2017年11月20日号

(2017年11月13日~2017年11月17日)

先週の為替相場

株高の調整続き、ドル安に

 13日からのドル円相場は、世界的な株高の調整が続いたこともあり、ドル安円高が優勢な展開となった。114円からの売り意欲が意識されて113円台での推移が続いた後、株安の進行や、米税制改革の不透明感などへの嫌気でドル売りが進んだ。

 米税制改革については16日木曜日に下院が本会議で税制改革法案を可決。上院に送付する形となったが、上院が独自に審議している上院案との差異が大きく、今後の調整難航が予想されている。目玉の一つである法人減税に関しても、来年1月からの実施を求める下院案と、基本的に一年先送りを求める上院案で違いが見られる。財政赤字への警戒感も広がっており、当面は法案の調整作業が続きそう。

 さらに週末にはロシアゲート疑惑に絡んだドル売りも見られた。同疑惑を調査するモラー特別検察官が、トランプ陣営幹部に対して召集を通知したとの報道が、ドル売りを誘い、ドル円は週末にかけて111円台まで値を落とす場面が見られた。

 リスク警戒感からの米国債への資金流入(国債価格上昇による利回り低下)も目立ち、ドル売り材料となった。

 その他通貨で目立ったのはポンド。メイ首相に対して与党保守党の40名の議員が退陣要求に署名との報道で、週初からポンド売りに。

 14日に発表された英消費者物価指数(10月)が予想に反して前年比で伸びず、9月分と同じ前年比+3.0%にとどまったこともポンド売り材料となった。ポンドドルは一時1.31割れまで。

 もっとも、その後はドル安の影響もあって買い戻しが優勢に。15日には英賃金統計の上振れもあって、買い戻しが目立った。

 週の後半にかけてもポンドの買い戻しが入っていたが、ブレグジット問題での交渉が行き詰まっているとの見通しが広がったことで、週末にかけては調整が入った。

 オセアニア通貨は売りが優勢となった。

 NZドルは、新政権による中銀改革の動きが重石となった。来年3月に任期を迎える中銀総裁の交代もにらんで、雇用増(=景気刺激)への圧力を強めているとの思惑が、NZドル売りを誘っている。週の半ばには米ドル全面安基調が強まったことで、対米ドルでの買い戻しが入る場面も見られたが続かず。対円ではリスク回避の円買いも入っており、78円台から76円台前半へ値を落としている。

 豪ドルもNZドル同様に頭の重い展開に。15日に発表された第3四半期豪賃金コスト指数(用語説明1)が予想ほど伸びなかったことによるインフレ鈍化懸念なども豪ドル売りにつながっている。

 

今週の見通し

 リスク警戒の動きが強まっている。

 世界的な株価調整の動きが続いており、振幅の激しい不安定な展開の中、ドル円は下値を探る展開に。

 株安の動きがリスク警戒での円買いを誘い、ドル円、クロス円の重石となっている。

 欧州の政局問題もリスク警戒につながっている。英国はメイ首相の指導力低下が懸念されており、ブレグジット交渉も難航。ブレグジットに関しては、EU離脱に伴う負担金について、英国とEU側との温度差が激しく、当面の難航が見込まれている。こうした政治情勢の不透明感はポンド売りに。

 ユーロ圏ではドイツの政局問題が重石に。メルケル首相率いるCDU/CSUは、9月の連邦議会選挙で、第一党こそ確保したものの議席をかなり減らした。それまで連立を組んでいた第二党SPDは連立からの離脱を早々に発表しており、第四党であるFDP(用語説明2)と第六党である緑の党との連立で、過半数を確保する交渉を続けてきた。しかし、移民問題をはじめ意見の相違が大きいFDPと緑の党の対立が激しく、FDPが連立交渉からの離脱を発表し、連立交渉が失敗。

 移民問題に強く反対する極右政党AfDとの連立も難しいこともあり、メルケル首相はかなり不安定な政権運営を迫られる可能性が高まって、ユーロの売り材料となっている。当面は厳しい状況が続く可能性も。

 オセアニア通貨の売りも収まっておらず、対ドル、対円で頭の重い展開に。

 これらリスク要因状況を受けて、ドル円は下方向への期待感が強まっている。先月16日に付けた111円台半ばが目先のターゲット。割り込むと、110円を意識する展開も。

 ユーロはドイツ政局問題が落ち着くと買い戻しが進む可能性が高い。インフレ鈍化懸念が後退しており、1.17近辺の買いで下値を止められると、再び1.18台半ばの直近高値をトライする展開に戻る可能性も。

用語の解説

豪賃金コスト指数 Wage Price Index(WPI)、豪連邦統計局(ABS)が四半期ごとに発表する全業種における時給換算ベースでの賃金を元にした指数。所定労働時間における時給がベースとなり、残業などの割り増し分やボーナスなどは除かれている。インフレの鈍化による賃金上昇ペースの鈍化に加え、豪経済がそれまで依存してきた比較的給与の高い資源業から非資源業へのシフトを進める中で、同指数は低迷している。2016年第3四半期に1998年の統計開始以来最低水準となる前年同期比+1.9%を記録。その後も2017年第2四半期まで+1.9%の水準が続いていた。今月発表された2017年第3四半期は+2.2%への上昇が期待されていたが、+2.0%までの小幅改善にとどまった。
FDP Freie Demokratische Partei、独自由民主党。1948年に成立した中道右派政党。比較的中道に近い党の性格から、連立相手として選ばれるケースが多く、旧西ドイツの成立から1998年までのほとんどの時期において、ドイツの二大政党CDU/CSUとSPDのどちらかにつく形で、連立内閣に加わっていた。反移民を掲げるAfDに支持層を奪われる形で2013年の総選挙で全議席を失ったが、2017年の選挙では80議席を獲得して第四党として国政に復帰した。その後のCDU/CSUと緑の党との連立交渉では、移民問題に消極的なFDPと移民受け入れを求める緑の党と対立が目立っていた。また、環境問題でも、石炭火力発電の早期廃止を求める緑の党と、経済への影響が大きいとして存続を求めるFDPとの対立が指摘されており、交渉が難航していた。

今週の注目指標

米耐久財受注(10月)
11月22日 22:30
☆☆
 米国のGDP見通しに重要な影響を与える耐久財受注が22日発表される。9月は通信機器の受注が大きく伸びたこともあり、予想を超える+2.0%の伸びとなった。コンピューターや加工金属などの伸びも全体を押し上げた。今回はその反動もあって前月比+0.4%にとどまる見込み。ある程度の鈍化は予想の想定内であるが、前月比でマイナスとなるような数字を示すと、10-12月期GDPへの警戒感にもつながり、ドル売り材料となる。比較的ブレの大きな指標だけに要注意。前月比でマイナスとなるような場合、110円台への動きが意識される可能性も。
米FOMC議事録
11月23日 04:00
 10月31日、11月1日に行われた米連邦公開市場委員会での議事録が公表される。同FOMCでは政策金利(FF金利誘導目標)を1.00%-1.25%に据え置くことを全会一致で決定した。市場では次回12月のFOMCでの利上げ見通しで一致している。前回のFOMCでの声明では、経済情勢はFF金利の緩やかな引き上げを許容するように進むと予測しているという表現で、12月の利上げに前向きな姿勢を示した。今回の議事録で、こうした12月の利上げ方針を確認する格好となりそう。また、来年以降の政策運営についてのヒントがないかなどが注目される。来年以降の緩やかな利上げ方針の維持が確認されると、安心感からドル買いの動きも。相場への影響は限定的も111円台などの下値を支える材料となりそう。
米ブラックフライデー
11月24日
☆☆
 23日は米国の感謝祭(サンクスギビングデー)の祝日。翌日の金曜日はブラックフライデーと呼ばれる年末セールの初日となる。小売店が一年で最も売り上げを上げる日といわれ、多くの買い物客でにぎわう。米国のGDPの約7割を占める個人消費動向を見るにあたって、年末商戦の状況は非常に重要で、ブラックフライデーの活況が今後のドル買いの安心感につながる。なお、株式・商品市場は短縮取引。外国為替市場は開いているものの、木曜日から連休を取る参加者が多く、実質的に休場ムードとなる点に要注意。週の後半にかけて米国の参加者が極端に減るため、週の半ばにかけては調整ムードが広がる可能性も。週初にどちらかに行き過ぎた動きを見せるようだと、その反動が見込まれる。また、木曜日、金曜日は比較的狭いレンジ内での取引に終始することが多い。

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