2017年11月13日号

(2017年11月06日~2017年11月10日)

先週の為替相場

週初ドル高も、後半に入って調整目立つ

 6日からのドル円相場は、週初に3月以来の高値圏となる114円70銭近辺を付けるなど、週の前半はドル高円安基調が継続。もっとも、週の後半にかけて米税制改革の不透明感などが重石となり、一時113円10銭近辺を付けるなど、調整ムードがやや優勢な展開となった。

 先週の月曜日、東京ではいきなりのドル高円安でスタートした。先々週3日の米雇用統計が弱めに出たことで、いったんはドル売りが進んだ。しかし、すぐに切り返して114円台を回復して週末を迎えたことで、下値しっかり感が強まり、6日にはドル買いが優勢に。

 仲値に絡んだドル買い円売り需要も見られ、ドル円は上値のポイントと見られた114円50銭をしっかり超えて、今年3月以来の高値圏114円70銭近辺まで上値を伸ばす展開に。

 高値からは利益確定の売りも入ったが、週の前半は株式市場が堅調で、ドル円を支える格好に。日経平均が1992年1月以来の高値を付けるといった動きに、114円を挟んだ高値圏での振幅が見られた。

 しかし、8日の日本時間朝方に米紙ワシントンポストが、上院共和党が法人減税施行の1年先送りを検討していると報じ、ドル売りが優勢に。

 その後も振幅の中で114円台を付ける場面が見られたものの、高値圏では売りが出るやや頭の重い展開に。

 9日に公表された上院共和党による税制改革法案の概案では、法人減税の施行を2019年1月からと、当初予定より1年先送りする方針が実際に示され、ドル円が113円台10銭近辺まで値を落とすなど、軟調地合いが目立つ展開となった。

 ドルの他、NZドルと英ポンドの動きが目立った。

 NZドルは、事前見通し通り政策金利を据え置いた9日の中銀金融政策発表において、次回の利上げ時期見通しの前倒しを発表。NZドル買いが強まった。NZドル円は78円台後半から79円台にしっかり乗せる場面が見られた。

 英ポンドは神経質な動きとなった。8日にパテル国際開発相が辞任(用語説明1)。1日の国防相辞任に続く今月二人目の辞任に、メイ首相の求心力低下が懸念され、ポンド売りを誘った。もっとも、英景気自体は堅調で、2日に9年ぶりの利上げを実施した影響が残っており、落ち着くと買いも入る展開で、振幅が見られた。

今週の見通し

 先週前半まで上昇が目立った世界の株式市場は、利益確定の動きなどから一気に不安定な動きに。

 株式市場と為替市場の相関はそれほど高いものではないが、株高がリスク選好の動きを誘っていた面は否定できず、株高の調整が円高圧力となっている。

 米税制改革に対するリスク警戒感も強い。財政赤字拡大への懸念から減税施策に一定の歯止めが必要となる中、上院共和党と下院共和党のそれぞれの減税プランに大きな差異が見られ、今後の調整がかなり難しいものとなっている。特に上院は共和党が多数派とはいえ、ごくわずかな差で、財政赤字拡大を嫌い予算決議案採決で反対に回ったランド・ポール議員(用語説明2)のような超保守派も抱えていることから、調整案の内容次第では議会を通らない可能性も高く、難しい状況となっている。

 トランポノミクスの柱の一つである減税実施で手間取ると、市場に失望感が広がり、ドル売りにつながる可能性も。

 もっとも、基調はまだ上方向。米経済への信頼感は厚く、いったん調整が入りつつある米株も、中期的には上値期待が強い。

 リスク要因をにらんで振幅を交えながら、上値トライのタイミングを計る展開に。114円台を回復してくると、115円超えに向けた動きが本格化してきそう。レンジ取引を基本に、上値トライのタイミングを計る展開か。

 その他通貨で注目は、先週も動きが見られたポンド。メイ首相の求心力低下が、どこまでポンド売りに作用してくるのかが注目されるところ。147円50銭が目先のターゲット。

用語の解説

パテル国際開発相辞任 英国のパテル国際開発相は、8月の休暇中に家族で訪れていたイスラエルで、ネタニヤフ首相らと会談を行った。英国は閣僚が他国の要人と会談を行う場合、事前に報告する義務がある。しかし、パテル氏は報告を怠っていたうえ、会談後も公表を行わなかった。与党保守党の中で右派の有力議員といわれているパテル氏であったが、同件を受けて閣僚を辞任。後任には同じく女性の下院議員であるモーダント氏が就任した。
ランド・ポール上院議員 ケンタッキー州選出の上院議員。父親は小さな政府の実現を主張するリバタリアンとして知られ、大統領選にも何度か挑戦したロン・ポール元下院議員(通算10期)。ランド・ポール議員も父親と同じく小さな政府の志向で知られ、ティーパーティー層からの支持が厚い。2016年の大統領選挙では、共和党候補者を決める予備選に出馬も、予備選初戦のアイオワ州党員集会の結果を受けて撤退した。減税論者であるが、同時に徹底した財政支出の削減を主張しており、財政赤字拡大を招くとして先月の予算決議案には反対に回った。

今週の注目指標

英消費者物価指数(CPI)(10月)
11月14日 18:30
☆☆
 2日の英中銀金融政策会合(MPC)で9年ぶりの利上げを決定した英中銀。今回の利上げに関しては、ブレグジット決定後に下げた分を戻した格好で、リーマンショック以降の景気鈍化局面で引き下げた分を戻したものではないことから、追加利上げについては当面慎重な姿勢が続くと見られている。もっとも、これまでの緩和的な政策の影響もあり、英国の物価はターゲットを大きく超えた推移が続いており、直近9月のCPIは、前年比+3.0%と英中銀が定める許容上限に到達している。今回は前年比+3.1%と、許容上限超えが予想されている。ブレグジット問題もあり、すぐの追加利上げは難しいが、予想通りもしくはそれ以上にインフレが加速するようだと、来年の早い段階での追加利上げ期待につながり、ポンド買いが進む可能性も。ポンド円のターゲットは150円。
米小売売上高(10月)
11月15日 22:30 
☆☆☆
 前回9月分は前月比+1.6%と2015年3月以来の大幅な伸びを記録した。もっとも、ハリケーンの影響で自動車販売が+3.6%の大幅な増加を記録したことや、同じくハリケーンの影響でガソリン価格が急騰し、ガソリンスタンド売り上げが+5.8%の伸びを記録したことが背景にあり、その影響が薄れる今回は反動もあって、弱めの数字が予想されている。今のところの予想は全体が前月比変わらず、自動車を除くコアが前月比+0.2%とかなり落ち着いたものに。ある程度は予想の範疇となるが、予想を超えて前月比で大きくマイナスを記録するようだと、ドル売りも。ガソリン価格が全米全種平均で9月から約5%も低下しており、ガソリンスタンド売り上げの大幅な鈍化が見込まれていることもあり、予想以上に弱めの数字が出る可能性が十分あるだけに要注意。ドル円が113円割れを試すきっかけとなる可能性も。
米消費者物価指数(CPI)(10月)
11月15日 22:30 
☆☆☆
 小売売上高と同時刻に米消費者物価指数も発表される。予想は前年比+2.0%と前回9月分の+2.2%から鈍化する見込み。もっとも食品とエネルギーを除くコアは前年比+1.7%と9月分と同水準の維持が見込まれている。ガソリン価格の下落が見られたことで総合の数字は弱めに出るものの、コアは堅調を維持と見込まれている。もっとも、米国のインフレターゲットの対象であるPCEデフレータはCPIよりも弱めに出ることから、予想程度の数字では、ターゲットのPCEデフレータ前年比+2.0%が、まだかなり遠いという印象を与える可能性も。予想通りの数字が出てくると影響は限定的も、予想を割り込むようだと来年以降の追加利上げペースの鈍化懸念につながり、ドル売りを誘う可能性も。112円台半ばのサポートを試す可能性も。

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