2018年03月05日号

(2018年02月26日~2018年03月02日)

先週の為替相場

米保護主義への警戒などでドル安加速

 26日からのドル円相場は、週初いったんドル安が優勢も、その後は週の半ばに向けて買い戻しが強まり、いったんは107円台半ば超えまで上昇。その後一転して、週末にかけてドル安円高の動きが強まり、直近の安値を割り込み2016年11月以来のドル安円高を付ける動きとなった。

 週初はいったんドル売り。米債利回りの低下がドル安を誘い、直近の下値を支えていた106円台半ばを割り込む動きに。もっともすぐに値を戻すと、その後はドルの買い戻しが優勢に。27日のパウエルFRB議長の議会証言を前に、ポジション調整の動きがみられた。

 パウエル議長にとって就任後初となる半期議会証言は27日に下院金融サービス委員会で行われ、「経済見通しは強まっている」などの発言に、今後の利上げ期待が強まる形でドル買いが優勢となった。市場の期待以上にタカ派的との印象が強く、証言を受けて年内4回の利上げ見通しが25%前後から35%前後まで上昇する中で、ドル買いが広がった。

 ドル円は107円台半ば超えを付けた後、いったん調整の動き。本邦実需筋の3月会計年度を前にした売りなどが重石に。

 1日にはトランプ大統領が鉄鋼とアルミへの関税の賦課を正式に発表。保護主義(用語説明1)の高まりへの警戒感が強まりドル売り円買いに。翌日には貿易戦争を歓迎するようなツイートを行い、保護主義への警戒感がさらに強まった。

 また、2日には黒田日銀総裁の再任のための衆議院議院運営委員会での所信聴取(用語説明2)が行われ、その中で「19年度頃にはインフレが2%に達成する可能性が高いと確信しており、当然のことながら出口をそのころに検討し、議論しているということは間違いない」との発言があり、円高に。これまで検討すら時期尚早としていた出口戦略について、先の話とはいえ検討は間違いないと発言したことで、一気に円買いを誘った形に。

 ドル円はこれらの材料を受けてドル安円高の動きが強まり、2016年11月以来の安値圏に。保護主義への警戒からのドル売りはユーロドルなどでも強まり、ユーロドルは1日の1.2150台から1.2360台まで200ポイント以上のユーロ高ドル安に。

 クロス円は当初リスク警戒継続で、頭の重い展開。その後はドルの動きに左右されて振幅も、リスク警戒の円買いが継続して見られたこともあり、頭の重い展開が続いている。

 

今週の見通し

 保護主義の高まりを強く警戒する展開に。

 ここにきてトランプ大統領が保護主義的な姿勢を強めてきている。トランプ大統領が1日に発表した鉄鋼とアルミへの関税付与について、与党共和党内でも一部で反対意見が出るなど、かなりインパクトのある内容となった。欧州勢が反発して対抗策をとった場合、欧州車への関税も検討と、週末のツイートで表明しており、かなり警戒感が強い展開。米国の保護主義の高まりは、基本的にドル売り材料となる。

 一気の円高進行だけに、本邦実需筋の売り遅れなども警戒され、戻りは相当重い展開となりそう。下値リスクが意識される展開に。

 105円ちょうど近辺にはオプション取引に絡んだ買い注文が残っていると見られ、短期的にサポート水準となっているが、ドル全面安の流れの中で、戻りが鈍くドル売り円買いが続くと、下抜けの可能性が強まる。

 105円をしっかり割り込むと、104円台前半ぐらいまで下げが加速する可能性がありそう。

 日本の出口戦略への警戒感も強く、2日の衆議院に続き、6日午後1時から行われる参議院議員運営委員会での所信聴取にも注目。出口戦略関連の質問は当然出てくるとみられ、前回円高を誘った将来的な検討についての表現をどのように調整してくるのかが注目されるところに。

 19年度中の物価目標達成目途を変更していないだけに、19年度の出口戦略検討の姿勢を崩すことは難しく、今回も認めてくる可能性。本来は想定通りのスケジュールであるが、市場は出口戦略検討に対して神経質な見方をしているだけに、円買いが広がる可能性も。105円を割り込むきっかけとなるか。

 その他通貨でもドル安円高の流れ。ユーロドルやポンドドルなどは上値トライ(欧州通貨高ドル安)を意識、ユーロ円やポンド円はリスク警戒の円高が優勢に。

 9日の米雇用統計(2月)は堅調地合いが期待される。完全雇用に近いと見られる米労働市場の堅調さが示される可能性が高そう。もっとも、市場はすでに強めの雇用統計に慣れており、雇用者数などの相場への影響は限定的か。今後の利上げペースのカギを握るのは雇用者数ではなくインフレ動向と見られており、雇用統計でもインフレ動向への影響が大きい平均時給が注目されている。

 平均時給は前月比、前年比ともに前回(1月)並みの伸びが見込まれている。前回の前年比+2.9%はかなり強めの数字だっただけに予想程度でもドルを支える可能性。雇用統計までにドル安が一服していれば、ドルの買い戻しの強いきっかけに。ドル円は106円台回復から107円に向けた動きに。

  

 

用語の解説

保護主義 自国の産業保護などのために、他国との貿易に際して関税などの障壁を設け、制限を行うべきという考え方。大恐慌後のブロック経済化と関税の引き上げ合戦による保護主義の高まりが、世界貿易の縮小を呼んだ。このことから、戦後、関税および貿易に関する一般協定(GATT)などを通じて、自由貿易主義の拡大が図られ、さらにGATTを発展する形で世界貿易機関(WTO)が発足した。もっともWTOルールの下でも、ダンピングなどに対応する形での関税の引き上げなどによる貿易制限は認められている。
所信聴取 日銀総裁・副総裁は、内閣に任命権があるが、あらかじめ衆参両院で同意を得なければ人事の発令ができない規定となっている。こうした人事を国会同意人事という。同人事については、予算や法案のように衆議院の優先権がなく、衆議院、参議院でともに同意を得る必要がある。動意のための議決に先立ち、両院は総裁や副総裁の候補者に対して所信聴取を行い、採決の参考とする。

今週の注目指標

ECB政策金利
3月8日 21:45 
☆☆☆
 ECB理事会の結果が8日に発表される。ECBは少なくとも9月まで現行の量的緩和を継続すると発表しており、政策金利の変更があるとしても、そのあとになるため、当面は現状維持が続く。もっとも欧州経済が比較的堅調に推移していることもあり、市場はECBの出口戦略への動きを期待する動きが強まっている。声明や、22時半からのドラギ総裁による会見などで前向き姿勢が目立つようだと、ユーロ買いの動きも。ユーロドルは1.24台回復が見えてくる。
日銀金融政策決定会合
3月8日・9日 発表時刻未定
☆☆☆
 日銀金融政策決定会合が8日、9日に開催され、会合終了後、9日のお昼前後に結果が発表される。現行の長短金利操作付量的・質的緩和の継続が確実視されている。先週衆議院議員運営委員会で行われた黒田総裁の再任に向けた所信聴取で、19年度の出口戦略検討に言及があった後を受けての会合だけに、声明や、9日午後3時半予定の総裁会見での、出口戦略がらみの発言に注目が集まる。市場は出口戦略関連にやや神経質な反応を見せているだけに、先週の発言を踏襲する発言でも、円高圧力となる可能性。ドル円は105円割れを意識。
米雇用統計(2月)
3月9日 22:30
☆☆☆
 市場での注目度が高い米雇用統計が9日に発表される。前回は雇用者数の伸びが予想を上回り20万人の大台に乗せる好結果。平均時給も前月比、前年比ともに事前予想を上回る好結果となり、堅調な米労働市場の状況を印象付けた。
 今回は雇用者数が前回から若干伸びが強まる20.5万人増、平均時給が前回から若干鈍化する前月比+0.2%、前年日+2.8%が見込まれている。前回の前年比は2009年6月以来というかなり強めの数字だっただけに、若干反動も、依然強めの水準という印象。雇用者数も節目の20万人を超える予想になっており、予想通りの数字が出てくると、米経済の好調さが印象付けられてドルの買い材料に。ドル円の107円に向けた反転のきっかけとなる可能性も。

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