2018年02月26日号

(2018年02月19日~2018年02月23日)

先週の為替相場

ドル安一服も戻りはやや鈍い

 19日からのドル円相場は、その前の週までのドル安の流れが一服し、一時108円手前まで値を戻すなどの動きが見られた。15日に約1年3か月ぶりの安値を付けたことで、下値一服感が出て、安値からから2円半弱の戻しとなった。

 1.2550超えまで上昇したユーロドルに対して、利益確定のユーロ売りドル買いが広がり、ポンドドルなども同調して、それまでの欧州通貨主導でのドル全面安基調が一服。

 5日と8日の米株式市場の暴落に代表される米株式市場や債券市場でのかなり不安定な値動きが、先々週ぐらいから落ち着きを見せていたことで、ドル円・クロス円での円高圧力が後退した面も。

 それほど目立った材料が無い中で、注目された21日の米連邦公開市場委員会(FOMC・1月30日、31日開催分)の議事要旨において、「成長加速で追加利上げの可能性高まると過半数が判断」、「多くの委員が昨年12月に示した景気見通しを引き上げた」などの記載があり、ドル買いを誘った面も。なお、議事要旨内では「一部の参加者がインフレ目標の到達が遅れる可能性に関するリスクを示したとの指摘もあり、公表直後はドル売りもすぐに反転してドル買いが優勢となった。

 ユーロドルは16日のユーロ売りドル買いの流れを引き継いで、一週間を通じて頭の重い展開に。1.2550超えで上値攻めに一服感が広がっており、短期筋からのユーロ売りが広がった。

 20日にはブレグジット問題でEU各国にある程度の単一市場での特権を認める柔軟姿勢を盛り込む文書を策定していると一部で報じられたことが対ポンドでのユーロ売りポンド買いを誘い、ユーロ全般の重石となった面も。

 22日のECB理事会議事要旨(1月24日、25日開催分)は、一部メンバーがこれまでのインフレ調整に関する自信の深まりを市場に示すために、緩和バイアスを声明から削除することを望んだとの表現があり、一時ユーロ買いが強まる場面が見られたが、動きは続かず。フォワードガイダンスの文言調整は時期尚早との見解で全会一致との記載があるなど、議事要旨全体のトーンが緩和継続で変わらず、ユーロ売りの動きに。

今週の見通し

 パウエル議長の議会証言などをにらむ展開に。

 2月5日に就任したパウエルFRB議長は、就任初日にダウ平均株価が史上最大幅で下落するなど、市場からの強烈な洗礼を浴びる形となった。もっとも、同日の株安を新議長の責任にするのは無理筋で、市場は最初の試金石として、2月27日、3月1日に米議会で行われる初の議会証言(用語説明1)に注目している。

 基本的にはイエレン前議長の路線を継承し、緩やかな利上げ路線が続くことを示すと見られる。だが、先週発表された前回FOMCの議事要旨において、「多くの委員が昨年12月に示した景気見通しを引き上げた」との記載が、12月時点で見込まれていた年3回の利上げではなく、年4回以上の利上げの可能性を示唆するものではとの見方が市場で生じている。sの場合、市場が当初見込んでいたよりも前向きな姿勢が示される可能性がある。

 また、議会側からの質疑も厳しいものになると予想されている。今年は中間選挙の年であり、議員側としても選挙に向けて非常に大きなアピールポイントという意識も。共和党側は、現行の低金利政策への忌避感などが一部でみられるだけに、より積極的な利上げを狙って新議長を追求する可能性も。

 もっとも、これまで理事としてイエレン前議長を支えたパウエル新議長の基本姿勢はイエレン路線の継承。慎重な姿勢に終始する可能性も十分ある。

 ドルは結果次第で上下ともに大きく動く可能性があるだけに、注意が必要か。

 前向き姿勢強調で、年内4回の利上げ見通しが強まるようだと、ドル円は108円超えの可能性も。逆に消極姿勢が目立ち、慎重路線継続で105円を意識か。

 なお、26日から28日にかけて三中全会(用語説明2)が開催される。通常秋に開催されることの多い同会であるが、二中全会から約一月、来月の全国人民代表大会を前に異例の開催となった。

 政府人事に大きな変化があるのではとの憶測が流れており、中国政府の状況が大きく変化してくるようだと、リスク警戒感を誘い円買いが強まる可能性も。106円割れを警戒。

 また、対中国への輸出が経済に大きな位置を占める豪ドルやNZドルの売りを誘う可能性も。豪ドル円、NZドル円の下げに要注意。

  

 

用語の解説

米議会証言 FRBが、旧ハンフリーホーキンス法(完全雇用均衡成長法)に基づいて、半期に一度議会にあてた報告書の提出と、議長による議会証言を行うもの。FRBの2大責務である雇用の最大化と物価の目標水準での安定に向けての取り組みを議会に対して説明する。根拠法であるハンフリーホーキンス法自体は2000年に失効しているが、その後も慣例として実施されており、通常2月と7月の任意の日に実施される。2月は上旬での実施が多いが、今年に関してはパウエル新議長が就任したのが2月5日のため、少し遅めとなった。下院と上院のどちらから先に証言を行うかは決まっておらず、2月が下院からならば7月は上院からなどといった具合に調整されることが多い。なお、証言の元となるテキストは同じものが利用される。
三中全会 中国共産中央委員会第三回全体会議のこと。今回は第19期にあたるため第19期三中全会とも表記される。中国共産党のトップにあたる約200名の中央委員と、その下に控える約170名の中央委員候補で開かれる中国共産党によって重要な会議。中国の最高意思決定機関である全国人民代表会議(全人代)で決定される政府人事案などについての話し合いが行われると見られる。三中全会は一般的には秋に開催されることが多く、全人代での政府人事などは二中全会で決定されることが多い。しかし、今回、二中全会が約一月早く開催されており、憲法改正について専門的に協議を行い、政府人事についての課題が持ち越されたため、異例となる半年の前倒しでの開催となった。

今週の注目指標

中国三中全会
2月26日~28日 
☆☆☆
 政府の重要人事、引退見込みとなっている中国人民銀行の周総裁の後任人事などが全人代を前に話し合われると見られる。昨秋党職を退いた王岐山・前政治局常務委員が国家副主席としてNo.2の座に着くとの見方が広がっている。また、一部で国家主席の任期を撤廃するとの見通しが出ている。この場合、習体制の長期化が見込まれ、人事の膠着に対して市場で警戒感が出る可能性も。豪ドル円は82円台を意識。
パウエルFRB議長議会証言
2月28日 00:00
☆☆☆
 パウエルFRB議長は現地時間27日に下院金融サービス委員会で、議長就任後初となる議会証言を実施する。1日には上院の銀行委員会で議会証言を行う。好調な米経済動向をうけて、市場では来月の追加利上げがほぼ確定的と見込んでいる。また、年内少なくとも計3回の利上げを見込む動きが広がっている。金利先物市場での織り込み度合いでは、年4回の利上げを見込む動きが3割以上に高まっており、一部では5回との見方も出てきている状況で、そうした状況を受けてのパウエルFRB議長による証言内容に注目が集まっている。また、質疑応答の場で、値動きに直接つながるような失言が出てくる可能性もあるのではとの期待感も。前向き姿勢が強まるとドルは短期的だけでなく、中長期的に上昇基調に乗る可能性も。来月に向けて110円を意識する動きが広がる可能性がある。
米PCEデフレータ
3月1日 22:30
☆☆☆
 1月の米国の個人消費支出デフレータが1日に発表される。米国のインフレターゲットの対象である同指標。米国の労働市場がほぼ完全雇用に近い状況にあるだけに、利上げの鍵は物価動向が握っていると見られている。動きが近く発表の早い米消費者物価指数(CPI)が注目される傾向がある。だが、米国の金融政策判断の元となる対象指標はあくまでPCEデフレータだけに注意が必要。予想は前年比+1.7%、食品やエネルギーを除いたコア指数の前年比が+1.5%と、ともに12月分と同水準見込み。2月14日に発表されたCPIは前年比+2.1%、コア前年比+1.8%と、ともに予想を上回ったものの、水準的には12月と同水準。PCEもCPI同様に前回と同じ水準を維持すると、3月の利上げ見通しがさらに強まり、今後の緩やかな利上げ路線も継続ととらえられドル買いを支えそう。予想を上回ると、ドル買いが加速する可能性があり、この場合は108円台を意識。

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