2018年02月05日号
先週の為替相場
週末にかけドルの買い戻し
29日からのドル円相場は、週の前半はそれまでのドル安円高の流れが継続し、頭の重い展開となった。だが、週の後半にかけてドル高円安傾向が強まる展開となり、金曜日には110円台半ば近くまで上値を伸ばす場面が見られた。
26日のダボス会議で黒田日銀総裁が行った「日本は緩やかな景気拡大を続ける可能性が高い。日本は2%のインフレ目標にようやく近い状況にある」との発言が、海外勢を中心に日銀の出口戦略への期待感を誘い、円高が優勢となる流れに。
25日に1.2530近くまで上昇したユーロドルに調整のユーロ売りドル買いが入り、ドル全面安の流れは後退していたものの、円買い主導でドル円の戻りが抑えられる展開に。
30日(日本時間31日午前)に行われたトランプ大統領による一般教書演説(用語説明1)は、冒頭で「Make America Great Again」の自身のキャッチフレーズを使い、ダウ平均株価などが史上最高値を更新したこれまでの実績と、今後の経済成長への自信を見せるものとなった。今後のインフラ投資への期待感が広がったことで、米株高の動きとなり、ドル円にも買い材料に。もっとも演説を受けて109円台を回復も、すぐに108円台に戻すなど、この時点では頭の重さが目立った。
30日、31日の連邦公開市場委員会(FOMC)は、事前見通し通り現状維持を決定。声明では物価について「前年比ベースでのインフレ率は今年上昇し、中期的には委員会の目標である2%程度で安定すると見込まれる」と、これまでよりも強気で、2%目標実現へ自信を示すものとなり、ドル高が進行。
さらに2日午前に日銀が7ヶ月ぶりの指値オペ(用語説明2)を実施、通常のオペも増額したことで、市場でくすぶっていた出口戦略への期待が後退する形で円売りに。
さらに、同日の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を上回り、平均時給も前月・前年比ともに予想を上回るという好結果を示したことで、ドル高が急進行し、ドル円は一時110円台半ば近くまで上値を伸ばした。
もっとも、米金利の上昇が米株式市場の調整を誘い、ダウ平均が大幅安となったことで、ドル円は上値から少し売りが入って週の取引を終えている。
今週の見通し
一時のドル安円高基調は一服も、上値トライには慎重な姿勢も。
黒田日銀総裁のダボス会議での発言などを受けて強まった日銀の出口戦略への期待は、2日の指値オペ実施で大きく後退。米債利回りの上昇がドルを支えていることもあり、一時のドル安円高基調は一服を見せている。
次回3月のFOMCでの利上げ期待も、先週初め時点と比べてかなり上昇してきており、ドル買いが入りやすい地合いに。
110円の大台超えも一旦こなしたことで、今後の上値トライに期待感が広がるものの、米株式市場の大幅な調整などもあり、リスク警戒の動きもくすぶっている。
110円を中心としたレンジ取引の中で、上値トライのタイミングを図る展開か。
一般教書演説、FOMC、米雇用統計と、米国絡みのビッグイベントが一巡したこともあり、勢い良く買い上げる材料に欠ける面も。
株式、債券などの市場動向をにらみながら、次の流れを待つ展開に。
ユーロは基本的にしっかり。週末にかけてのドル高基調でも1.24台を維持するなど、ユーロドルの下値がしっかりしており、再びの1.25超えを期待する流れに。
ユーロは対円、対ポンドなどでもしっかりとなっており、上値期待が強い。独国債利回りの上昇、ユーロ圏指標の力強さなどから、ECBの年内利上げ期待が広がってきており、ユーロを支える展開に。
ブレグジット絡みで英国が厳しい状況にあることも、ユーロポンドでのユーロ買いポンド売りを誘っており、ユーロドル、ユーロ円にとっても買い材料に。
用語の解説
一般教書演説 | 米国の大統領が年頭に議会に向けて行う所信表明演説。大統領の初年度を除き慣例として1月の最終火曜日行われることが多い(大統領の就任が1月で、初年度は時間がないため、初年度のみ後日行われる)。米国では三権分立が強く意識されており、大統領は通常議会に出席することはなく、予算を含め法案制定の権利もないため、こうした教書演説(一般教書以外に、予算教書と経済教書(大統領経済報告)が三大教書と呼ばれる)の場で議会に対して自身の政策の方向性や予算配分への希望などをアピールする。 |
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指値オペ | 日本銀行が、予め指定した利回りで金額に制限をかけずに国債を買い入れるオペレーションのこと。2016年9月に導入した「長短金利操作付量的・質的金融緩和」により採用された新しいオペレーションの手段。2016年11月にはじめて実施され、2017年の2月と7月にも実施。先週2月2日の実施は約7ヶ月ぶりとなった。今回の対象年限は残存期間5年超10年以下で、昨年の2回と同じ新発10年債利回りで0.110%と設定された。 |
今週の注目指標
豪中銀政策金利 2月6日 12:30 ☆☆☆ | 現在豪州にとっては史上最低水準となる1.50%まで政策金利が低下している。現在の米国の政策金利が1.25%~1.50%。3月の米FOMCでの利上げがほぼ確実視されており、金利差が逆転することから、豪中銀の今後の対応が注目されるところとなっている。長期債利回りも米国との金利差があまりなくなってきており、今後の中銀動向次第では逆転も十分に有り得るところ。豪中銀は当面の金利据え置きを示しているが、対中輸出などが好調で豪経済自体は比較的しっかりしているだけに、どこまで現状の緩和姿勢を維持してくるのかが注目されている。もっとも、先月31日に示された第4四半期の消費者物価指数が予想を下回る伸びとなったこともあり、年内の利上げは難しいとの見方が広がっている。豪中銀もそうした見方に合わせて、慎重な姿勢を強調して来ると、豪ドル売りの動きも。豪ドル円は85円を試す可能性も。 |
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NZ中銀政策金利 2月8日 05:00 ☆☆☆ | 11月の理事会で、スペンサー中銀総裁代行はNZドル安がインフレを加速させる可能性があるとして、利上げ実施の予想時期を2019年第3四半期から第2四半期に前倒しした。NZの商品輸出の四分の一以上を占める主要産業である乳製品価格に大きな影響を与える牛乳価格の低迷が懸念材料となっていたが、今年に入って価格がはっきりと持ち直してきている。そうした点からもNZドルの早期利上げ期待が支えられていた。しかし、先月25日に発表された第4四半期の消費者物価指数は予想及び第3四半期の水準を大きく下回る前期比+0.1%と衝撃的な弱さに。これを受けて市場の利上げ時期のさらなる前倒し期待が後退。逆に利上げ時期の先送りもあるのではと見られており、もし実施された場合は大きなNZドル売りに繋がり、NZドル円は79円割れを試す可能性も。 |
英中銀政策金利 2月8日 21:00 ☆☆☆ | 今回の英中銀金融政策決定会合は、四半期インフレ報告が同時に発表され、カーニー総裁による記者会見が行われる、いわゆるスーパーサーズデーにあたっている。前回11月のスーパーサーズデーでは、英国は約10年ぶりとなる利上げを実施。政策金利を0.50%に引き上げた。もっとも英国の政策金利はリーマン・ショックによりそれまでの5.00%から0.50%まで約半年で急激に引き下げ、その後長く同水準を維持した。2016年8月にブレグジット決定の混乱から0.25%に引き下げられた。ブレグジット後の特殊事情で引き下げた分を戻しただけに、ここからの利上げには慎重になると見込まれている。もっとも、ここに来て英国の物価動向は相当に高まっている。インフレターゲットである消費者物価指数の前年比は昨年2月分以降ターゲットである2.0%を上回っており、昨年11月分は許容上限である3.0%を超える3.1%を記録。最新の12月分でも3.0%と上限ギリギリという状況。今回の四半期インフレ報告で物価見通しが引き上げられると、市場の利上げ期待が一気に強まる可能性があるだけに要注意。この場合ポンド円は158円をターゲットに上昇を見せる可能性も。 |
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