2018年04月16日号

(2018年04月09日~2018年04月13日)

先週の為替相場

通商問題などで神経質な展開に

 7日からのドル円相場は、米中、米露、シリア情勢などの政治動向を意識した展開が続いた。

 米中の貿易戦争懸念に関しては、10日に習近平国家主席がボアオ・アジアフォーラム(用語説明1)で対話路線を強調したことなどをきっかけに懸念が一服。週の後半はシリア情勢や、同問題も踏まえた米露の対立などへの注目が強まり、新規材料の出ない米中問題への注目度がやや後退する格好となった。同問題はこれまで大きなドル安円高材料となっていただけに、反動でのドル買い円売りがやや優勢となった。

 一方、警戒感が強まったのが米露関係。シリアやウクライナへの内政干渉や、2016年大統領選挙でのサイバー攻撃などを理由に、米国が6日に発表した追加制裁を受けて、9日の市場でロシアルーブル安、ロシア株安、ロシア債券安のトリプル安が進行。ドルルーブルはここ1年3か月ほどのレンジを、9日の一日で一気に超え、ルーブル安が大きく進むなど大荒れの展開となった。

 さらに、この動きが新興資源国全体の売りにつながり、リスク警戒でドル円なども頭が抑えられる展開に。

 11日にムニューシン米財務長官がロシア債を制裁対象から外すという従来からの方針について再度言明したことで、ロシア市場の混乱は落ち着いたものの、今度はシリア問題でのロシアと米国の対立が強まった。

 親シリアのロシアは、米国などがミサイル攻撃を行った場合、すべて撃ち落とすと以前に宣言していたが、それに対してトランプ大統領が「ロシアへ、シリアへのミサイル攻撃に備えろ」などとツイッターで挑発したことで、警戒感が強まった。

 その後、トランプ大統領がシリア攻撃はすぐに行うか、すぐではないかはわからない、時期は言わないと、早期攻撃を実施しない可能性を示したことで、リスク警戒の動きが後退も、実際に週末に攻撃が行われたように、リスクが残っていたこともあり、週末を前に金曜日のNY市場で調整が強まるなどの動きが見られた。

 その他通貨で動きが目立ったのがポンド。

 タカ派で知られるマカファティ英中銀金融政策委員(用語説明2)が追加利上げを遅らせるべきではないと発言し、利上げ期待が拡大。

 今月5日・6日には1.40割れまで値を落としていたポンドドルは、1.43手前まで上昇するなど、ポンド買いが顕著となった。

今週の見通し

 米露・米中などの関係が焦点に、日米関係も注目材料。

 トランプ政権の動向が相場を動かす材料となっている。

 シリアへの警戒は一服も、ロシアの親シリア姿勢継続を受けて、米国が追加制裁を検討しており、先週前半のような市場の混乱が見られるようだと、リスク警戒の動きが強まる可能性も。

 米経済自体は堅調で、ドル高基調へ回帰する期待も強いが、ドル円に関してはポイントとされる108円手前の売りが依然として残っているとみられ、頭を抑える展開に。

 シリア情勢が落ち着いたことで、米中の貿易戦争への注目が再び強まる可能性も。現状で新規材料は見られず、大きな動きとはなっていないが、両国の要人発言などには警戒したいところ。

 今週は日米首脳会談が控えており、こちらも警戒感を誘っている。

 13日に発表された米財務省半期為替報告では、日本を引き続き監視対象として指定、これまで実質ベースでの円安を指摘していた。さらに今回は実質に続き名目ベースでの円安も指摘しており、日本への不満を見せている。

 もっとも、TPPを推進する日本側としては、二国間FTAなどを飲むことはできず、日米関係の悪化が見られる可能性も。

 市場での警戒感が強まるようだと、ドル円は105円台をうかがう大きな円高が進む可能性も。

 

用語の解説

ボアオ・アジアフォーラム 中国政府の支援を受けて、アジア太平洋各国が参加する国際NGOの組織名及び同組織が主催する国際会議のこと。スイスのダボス会議(主催・世界経済フォーラム)のアジア版。中国海南省にある世界的リゾート・ボアオで国際会議が行われている。今年の4月まで8年間福田元首相が理事長を務めていた。新任の理事長には潘元国連事務総長が就任している。
マカファティ英中銀金融政策会合委員 イアン・マカファティ(Ian McCafferty)、英国のエコノミスト。英国の金融政策を決定する金融政策会合(MPC)の外部委員。MPCは総裁などを含めた5名の内部委員と4名の外部委員から構成されており、同氏は2012年から外部委員を務めている。委員になる前は英産業連盟(CBI)の主席経済アドバイザー。利上げに積極的なタカ派として知られており、前回3月22日のMPCでは、サンダース委員とともに0.25%の利上げを主張して、現状維持の決定に反対票を投じた。

今週の注目指標

米小売売上高(3月)
4月16日21:30 
☆☆☆
 3月の利上げ後も、今年複数回の利上げが期待されている米国。現状の大勢の見方は6月に追加利上げを行い、9月もしくは12月にさらに追加利上げを行うというもの。この見通しが強まるかが焦点に。カギを握ると見られる物価動向については、先週の消費者物価指数の強さもあって、期待感が広がっている。物価が上昇する中で、米経済を支える個人消費に陰りが出るかどうかが注目されるところ。予想は前月比+0.4%と前回のマイナス圏からの回復が期待されている。予想前後の数字が出てくると、ドル買いに安心感。ドル円が108円を試すきっかけとなりそう。
中国GDP(第1四半期)
4月17日11:00
☆☆
 米中の貿易戦争への懸念が根強い中、17日午前11時に中国の第1四半期GDP速報値が発表される。前年比+6.8%と前期と同水準が見込まれている。先週易中国人民銀行総裁は第1四半期の中国経済は予想より良好の推移と発言しており、好結果が期待されるところ。習近平国家主席が市場の更なる開放を宣言したところに、GDPの好結果が示されるとドル安人民元高を誘う可能性も。その流れはドル円などでも円高圧力となる。ドル円が106円台へ値を落とす材料となる可能性。
日米首脳会談
4月17日・18日
☆☆☆
 安倍首相が訪米し、17日、18日にトランプ大統領と日米首脳会談を行う。ホワイトハウスから北朝鮮問題と通商問題が二大テーマとして示されている。市場の注目は通商問題の動向。米国は先月実施した鉄鋼・アルミニウムへの関税賦課に関して、カナダ、メキシコ、EU、豪州、韓国、ブラジル、アルゼンチンなどを適用除外とする一方、日本は中国などと同様に適用対象とされた。適用除外国は、二国間FTAの交渉中か、そもそも対米貿易赤字国であり、日本が適用された背景には米国からの通商問題での圧力が感じられる。とはいえ、TPPを推進している立場上、米国との二国間FTAに応じることは難しく、厳しい交渉となりそう。もっとも、想定範囲内に収まり、日米の親密さがアピールされるようだと、警戒感の反動でドル高円安が進むと期待される。この場合、108円の上値抵抗水準を超えて109円を試す可能性も。

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