2018年02月19日号

(2018年02月12日~2018年02月16日)

先週の為替相場

ドル安円高止まらず

 12日からのドル円相場は、ドル安の流れが止まらず、16日金曜日に一時105円台半ば手前までと、約1年3ヶ月ぶりのドル安円高水準を付ける展開が見られた。

 5日、8日と2度もダウ平均が1000ドルを超える下げを記録した米株式市場動向がドル安のきっかけとなった。だが、12日からの週は米株安の動きが落ち着き、買い戻しが優勢となる中でのドル安進行となった。

 米債利回りも上昇傾向が見られ、株高、利回り上昇の状況でのドル安進行という珍しい流れになった。

 決定的な材料はなかったが、米予算教書でのインフラ投資拡大主張などを受けての財政赤字の拡大懸念や、議会と政府との対立が激化する見込みによる米経済成長の鈍化懸念などがドル売りを誘った面も。

 ユーロドルが1.25台半ばを超えて、約4年2ヶ月ぶりのユーロ高ドル安を記録するなど、ドルはほぼ全面安。

 クロス円は、不安定な株式市場動向などへの警戒が残る形で円買いが優勢となり、頭の重い展開に。

 ドル安円高の進行に、市場では日本の通貨当局の動きを警戒する姿勢も見られたが、麻生財務相が15日の衆院予算委員会で「特別に介入しなければならないほど急激な円高ではない」と発言。円高容認ではないかとの思惑から円買いが進む場面が見られた。

 注目されていた次期日銀総裁人事については、政府は16日の衆参両院議員運営委員会理事会において、黒田総裁の再任する人事案を提示。副総裁2名については、雨宮日銀理事(用語説明1)、若田部早稲田大学教授をあてる案を同じく提示した。

 現状の緩和姿勢が強化されるとの思惑から、この人事指名については円安材料となったが、ドル安円高の勢いが強く、影響は短時間に留まった。

今週の見通し

 不安定な展開が続く。

 大きな不安材料となっていた米株式市場動向については、買い戻しの流れが強まっており、警戒感が後退。一時急騰した米株恐怖指数(VIX指数・用語説明2)も、20を割り込むところまで落ち着きを取り戻した。

 しかし、今月に入っての二度の暴落などに、市場では警戒感が残っており、頭を押さえる材料に。

 3月末の日本の会計年度末を前にした本邦実需筋のドル円の売り遅れも懸念されており、戻りではドル売り円高の動きが強まると見られる。

 ユーロドルがいったん1.25台にしっかりと乗せて、節目の水準をクリアしてから、ポジション調整が強まっており、一時のドル全面安基調は落ち着いてきた。しかし、米株高などでもドル買いが進まない状況に、本格的な反転は難しいと見られ、ドル安トレンドに復する可能性は十分にある。

 今週はそれほど目立った材料がないだけに、ドル安の加速、ドルの買い戻し、両サイドともきっかけをつかみにくい展開。だが、ドル安圏でのもみ合いが続くと、売り遅れ気味の本邦輸入企業のドル売りなどをきっかけに、再びの下値トライも。

 105円をしっかり割り込むと、次のターゲットはかなり遠く、100円手前までの調整が入る可能性も。

 ドル主導での展開が続き、クロス円はドル円ほどきれいには下げにくい展開。ただ、市場ではリスク警戒の動きがくすぶっており、頭の重い展開に。ユーロ円などは戻りで売りが出る流れが続きそう。

  

 

用語の解説

雨宮日銀理事 雨宮正佳日銀理事。東京大学を卒業後、昭和54年に日銀に入行したプロパー。企画畑でのキャリアが長く、理事になる前に企画局長を務めていた。現在の黒田総裁による量的緩和政策の原案をまとめたと言われており、現状の長短金利操作付量的・質的緩和の継続に前向きと捉えられている。
VIX指数 CBOE(シカゴオプション取引所)が、米国の代表的な株価指数の一つS&P500指数を対象としたオプション取引のボラティリティをもとに算出する指数。S&P500指数を対象としたオプションを満期まで保有した場合の平均ボラティリティの期待値という位置づけ。市場環境次第だが、一般的に20を超えると、ボラティリティが高く、市場が不安定な展開を予想しているとみなされる。

今週の注目指標

米FOMC議事録
2月22日 04:00
☆☆
 前回、1月30日、31日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が公表される。12月のFOMCで利上げに踏み切ったこともあり、事前見通しの通り金利の据え置きを決めた1月のFOMC。昨年同様に今年も複数回の利上げが見込まれる中、市場では次回3月のFOMCでの利上げをほぼ織り込む動きを見せており、その直前のFOMCとして、どのような姿勢が見られたのかなどが注目される。
 2月14日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)はかなり強めの結果となったが、前回のFOMC時点ではまだそのデータは手元になかった為、物価動向に対してどのような評価をしているのかなどが注目されるところ。
 利上げへの姿勢が強調されるとドル買い。ドル円の107円台回復、ユーロドルの1.23割れへの動きなどに繋がる可能性も。
クォールズFRB副議長講演
2月22日 14:15
 今週は、複数の米FRB関係者による講演などが予定されている。中でも注目は22日のクォールズFRB副議長、ダドリーNY連銀総裁(FOMC副議長)、ボスティック・アトランタ連銀総裁、23日のウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁といった、今年のFOMCでの投票権を有しているメンバーの発言。
 ダドリー総裁、ウィリアムズ総裁は従来ハト派(利上げに慎重派)と言われていたが、昨年以降利上げに前向きな姿勢が目立っており、今年も利上げに前向きな姿勢を示してくるとみられる。
 クォールズFRB副議長は昨年10月に就任。担当が銀行監督ということもあり、金融政策への言及はほとんど無い。ただ、今回はグローバル・エコノミーが主要テーマだけに、質疑応答含め金融政策への言及が期待されている。なお、講演は国際通貨研究所の招きで東京で行われる。
 ボスティック・アトランタ連銀総裁は中立派と称される総裁だけに、同総裁が積極的な利上げに前向きな姿勢を見せるようだと、今年の利上げ回数見通しが3回から4回以上に強まるきっかけとなる可能性も。
 これらの要人発言で、利上げへの力強い姿勢が示されるとドル高が進行。ドル円が108円台を回復するきっかけとなる可能性も。
日本消費者物価指数(1月)
2月23日 08:30
 黒田日銀総裁は、出口戦略について議論自体が時期尚早と、現状の緩和姿勢を維持する姿勢を強く示しているが、市場での出口戦略期待は根強い状況。現状の長短金利操作付量的・質的緩和が変更される鍵となる日本の消費者物価指数動向にも注目が集まる。今のところの予想は、総合の前年比が+1.3%と前回から加速も、より注目度の高い生鮮食料品除くコアに勘しては同+0.8%と、12月分から悪化見込み。予想通りもしくはそれ以下で、緩和維持姿勢への見通しが強まり円安も。ドル円は107円台回復のきっかけも。

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