2017年11月06日号

(2017年10月30日~2017年11月03日)

先週の為替相場

ドル高基調継続も、上値では売りが残る

 30日からのドル円相場は、日、米、英の金融政策会合、米雇用統計、次期FRB議長の指名など、多くのイベントをこなす中で、振幅を見せる展開もあったが、基本的には堅調地合いを維持した。

 もっとも、23日からの週以降、頭を抑えた114円台半ばでは上値を抑えられる展開に。

 週初はドル安が優勢となった。27日に報じられた次期FRB議長(用語説明1)にパウエルFRB理事が有力との報道がドル売りを誘った。さらに、30日には米下院が税制改革法案に関して、段階的な減税を検討との報道がドル売りを誘った。

 一時113円割れまで売り込まれたドル円は、翌日の海外市場で月末締めの実需に絡んだ外貨買い円売りが広がり、再びドル高円安の流れに。日経平均やダウ平均の力強い上昇にも支えられて、再び114円台を回復した。

 その後、ISM製造業の弱めの数字などに、ドル売りが強まる場面も見られたが、米連邦公開市場委員会(FOMC)後に再びドル買いが優勢に。

 FOMCは事前見込み通り政策金利の据え置きを発表。声明でも目立ったサプライズはなく、無事通過という展開となった。そのため、発表直後の反応は鈍かったが、その後イベントクリアの安心感からドル買いが優勢となった。

 木曜日にはパウエルFRB理事を次期FRB議長に指名する見込みが、当局筋から報じられ、いったんドル売り。この日概要が示された下院の税制改革法案に対する警戒感もドル売りを誘った。

 もっとも、ドル売りは限定的で、金曜日の雇用統計前には114円台を回復。しかし、米雇用統計が予想を下回る弱い結果となり、再びのドル売りと不安定な動きに。

 雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回る増加にとどまったほか、平均時給も予想を下回る弱めの結果となり、114円台から113円50銭台まで下落。しかし、そこからの買い戻しの勢いも強く、114円40銭台までと、週の高値を更新する激しい振幅を見せた。

 その他目立ったのが、10年ぶりの利上げを決定したポンドの動き。

 注目された2日の英中銀金融政策会合(MPC)は7対2で2007年以来となる利上げを決定した。もっとも、利上げ自体はすでに織り込み済み。カンリフ副総裁とランスデン副総裁(用語説明2)が据え置きに投票しての7対2という結果も、想定の範囲内となった。しかし、同時に発表された四半期インフレ報告において、来年2018年の経済成長見通しと物価見通しがともに引き下げられ、ポンド売りが進行。MPCの声明では2020年末時点での政策金利を1.00%と、今後3年間でわずか二回の利上げを想定と、かなり緩やかな見通しを示し、こちらもポンド売りにつながった。

 ポンド円は151円近辺から149円割れまで下落。その後も149円を挟んでのもみ合いが中心となるなど、ポンドは軟調地合いに。

今週の見通し

 イベントをクリアし、今週はそれほど大きな材料イベントがない。トレンドはまだドル高円安方向。心理的にも大きな節目である115円をにらんで、高値トライを強く意識する展開となりそう。

 10月の雇用統計はやや弱めに出たものの、ハリケーンの影響が大きかった9月からの反動が大きく、9月分の修正なども合わせると、米国の雇用市場は堅調という印象が強い。

 米第3四半期GDPの力強い結果も含め、米景気への信頼感は根強い。さらに米議会で始まった税制改革法案関連の話題も、基本的にはドル買い材料に。

 115円手前の売りはまだ残っているとみられる。ここをしっかり超えると、昨年末から今年1月にかけてトライした118円台が意識される展開となるだけに注意したいところ。

 世界的な株高を引っ張る米株式市場の動きは、次期FRB議長にパウエルFRB理事が選ばれたことで、安心感から継続してくると期待される。

 高値警戒感が残るものの、日本からの材料ではないだけに、ドル円の値ごろ感だけで上昇を止めるのは難しそう。

 リスク要因は米国の税制改革の動き。先月成立した予算決議案は、上下両院ともぎりぎりの通過であった。共和党内部からの反対意見がどこまで強まるのかが未知数なだけに、税制改革が期待ほど進まない可能性は十分にある。この場合、いったん大きな調整が入りそう。

 基本的には115円を超えての上昇を期待するが、米議会の動向次第でいったん112円への調整もありうる。

 

用語の解説

次期FRB議長 FRB議長は大統領が指名し、上院の多数決によって承認される(下院は承認権限を有しない)。任期は4年で、再任する場合も、上院の承認が必要。現在のイエレンFRB議長の任期は2018年2月3日まで。上院での承認に際しては、少数政党による議事妨害が認められておらず、51名(もしくは50名と副大統領)の賛成で承認が可能なため、パウエルFRB理事の次期FRB議長就任はほぼ確定的。
ラムスデン英中銀副総裁 Sir David Ramsden、今年の9月4日に英中銀副総裁に就任。担当は市場・銀行。オックスフォード大学でMA、LSEでMSCを取得後、英財務省に勤め、2007年から2017年まで財務省の主席経済アドバイザーを務めている。財務省勤務時代にSirの称号を得ている。
 利上げには就任当初から消極的な姿勢を示し、就任後の議会証言でも、利上げの賛成に向けた準備ができないと、11月の金融政策会合での据え置き主張を示唆していた。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
11月07日 12:30
☆☆☆
 豪中銀の金融政策理事会が7日に開催され、12時半に結果が発表される。政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)は現行の+0.50%の据え置きで確定的。豪中銀は当面の金利据え置きを明言しており、波乱要素はほとんどない。同国にとって史上最低水準である現行の金利水準が続くことで、もっとも大きな問題となっている都市部の住宅価格の上昇については、融資抑制策が効果を表しており、状況が緩和しつつあると、前回の理事会での声明で示されており、金利を変更する余地がほとんどない。注目は声明の内容。豪ドル高が収まってきている中で、豪ドル高牽制の姿勢をどこまで示すのか、また中長期的な緩和姿勢維持をどこまで示すのかなどが焦点となりそう。緩和姿勢継続を強調で、米国との金利差縮小懸念が広がり、豪ドルは対ドルで下落する可能性、0.7500のポイントを目指す展開も。
NZ中銀政策金利
11月09日 05:00
☆☆☆
 9日にNZ中銀金融政策が発表される。政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)は現行の1.75%での据え置きが確定的。NZ中銀は8月の政策金利発表時に、今後2年間は利上げを見込んでいないと表明しており、当面金利の据え置きが続くとみられる。
 そうした中、注目を集めるのは声明の内容。先月発足したNZの新政権は、NZ中銀に対して、中銀法の改正により、中銀の責務にこれまでの物価の安定だけではなく、国内経済活動を支えるために雇用状況の点検を含める方針を示している。具体的な工程表の発表がまだ無いだけに、現時点での言及があるかは未知数であるが、中銀の独立性への言及などがあると、中銀と政府の対立姿勢を意識させ、NZドル売りが広がる可能性も。NZドル円は77円台半ばのサポートを意識する展開に。
中国消費者物価指数(10月)
11月09日 10:30 
☆☆
 9日に中国の物価統計(10月)が発表される。消費者物価指数の前年比は+1.7%と、9月の同1.6%から上昇見込み。平均で2%前後あった昨年に比べて、今年は消費者物価指数の価上昇がやや抑えられているが、ここにきて8月の+1.8%、9月の+1.6%と比較的高水準な数字を記録しており、今回も予想通りの数字が出てくると、中国の景気動向の堅調さを意識させそう。対中輸出が大きい豪州経済などにプラスの材料となり、豪ドルの買いが強まる可能性。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、豪ドル円は88円をしっかり超える展開が期待される。

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