
☆☆☆
 今回のECB理事会では、年末までが期限となっている現行の量的緩和政策(QE:債券購入プログラム)について、来年以降の方針が示されると期待されている。現行水準での延長ではなく、額を減らして終了へ向かうテーパリングの動きが期待されている。当初は月額を現行の600億ユーロから300億もしくは400億に減らした形で、半年の継続が見込まれていたが、ここにきてもう少し長期、9か月から1年の延長が噂されている。この場合、月ごとの購入額は減少するとみられるが、QE終了後に強まる利上げ期待を先送りさせることが出来るため、緩和的な政策という印象が強まる。12か月の延長を決めた場合はユーロ売りの動きがかなり強まりそうで、ユーロドルはサポートである1.1650割れも意識される。
米第3四半期GDP速報値
10月27日 21:30
☆☆☆
 米国の経済成長度合いを示す第3四半期GDPの速報値が27日に発表される。予想は前期比年率2.5%と第2四半期の3.1%からやや鈍化見込み。もっとも、第2四半期が強すぎただけであり、FOMCでの今年の経済成長見通しの中央値である2.4%を上回る高水準。GDPとの関係が深いことで知られる耐久財受注が直近好結果を示すなど、米経済指標動向から十分可能性のある水準で、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドル高が強まると期待される。ドル円は115円を意識する展開も。

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