2017年12月04日号

(2017年11月27日~2017年12月01日)

先週の為替相場

ドル高円安も週末にいったん大きく振れる

 27日からのドル円相場は、基本的にドル高円安の流れ。ドル円は週初の111円割れから、金曜日に112円80銭台を付けるところまで一時上昇を見せた。 

 米国の税制改革への期待感がドル買いを誘った。下院では本会議での税制改革法案可決が済んでおり、対応が注目された米上院。28日の上院予算委員会で上院共和党案による税制改革法案が可決。その後の本会議では態度を明らかにしない議員が複数名出て、成立が微妙視される場面も見られた。しかし、消極的であったマケイン議員が賛成表明するなど、状況が好転するにしたがって、ドル買いの動きが強まった。実際の可決は取引が終了した後の現地時間2日未明までかかったが、期待感から先週時点でドル買いが進んだ。

 欧州の状況もリスク選好を誘った。

 ドイツのメルケル首相率いるCDU/CSUは、9月の連邦議会選挙で第一党を確保も、当初見込まれていたFDPと緑の党との連立交渉に失敗。CDU/CSUは過半数を確保しての安定政権樹立が難しくなり、市場の懸念を誘っていた。再選挙まで視野に入る事態となったが、選挙時点から連立入りを拒否してきた第二党SPDが連立に前向きと報じられ、一気に警戒感が後退。ユーロ買いが広がる展開となった。金曜日にはメルケル首相とシュルツSPD党首が連立協議開始で合意しており、状況はかなり好転している。ドル全面高の中、ユーロドルは1.19台から1.18台前半まで落とされる場面も見られたが、週の後半に1.19台を回復する場面が見られるなど、下値では買い意欲。

 ポンドはEU離脱(ブレグジット交渉)の進展が買いを誘った。一時交渉が手詰まり状態となっていた交渉であるが、最大の焦点となっていた離脱を巡る清算金について、英国がEUの要求にかなり沿う形で譲歩することで合意と報じられ、ポンド買いを誘った。交渉中ということで当局は正式には認めていないが、EU高官なども認めており、今月の首脳会合までには完全に合意する見込みとなっている。同じく障害となっていた在英EU市民の権利については欧州裁判所の関与を一部認める形で調整が進んでいると報じられ、また、もう一つの焦点、アイルランドとの国境問題(用語説明1)に関しても、数週間以内には合意へとの報道が見られるなど、一気に状況が進展している。こうした状況を受けてポンドは対ドル、対円で買いが入る展開に。ポンドドルはドルがほぼ全面高となる中でも上昇を続け、28日の1.32台前半から約300ポイント高い1.35台前半まで。円安の影響もあってポンド円はより激しく147円ちょうど近辺から5円以上高い152円台前半まで上値を伸ばしている。

今週の見通し

 ドル高の流れが継続すると期待される。

 直近最大の焦点となっている米税制改革に関しては、上院、下院ともに独自案が可決したことで、今後両院の差異を調整する作業に。かなりの乖離があるため、調整は難航する見込みで、調整した結果次第ではトランプ大統領が拒否権(用語説明2)を発動する可能性もあるため、先行きは依然不透明も、期待感が広がっている。

 実際に税制改革が進むと、米景気にとってはかなりの追い風が期待される。株高なども誘い、ドルにとっては中長期的にかなりの買い材料に。

 懸念されているロシアゲートに関して、フリン前大統領補佐官の有罪証言にかなり驚かされたものの、当初報じられた選挙期間中にロシア側と接触したというニュースは誤報と伝わり、政権移行中の話と報じられている。今後の進展次第であるが、当初の報道に比べるとインパクトは小さくなっており、影響は限定的となりそう。

 ブレグジット交渉が進展しており、今月の首脳会談への期待感が広がっていることも、ポンド円の買いを誘い、ドル円にも買い材料に。ブレグジット自体がポンドにとって本来買い材料であるのかなどの疑問はあるものの、先行き不透明な状態が市場で嫌われることに加え、交渉決裂でのハードブレグジットを避けられそうという見通しが強まっていることで、今回の交渉進展はポンド買いとしてとらえられている。ポンド円は155円を目指す期待も。

 先週のOPEC総会での協調減産の延長については、事前の見込み通りで、決定時点でのインパクトは小さかったが、原油先物にとっては中長期的な買い材料であり、カナダドルや豪ドルといった資源国通貨をサポートする材料となりそう。クロス円での買いがドル円を支えるとの期待もある。

 ドル円はこうした状況を受けて115円を意識する展開も期待される。

用語の解説

アイルランドとの国境問題 ブレグジット交渉で懸念されている問題の一つが、英国領北アイルランドとアイルランドとの陸路での国境問題。英国がEUから離脱することで、現状では通行などが自由となっている英国領北アイルランドとアイルランドとの国境に何らかのボーダーが生じる可能性が高い。アイルランド側はハードボーダーを望んでおらず、自由な通行を認める区域を設けるなどの施策が検討されている。アイルランドは英国側からの国境問題に対する保証が得られない限り、通商問題での協議を拒否する姿勢を示している。もっとも、アイルランド副首相によるスキャンダル騒動で、アイルランドが政権崩壊の危機に陥ったこともあり、先月末まで両国間の協議が停滞気味となっていた。副首相が28日に辞任したことで事態が収束し、同問題についても進展が期待されている。
拒否権 米国の予算は、年度ごとに議会が歳出法を可決する形で決定を行う。米国の大統領は立法権がないため、予算編成を行うことはできず、予算教書などで自身の方針を示すことが出来るだけとなっている。上下両院を通過した予算は、大統領の下に送られ、大統領の署名を経て初めて成立する。大統領は他の法律と同様に議会を通過した予算に対して拒否権を発動することが出来、この場合予算案は議会に差し戻されることになる。拒否権が発動されても、上下両院でともに三分の二の賛成で再可決できると、拒否権が無効となるが、現状共和党と民主党の上院での議席数が僅差となっていることから、三分の二の賛成を得ることは非現実的。

今週の注目指標

豪中銀政策金利発表
12月05日 12:30
☆☆
 豪中銀の金融政策発表が5日に予定されている。政策金利は現行の1.50%で据え置きの見込み。豪中銀は当面の据え置き予想を示しており、波乱要素は少ない。注目は声明の内容。このところ豪中銀は家計の消費動向への懸念を声明で示している。また、議事録では賃金の伸び悩みが指摘されていた。こうした状況に対する中銀の警戒感が後退してくると、来年後半以降と見込まれている利上げへの期待感につながり、豪ドル買いが強まる可能性も。豪ドル円は目先のターゲットとして86円台半ばが意識される。
米雇用統計
12月08日 22:30
☆☆☆
 米雇用統計(11月分)の発表が8日に予定されている。今回の雇用統計がどうあれ、来週12日、13日のFOMCでの利上げはほぼ確定的となっているが、来年以降の追加利上げ期待に雇用状況が大きく影響するだけに注目度が高い。
 前回の雇用統計は非農業部門雇用者が予想の前月比+31.3万人を大きく下回る+26.1万人にとどまったものの、前々回分が大きく上方修正されており、相場への影響は限定的であった。今回は+19.9万人が予想されており、水準的には前回からかなり鈍化も、前回分がハリケーンからの復興という特殊要因があったことを考えると影響は小さい。20万人が一つの節目と考えられているだけに、予想を少しでも上回り20万人の大台を超えてくるとドル買いが入りそう。来年以降の追加利上げ期待を考えると、非農業部門雇用者数以上に影響が大きくなりそうな平均時給は、前月比+0.3%(前回+0.0%)、前年比+2.7%(前回+2.4%)とかなり強気な予想となっており、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくるとドル買いに。非農業部門雇用者数、平均時給がともに強めになると、115円トライの可能性が十分に出てくる。
米暫定予算失効
12月08日
☆☆☆
 米国の会計年度は10月から翌年9月までとなっており、2018年会計年度は2017年10月から始まっている。9月までに2018年度予算を決定できなかったため、9月8日に一時的に連邦政府の暫定予算や政府債務の上限引き上げを認める法案が成立。その期限が12月8日となっており、期限の延長が必要となっている。暫定予算の先送りに関しては、通常の予算案と違い上院での議事妨害が可能なため、複数の民主党上院議員の賛成が必要となる。ただ、今回の暫定予算はハリケーン復興予算が含まれているため、民主党としても反対しにくく、すんなりと決まる可能性がある。延長が決まると、税制改革法案へ注力できることもあり、ドル買い材料。ドル円は114円台に向けた動きも期待される。

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