2018年03月19日号

(2018年03月12日~2018年03月16日)

先週の為替相場

通商問題への懸念継続し、円高進行

 12日からのドル円相場は、米国の保護主義的な動きへの懸念が継続。世界貿易への影響が警戒される中で、リスク回避の円買いが優勢となった。

 週の前半は世界的な株の買い戻し基調もあって、ドル買い円売りの動きが優勢に。13日には、5日の雇用統計の好結果後につけた107円05銭近辺を超えて、107円20銭台まで上値を伸ばす場面も見られた。

 もっとも、107円台では本邦実需筋などからも売りが出る展開で、大台を維持しきれず、106円台へ戻される流れ。

 14日にはトランプ大統領がティラーソン国務長官を突如解任すると発表し、市場のリスク警戒感を誘いドル売り円買いにつながった。

 ティラーソン国務長官の後任にはポンペオCIA長官(用語説明1)を指名。先日辞任したコーン米国家経済会議(NEC)議長の後任には保守派の著名経済評論家であるクドロー氏が指名された。ともに対中強硬派としても知られており、鉄鋼・アルミニウムへの関税賦課決定で強まった米中の対立が強まるとの思惑から、ドル売り円買いに。

 その後少し値を戻す場面も見られたが、金曜日には米紙ワシントンポストがマクマスター米大統領補佐官(国家安全保障担当)の解任方針を報道。当局は否定したものの、警戒感もあって、105円60銭台と、先週の安値を付けるなど、ドル安円高の動きが広がった。

 その他通貨で目立ったのは豪ドル。米国による鉄鋼・アルミニウムへの関税賦課方針に関して、豪州はそれらの原料である鉄鉱石・ボーキサイト(用語説明2)の世界生産シェアトップであり、悪影響は避けられないとの思惑が豪ドル売りを誘った。週の半ばに84円台半ばを付けていた豪ドル円は、週末81円台まで値を落とす展開に。

今週の見通し

 イベントをにらむ展開に。

 19日・20日のG20(20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議)、20日、21日の米FOMC(連邦公開市場委員会)など、重要なイベントが複数予定されている。

 市場は米国の保護主義的な動きに神経質になっている。G20の場で、今回の鉄鋼・アルミニウムへの関税賦課方針をはじめとする動きにどこまで批判が出てくるのかなどが注目されるところ。米国と中国がG20の場で対立姿勢を強める可能性などもあり、世界中が注目するイベントとなっている。

 また、先週のティラーソン国務長官の更迭、当局が否定したとはいえマクマスター補佐官の解任報道など、米国の人事面での動きなども注目材料。国務長官とNEC議長の後任に関しては、議会での合意を得られるかどうかにも注目が集まるところで、当面、トランプ政権の人事面での動きが慌しくなる状況。こうした状況は市場のドル買いを躊躇させる要因となるだけに、ドル円の重石となる可能性も。

 FOMCに関しては、参加メンバーによる金利見通しをドットで示したドットプロットの状況が最大の注目ポイントで、12月時点よりも積極的な利上げ姿勢が示されるようだとドル買いも。従来ハト派であったイエレン前議長がいなくなっている分、利上げ方向にやや振れているような印象を与えるものとなる可能性も。

 FOMCでのもう一つの注目は、就任後初となるパウエル議長のFOMC後の定例会見。イエレン前議長は、2014年3月に行われた前議長にとって就任後最初のFOMC会見で、利上げ時期を示すという失言があった。前例を受けて、パウエル議長は相当慎重に答弁を行うと見られるが、不慣れな分、何か面白い発言がある可能性も。

 その他、ブレグジットがらみの英国とEU側との会合や、英露の対立の行方など、欧州関連でも材料が出そうな状況。

 経済状況だけを見ると、ドル円はそろそろ反転の期待が強い展開だが、あくまで上記のイベント状況次第という面があり、その結果次第では下値を支える105円00円から50銭にかけての強いサポート水準を下抜ける可能性も。この場合、103円台への下落も十分に視野に入る。

 

用語の解説

マイク・ポンペオ マイク・ポンペオ(Michael Richard”Mike”Pompeo)カンザス州選出の政治家。陸軍士官学校を卒業後、陸軍での勤務を経て、ハーバード大学で法務博士の資格を取り、法律家として勤務。2011年から4期にわたって連邦下院議員を務めた。下院議員在職中の2016年11月に、大統領選で勝利したトランプ氏からCIA長官の指名を受けて、2017年1月に就任。2018年3月にティラーソン国務長官が解任されたことを受けて、国務長官の後任として指名され、現在上院による承認待ち。もっとも、共和党のポール上院議員がポンペオ氏の就任に反対しており、民主党側からの賛成票が必要な状況。現在の上院は共和党51対民主党及び諸派49で、ポール氏の反対があっても承認に本来問題は無い(50対50で同数の場合、副大統領であるペンス氏が決定権を持つ)。しかし、マケイン議員が脳腫瘍での病気療養中で、議会の出席が難しいため、実質的に共和党50対民主党及び諸派49となっており、1名の反対で半数割れとなる。
ボーキサイト アルミニウムの原料となる水酸化アルミニウム鉱物が集合した赤褐色の鉱石。主成分はギブス石やベーム石など。2015年時点で豪州が世界の生産シェアでトップに立っている。かつては世界の4割近くを豪州が生産していたが、中国をはじめとするアジアでの生産拡大により、一時はマレーシアなどが世界生産シェアでトップに立つなど、豪州の生産が世界全体に占めるシェアは減少している。ボーキサイトを苛性ソーダなどで溶解し、アルミニウムの直接の原料であるアルミナを取り出す。アルミナを電気分解することでアルミニウムとなる。

今週の注目指標

G20
3月19日・20日 
☆☆☆
 20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)が、19日、20日とアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催される。仮想通貨の国際規制や電子商取引の課税ルールなどが主要テーマとして事前に公表されていた。市場の注目は通商問題。米国が決定した鉄鋼・アルミニウムの関税賦課を巡り、世界的な保護主義の動きが懸念されており、貿易戦争回避に向けたG20の姿勢が注目されるところ。同問題で対立を強める米中がともに参加するG20の場で、対立姿勢が強調されるようだと、ドル売り円買いの動きも。105円割れのきっかけとなる可能性も。
米FOMC
3月22日 03:00
☆☆☆
 20日・21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。0.25%の利上げが確実視されており、金利市場の織り込みはほぼ100%。市場の注目は利上げそのものではなく、FOMCメンバーによる経済・物価などの見通し(プロジェクション)や、声明、就任後初となるパウエル議長のFOMC会見などに集まっている。
前回12月のプロジェクションで示された2018年末時点での金利見通し(ドットプロット)では、年内3回の利上げが大勢となった。今回も同様の状況が予想されているが、その前後、年2回以下の利上げや年4回以上の利上げを見込む参加者の数がどのように変化しているのかなどが注目に。年4回の利上げ見通しが強まっているようだと、ドル買いが優勢に。107円台へ乗せる動きになると、ドル安円高基調が一服へ。
英中銀金融政策会合
3月22日 21:00
☆☆☆
 今週は米国以外でも、英、NZ、ブラジルなどの金融政策発表が控えている。英、NZは据え置き、ブラジルは利下げの見込み。英国とNZは波乱要素も少ないと見られる。英国は20日に消費者物価指数、21日に雇用統計と、重要指標が相次いでおり、それらと合わせて反応を見ていきたい。元スパイの暗殺未遂をめぐって対立が深まる英露関係への警戒感もあり、全般に頭の重い展開に。ポンド円は145円のサポートを試す展開も。

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