2018年01月29日号

(2018年01月22日~2018年01月26日)

先週の為替相場

ドル安加速へ

 22日からのドル円相場は、ドル安の流れが加速する展開を見せた。

 米国の通商代表部(USTR・用語説明1)のライトハイザー代表は22日、家庭用大型洗濯機、太陽電池及び太陽電池モジュールに対して、米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード・用語説明2)の下で、輸入を制限するために関税を課すことを表明。翌23日、トランプ大統領が大統領令に署名して、約16年ぶりにセーフガードが発動した。

 米政府の保護主義的な動きに対する批判が強まる中、23日から世界各国の要人が集まり始まった世界経済フォーラム(ダボス会議)。その中でロス商務長官が「更なる関税措置が講じられるだろう」と、セーフガードについて、より活用していく姿勢を示した。さらにムニューシン財務長官が「ドル安は貿易にとって良いこと」とこれまでの強いドル政策とは異なる姿勢を示したことで一気にドル売りが強まった。

 ドル円は108円台へ下落、ユーロドルは1.25台を付けるなど、ドルは全面安の動きに。

 急速なドル安に対する警戒もあり、トランプ大統領が「ムニューシン財務長官の発言は文脈の問題で、最終的には強いドルが望ましい」と発言し、火消しを図る展開に。この発言にドル安進行は収まり、ドルの買い戻しが入ったものの、その後、注目されていた金曜日のトランプ大統領のダボス会議での講演を前に、再びドル売りが優勢となるなど、ドル安基調は継続した。

 注目されたトランプ大統領の講演では、「経済はドルをより強く、より強くする(stronger and stronger)」など、強いドル税策の維持を強調する内容となり、ドル安が一服。

 しかし、ダボス会議に出ていた黒田日銀総裁が、「日本は緩やかな景気拡大を続ける可能性が高い。日本は2%のインフレ目標にようやく近い状況にある」などと発言。市場の日本の出口戦略へ向けた動きへの期待が強まる展開に、今度は円高主導でドル円が売られる展開となり、ドル円は108円台前半へ。

 日銀側から「黒田総裁はインフレ見通しを修正していない」と公式に声明が出されたことで、少し火消しになったが、頭の重い展開が続いた。

今週の見通し

 通商問題への警戒感も、イベント目白押し

 米国の保護主義的な動きへの警戒がドル安を誘っており、ドル売り基調が継続している。もっとも、ドル全面安の流れから、金曜日海外市場でドル円が下げたのは円高の動き。黒田総裁の発言に市場が反応したもの。日銀がインフレ見通しを修正していないと声明を出したように、黒田総裁が緩和的な姿勢を変化させたわけではない。今年の大きなテーマである日銀の出口戦略に向けた期待を強める市場が、少し過剰反応した形。

 こうした動きでの円高は続きにくいだけに、下方向への動きには少し警戒感も。

 もっとも、黒田総裁の発言で一気に値を落としたように、地合いは下方向。否定しても否定しても出口戦略期待が出てくる状況だけに、戻りの鈍さが確認されると、再び下を試す流れも。

 108円割れを意識する展開となりそう。

 今週はイベントが目白押しの週でもあり、状況が大きく変わる可能性も。

 特に大きなものとしては、米FOMCと雇用統計。FOMCは前回利上げを行ったところだけに波乱要素は少ないが、声明などには要注意。慎重姿勢が強調しすぎると、ドル売りが広がる可能性も。

 米雇用統計は平均時給の伸びが期待されるところ。ただ、前回の雇用統計で雇用を減らした小売部門の雇用が回復しているようだと要注意。小売部門は平均時給が低めの傾向があり、予想以上に同部門の雇用が増えると、全体の時給の伸びが鈍化する場合も。この場合いったんドル売りが強まる可能性がある。108円を割り込む大きな材料となりそう。

用語の解説

米通商代表部 Office of the United States Trade Representative, USTR。米大統領府内にある通商交渉などを担当する機関。WTOなど世界的な通商の多国間交渉の場で米国の代表となる。トップである米通商代表(現在はライトハイザー代表)は、閣僚級ポストで、外交交渉権限を有する。
セーフガード 輸入が急増することによって、国内産業が悪影響を受けることを防ぐために行う緊急輸入制限措置のこと。世界貿易機関(WTO)協定に基づき、GATT(関税及び貿易の一般協定)の特例を認めるかたちで1995年に定められた措置を言うことが多いが、米国の場合は1974年に通商法201条で同措置を規定しており、今回のセーフガードはこちらの規定に基づいたもの。

今週の注目指標

米一般教書演説
1月31日 11:00
☆☆☆
 米トランプ大統領は30日(日本時間31日)に一般教書演説を行う。これは年頭にあたり大統領が議会に対して、国の状況と政府の方針を説明し、必要な法整備を要請する施政方針演説。米大統領は議会に参加できず、立法権もないため、一般教書のような形で議会への勧告を行う。今回の演説ではこれまでの実績を強調し、インフラや移民問題での法案通過に向けたアピールを行うと見られる。注目は通商問題で、TPPの再加盟やNAFTA離脱についての言及がどこまであるのかなどが注目される。保護主義的な姿勢が強いようだと、ドル売りが入る可能性があり、ドル円は108円割れを試す場合も。
米FOMC
2月1日 04:00 
☆☆☆
 2月3日で任期を迎えるイエレンFRB議長にとって最後となる連邦公開市場委員会(FOMC)が1月30日、31日に開催される。12月のFOMCで利上げが実施されており、今回は現状維持が見込まれており、波乱要素は少ない。年8回のFOMCのうち半分の4会合で実施される委員会後の議長会見が開かれる回でもなく、静かなFOMCとなりそう。なお、2018年になったことで、今回から投票権を持つ地区連銀総裁のメンバーが変わる。2017年に投票権を有していたハト派の代表格エバンス総裁やカシュカリ総裁が外れ、タカ派の代表格メスター総裁が加わった。さすがに今回は全会一致での据え置きが見込まれているが、利上げ主張が一名でも出てくるようだと、サプライズでドル買いも。ドル円は109円台回復のきっかけとなりそう。
米雇用統計
2月2日 22:30
☆☆☆
 前回は非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回ったものの、物価への影響が大きいといわれる平均時給の伸びが堅調で、ドル買いを誘った米雇用統計。今回はNFPの伸びが+18.0万人と前回の+14.8万人からかなり伸びると見られる上に、平均時給は前月比+0.3%と前回並みを維持する見込みで、予想通りの数字が出てくると、かなり強めの数字という印象。イエレン議長の示す完全雇用に近い現状の労働市場への安心感が強まり、ドル買いを誘いそう。ドル円は109円台半ばから110円を意識する展開も。

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