2018年04月09日号

(2018年04月02日~2018年04月06日)

先週の為替相場

通商問題などで神経質な展開に

 2日からのドル円相場は、不安定な振幅を交えつつ、ややドル買い円売りが優勢な展開となった。

 週明け7日、イースターマンデーで欧州などが休場となった後のNY市場で、米株の大幅安からリスク警戒のドル安円高が進み、ドル円は105円65銭近辺と、先週の安値を付ける動きに。

 トランプ大統領がツイッターなどで批判を続けるアマゾンをはじめ、FANG株(用語説明1)への売りが優勢となり、さらには米株全体の売りを誘う形で、ダウ平均株価は一時700ドル超の下げを記録した。もっとも翌3日には世界的に株安の動きが落ち着き、ドル円やクロス円も値を戻す動きに。

 3日には豪中銀金融政策発表もあったが、事前の見通しどおりの金利据え置き、声明も前回までの文言を踏襲と、サプライズがなく、影響は限定的に。

 いったん落ち着いた為替市場であるが、4日に入って中国が米国による約1,300品目500億ドル規模の追加関税方針に対抗する形で、106品目、金額的には同額となる500億ドル相当の追加関税賦課方針を発表。これにより、再びリスク警戒感が強まる展開に。

 中国が対抗関税方針を示すこと自体はある程度想定されていたが、焦点と見られた大豆(用語説明2)をはじめとした農産物、航空機、自動車など、米国にとってかなり重要な品目が関税の対象となっていたことにより、米中貿易戦争激化への警戒感が広がった。これによりドル円は106円を瞬間割りこむところまで売り込まれる展開に。

 もっとも、市場ではこれらの関税賦課が実施されることはなく、交渉によって和解に向かうとの楽観論が根強く、リスク警戒の動きは限定的に。ドル円も下げが一服すると同日中に反転を見せ、翌5日には107円台を付けるなど、ドル買い円売りの動きが広がった。

 その後107円台半ば近くまで上値を伸ばす展開が見られたが、6日にトランプ大統領が中国に対する更なる1000億ドルの追加関税の賦課を検討するようUSTRに指示したとの報道があり、ドル売りが入る展開に。

 同日の米雇用統計発表で、非農業部門雇用者数の伸びが予想を大きく下回る鈍いものとなったこともドル売りを誘い、ドル円は106円台後半に値を落として週の取引を終えている。

今週の見通し

 警戒感は継続も、しっかりの展開に。

 米中の貿易戦争への警戒感が継続しており、上値追いに慎重な動きとなっている。

 もっとも、基本的には楽観論が根強い。貿易戦争が激化した場合、米中ともに経済的なダメージがかなり大きなものとなる。建前では強硬論を示しても、水面下では解決に向けて動いているとの見方が強い。

 金曜日のトランプ大統領による1000億ドルの追加関税の賦課検討についても、クドローNEC議長がすぐに火消しに回るなど、対立の激化を抑えようとする動きも見られ、今後はある程度落ち着いていくと期待される。

 同問題と、ハイテク関連株を中心とした米株の不安定な動きが収まると、米景気自体は比較的堅調で、ドルの買い戻しが期待される状況。

 6日の米雇用統計自体は少し弱めも、月ごとのブレがそれなりにある指標だけに、単月の数字だけで一気に悲観論が広がることも考えにくい。

 米中貿易戦争、米ハイテク株の動向ともに警戒感が根強いだけに、一気に上値を試す動きにはなりにくいが、振幅を交えながら上を意識する展開か。

 107円台半ばから108円にかけてのレンジが重要な上値抵抗水準と見られており、108円台にしっかり乗せるようだと、流れが大きく変わる可能性も。

 

用語の解説

FANG株 SNS大手フェイスブック(Facebook)、ネット通販大手アマゾン(amazon.com)、動画配信大手ネットフリックス(Netflix)、検索大手グーグル(Google、現アルファベット傘下)の頭文字を合わせた造語。IT大手アップル(Apple)を加えたFAANGとする場合も。2015年に米国の著名株式評論家クレイマー氏が提唱し、一般的に利用されるようになった。米国のネット企業を代表する企業群として捉えられている。
中国の大豆 経済成長による食肉需要の急拡大もあり、中国は世界最大の大豆消費国となっている。生産量自体も世界では上位に入るが、消費にまるで追いついておらず、約9割を輸入に頼る状況。世界の大豆貿易の約6割が中国向けといわれている。世界最大の生産国は米国で、輸出量としても、ブラジルに次いで2位。米国内の主な生産地は、アイオワ州、ミシガン州など、共和党と民主党の勢力が拮抗して、中間選挙での激戦区となることが見込まれている州であり、トランプ政権にとって急所となると指摘されている。もっとも、中国としても米国に代わる供給元を確保することは量的な意味で現実味がなく、関税によるコスト増が中国の食肉などの生産に大きなダメージを与えると見込まれている。

今週の注目指標

米消費者物価指数(3月)
4月11日21:30 
☆☆☆
 先週の雇用統計がやや弱めになったとはいえ、利上げのハードルは十分にクリアしていると見られており、米国の今後の利上げペースのカギを握っているのは物価動向という見通しに変化はない。米国の政策対象となる物価指標はPCEデフレータであり、消費者物価指数(CPI)ではないが、水準こそ違え、トレンドはほぼ一致することから、市場では発表の早いCPIを重要視する傾向がある。予想は前年比+2.4%、食品・エネルギーを除いたコア指数の前年比+2.1%と、ともに前回から上昇が見込まれている。コア部分で2%を超える予想の通りもしくはそれ以上の結果が出てくると、米国の利上げ期待が強まり、ドル買いが入る可能性も。ドル円が108円を超えるきっかけとなる可能性も。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(3月開催分)
4月12日 03:00
☆☆
 0.25%の追加利上げを決めた前回FOMCの議事録が発表される。この時示されたメンバーによる経済・物価・金利見通しでは、景気見通しが引き上げられたものの、今年の物価見通しが据え置かれ、利上げ見通しは前回と変わらずとなった。こうした判断に至った議論がどのように行われたのかに注目が集まるところ。また、米中の貿易戦争激化懸念が広がる中、通商問題の不透明感をどのように評価しているのかなども注目される。今後の利上げ期待が強まるような内容が見られるとドル買いに。ドル円は108円がターゲット。
中国貿易収支(3月)
4月13日時刻未定
☆☆
 米中の貿易戦争懸念が広がる中、3月の中国貿易収支が13日に発表される。時刻は決まっていないが、日本時間のお昼前後となることが多い。前回2月の貿易収支は、輸出の拡大が目立ち、予想を超える黒字幅となった。特に対米輸出が前年同月比46.1%増と大きく伸びており、米中貿易戦争懸念が強まる中で、警戒感を誘う材料となった。相場に直接与える影響は限定的なものにとどまるケースが多いが、このところの通商問題への注目度の高さから、大きな動きにつながる可能性も。今回は輸出の伸びが落ち着き、黒字額も前回から減少すると見られているが、予想を超える黒字が示されると、警戒感からのドル売りを誘う可能性も。106円トライの動きに注意したい。

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