2017年11月27日号
先週の為替相場
ドル安傾向い継続
20日からのドル円相場は、週の後半に111円07銭を付けるなど、ドル安円高の流れが継続する展開となった。
先週は木曜日が米国の感謝祭(サンクスギビング)の祝日。週の前半は感謝祭をにらんだ調整ムードが強い展開に。独政局をにらんだユーロ円での円買いなども重石となった。感謝祭翌日の金曜日の米国市場は一応開いていたものの、株や債券が短縮取引で取引参加者が少なく、週の後半はお休みムードに。
週初は111円台での買い意欲が見られたこともあり、米株の上昇などを支えに112円台後半まで値を戻す場面も見られたが、ダウ平均などが史上最高値を更新する中で、ドル円は値を落とすなど、ドル高の流れは限定的なものに。
21日NY市場夕方(日本時間22日午前)に行われたイエレンFRB議長の講演で、現状の低インフレの長期化に対する懸念が示され、ドル売りが優勢に。さらに、22日NY市場午後のFOMC議事録において、大半の参加者によるインフレ率が長期間目標に届かないとの懸念が示され、さらにドル売りが強まった。
もっとも、111円の大台を何とか維持したことで、週末にかけて少し調整が入り、111円台半ばで週の取引を終えている。
その他通貨で目立ったのはユーロ。独政局を巡る情勢がユーロ相場を揺らす展開となった。
9月に行われたドイツ連邦議会選挙で、メルケル首相率いるCDU/CSU連合は第一党を確保したものの、議席を減らし、過半数には程遠い状況に。それまで連立を組んでいた第二党SPD(用語説明1)が選挙前から連立拒否の姿勢をはっきりと示していたこともあり、選挙後は第四党のFDP、第六党の緑の党との連立で調整を行っていた。
しかし、移民問題や環境問題などの基幹的な政策で大きな隔たりのあるFDPと緑の党の間の調整は難しく、週初にFDPが連立交渉からの離脱を発表。CDU/CSUは過半数確保が難しくなり、政権運営の不透明感が強まったことでユーロ売りが入った。
もっとも、独製造業PMIやIfo景況感指数が強めに出るなど、基本的に好調なユーロ圏経済情勢もあって、ユーロ売りの動きは限定的に。
週後半になって、これまで連立参加を拒んできたSPDが態度を軟化させ、連立に前向き姿勢を示したことで、政局懸念も一気に後退し、ユーロ買いが強まる展開となった。
ポンドは、ユーロ買いの流れに加え、ブレグジット問題での進展期待などに対ドルを中心にしっかりとなった。
今週の見通し
ドル安の流れが継続している。ドルの相対的な強さを示すドルインデックスは10月の安値を割り込み、9月26日以来の安値圏まで低下。ドル全面安の流れが強まっている。
今週にも上院本会議で税制改革法案の議決が行われる見込みとなっているが、すでに反対を表明している議員もおり、通過するかどうかはかなり微妙な情勢。また、仮に通ったとしても、先日下院を通過した下院案との隔たりが大きく、今後の調整が難航するとの見方が強いだけに、税制改革動向の不透明感が払しょくできていない。
ドル円の111円、ユーロドルの1.20と、ポイントとなる水準が近くにあり、簡単にドル売りが進む状況ではないが、ポイントを抜けてくるようだと要注意。
ユーロに関しては、製造業PMIなどの数字に見られる経済状況の強さに加え、一時懸念された独政局の問題が解決に向かっていることが大きく、1.20を超えてくる可能性が高い。ユーロ円での買いにある程度回るため、ドル全面安になるかどうかは微妙であるが、ドル円の頭を抑える材料となる可能性がある。
先週急落を見せた中国株式市場動向への警戒感も根強い。23日の急落に対して中国の政府系基金の動きが鈍かったことで、中国株式市場への安心感が後退しているとの指摘もある。
アジア株全般に下落トレンドが強まると、リスク回避の円高の流れが加速する可能性も。
今週28日に行われるパウエルFRB理事の次期議長指名承認公聴会(用語説明2)もリスク要因。先週のFOMC議事録などで示された低インフレ長期化への懸念を意識させると、ドル売りが広がる可能性がある。
ドル円は110円の大台を強く意識する展開となりそう。
用語の解説
SPD | ドイツ社会民主党(Sozialdemokratische Partei Deutschlands)。ドイツの二大政党の一つで、中道左派政党。1998年から2005年まで党首であるシュレーダー氏が首相を務めるなど、政権にもたびたび参加。第二党に落ちた2005年以降も、第一党となったCDU/CSUとの大連立により、2005年から2009年、2013年から2017年9月まで政権に参加。今年9月の総選挙以降は連立を解消することを宣言していたが、CDU/CSUとFDP及び緑の党との連立交渉が失敗に終わったことを受けて、CDU/CSUとの連立で過半数を超える安定政権を成立させることに前向きな姿勢を示している。 |
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次期議長指名承認公聴会 | FRB議長は、大統領が候補を指名し、上院が承認することで就任が決定する(米国では下院には人事権が無い)。上院本会議の承認採決を前に、上院の銀行委員会(正式には銀行・住宅・都市委員会)で公聴会を行い、議長にふさわしいかどうかの審議を行う。この機会を次期議長指名承認公聴会と呼ぶ。上院銀行委員会は23名の上院議員(共和党12名、民主党11名)によって構成されている。 |
今週の注目指標
パウエル次期FRB議長候補承認公聴会 11月29日 00:00 ☆☆☆ | 28日にトランプ大統領から次期FRB議長の候補として指名を受けたパウエルFRB理事が、上院銀行委員会での公聴会に臨む。次期FRB議長としての姿勢などが追及される見込みで、今後の金融政策に向けた姿勢などが確認される。パウエル理事は中立派と称されているが理事として臨んだFOMCでの採決において、イエレン議長の提案に一度も反対しておらず、イエレン議長に姿勢が近いと見られている。イエレン議長と同じく慎重な姿勢が確認され、現状の低インフレの長期化への懸念などが示されるようだと、ドル売りが強まる見込み。ドル円は110円に向けた動きとなる可能性も。 |
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OPEC総会 11月30日 ☆☆☆ | 年に一度のOPEC総会が、本部のあるウィーンで11月30日に開催される。加盟国及びロシアなど非加盟主要産油国は、今週初めからウィーンに入り、協調減産の延長についての議論を重ねると見られている。現状の協調減産は来年3月末が期限となっている。この期限を来年末までに延期すると期待されている。もっとも減産の規模についてのロシアとサウジアラビアの合意がまだ不透明。また、テロ問題で6月に国交を断絶したサウジアラビアとカタールとの対立が解消されていないなど、リスク要因も抱えている。市場が期待している通り来年末までの延長が決まり、減産姿勢が強調されるようだとNY原油の上昇を誘い、カナダドルや資源国通貨である豪ドル、南アランドなどの買い材料に。カナダドル円は直近の下落トレンドから反発し、88円台をしっかりと回復する期待も。 |
米ISM製造業景気指数(11月) 12月02日 00:00 ☆☆☆ | 米国の製造業の景況感を示すISM製造業景気指数(11月)が1日のNY市場で発表される。ハリケーン被害からの回復期待で9月の同指標は60.8と13年半ぶりの高水準を記録。前回10月の同指標はその反動もあって58.7に鈍化した。もっとも、好悪判断の基準である50.0は大きく上回っている。内訳をみると新規受注や生産といった重要視される項目が60以上を維持しており、かなり好調という印象。今回は58.3と前回よりも小幅な鈍化が見込まれているが、水準としてはかなり強めで、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、米ドルの買い材料となりそう。ドル円が113円に向かうきっかけとなる可能性も。 |
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