2018年05月01日号

(2018年04月23日~2018年04月27日)

先週の為替相場

米長期債利回り上昇がドル高誘う

 23日からのドル円相場は、米長期金利の上昇などを材料にドル高の動きが強まり、ドル円は109円台半ばを一時つける展開となった。

 米10年債利回りは一時節目といわれる3.0%を超える展開に。長らく続いていたフラットニング(用語説明1)の調整や、米国の大幅減税をうけた財政赤字懸念(国債の増発懸念)などが、米長期国債の売りを誘った。

 ドル円は節目といわれた108円を週明け23日の海外市場であっさりと上回ると、ドル高円安の勢いが加速。109円台まで乗せた後、米株の大幅安に108円台半ばまで値を落とすなど、調整が入る場面も見られたが、すぐに回復して、週の後半に109円台半ば超えを付けるなど、ドル高基調が継続した。

 ユーロドルやポンドドルなどでもドル高が進行、ドルは全面高に。

 ユーロドルは先々週の上値トライでの1.24台の重さを嫌気。ポジション調整の動きが広がった。

 注目されたECB理事会は、事前見通し通り金融政策の現状維持を決定。その後のドラギ総裁会見では慎重姿勢が継続したものの、一部で今後の景気回復への自信がみられるなど、前向きな部分もあったことで、ユーロの買い戻しを誘ったが、大きな流れは変わらず。

 ポンドは、利上げ期待がもう一段の後退を見せた。18日の英消費者物価指数の弱さを受けて、それまでほぼ織り込む勢いだった5月の利上げに対する慎重な見方が浮上。その後のカーニー英中銀総裁による慎重な発言などが、利上げ期待後退を加速させていた状況で、27日の英第1四半期GDP速報値が予想をはっきりと下回る弱めの数字となり、さらに利上げ期待が後退。ポンドは対ドルで値を落とす展開に。

今週の見通し

 ドル高継続へ。

 米長期債利回りの上昇傾向が継続する限り、ドル高基調は続く可能性が高い。

 シリア・北朝鮮などの有事リスクが後退し、投資資金の安全志向からリスク志向へのシフトが続く中で、安全資産の代表格である米国債を売る動きが続いている。原油高などが米国のインフレ期待(用語説明2)を押し上げており、直近の米物価統計も強めに出る中で、長期債利回りは相当上がりやすい状況に。

 為替市場は一般的に株式市場などよりも金利市場との相関性が高い。また、これまで高金利通貨とされてきた豪ドルの金利を米ドルが上回り、NZドルも長期金利では米ドルの方が高いという状況だけに、金利を意識した取引が米ドルに集まりやすい。こうした状況がドル全面高を誘っている。

 大きな節目とみられるドル円の110円やユーロドルの1.20が目前に迫っており、いったん利益確定の動きが入りやすい水準であるが、ドル高の勢いが継続する中で、ポイントを抜けてくる可能性は十分にある。

 こうしたポイントを抜けるとドル買いの動きが加速する可能性があり、ドルはもう一段の高値を期待する展開に。

 110円をしっかり抜けた場合、ドル円のポイントは111円台半ば。ここをさらに超えると115円という非常に大きな節目が見えてくるだけに、今週ここからのドル買いの流れに要注目。

 

用語の解説

フラットニング 利回り曲線(イールドカーブ)が平坦になる(フラット化する)こと。一般的に長期になるほど高くなる金利市場において、短期金利と長期金利の利回りの差が縮まっている状況。期間が長くなるほど、将来の不確実性が増すため、その分のプレミアムが乗って金利が高くなる(その他の仮説もある)。しかし、景気後退期などに将来の利下げ期待が強まった場合や、景気拡大期に目先の利上げ期待から短期金利の上昇が激しくなった場合などに、フラットニングや、さらに短期の金利が長期の金利を上回る逆イールドとなる場合がある。
インフレ期待 インフレが継続することなどにより、将来も物価上昇が続くと予想すること。予想されている物価水準を期待インフレ率(予想インフレ率とも)という。普通利付国債と物価連動国債の利回りの差から求めたブレーク・イーブン・インフレ率や、過去のインフレ率の実績から計算する方法によって、期待インフレ率の水準が推定されている。一般的に長期金利は期待実質経済成長率+期待インフレ率+リスクプレミアムによって決まるといわれており、インフレ期待の状況が長期金利の水準に大きな影響を与える。

今週の注目指標

豪中銀政策金利発表
5月1日13:30 
☆☆☆
 豪中銀の政策金利が1日に発表される。市場は少なくとも今年いっぱいは現状の政策金利水準が維持されると見ており、1年9カ月連続となる金利据え置き見通しが広がっている。不安定な個人消費動向などが据え置き見通しを支えているほか、最大の輸出先である中国が米国との通商問題を抱える中で、先行きの不透明感が指摘されるところ。豪ドル安に対する評価などがポイント。緩和姿勢を強調し、豪ドル安を肯定すると、対米ドルを中心に豪ドル売りに。豪ドルは対米ドルで0.74を意識へ。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
5月3日03:00
☆☆☆
 5月1日、2日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。3月のFOMCで利上げを実施したところであることや、議長会見・参加メンバーによる見通し発表などが予定されていない回であり、今回は現状維持が見込まれている。6月のFOMCでの利上げが期待されていることもあり、注目は声明の内容。利上げにつながる前向きな姿勢が示されることが期待される。前回のFOMCでの声明は、1月2月の小売売上高の弱さもあって、家計消費の鈍化などを警戒した少し慎重なものとなった。もっとも、その後に発表された議事要旨を見ると、多くのメンバーは楽観的な見方を変えていない。最新3月の小売売上高では、数字が改善されており、警戒感が後退しているようだと、前向きな印象を与える声明となり、ドル買いが強まる可能性も。ターゲットは111円。
米雇用統計・非農業部門雇用者数(4月)など
5月4日21:30
☆☆☆
 前回の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく下回る10.3万人増にとどまった。失業率は4.0%に低下見込みが、6カ月連続での横ばいとなる4.1%にとどまっている。労働参加率の低下なども合わせ、総じて弱めの数字という印象に。もっともNFPに関しては、好天候などに支えらえて32.6万人増とかなり強めに出た2月分の反動という面が大きい。1-3月の平均でみると、節目の20万人増を超えるペースとなっており、堅調な雇用市場という市場の認識を変えるには至らなかった。今回は19.0万人増と前回と比べて伸びが強まると期待されている。2-4月の平均でみて20万人を超えるまずまずの水準であり、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドル買い基調を支えると見られる。ドル円のターゲットは111円。

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