2018年05月07日号

(2018年04月30日~2018年05月04日)

先週の為替相場

一時110円台を示現、その後は調整も流れは継続

 30日からのドル円相場は、週の半ばに110円台を付ける場面が見られるなど、ドル高の流れが継続した。ユーロドルが1.20の大台を割り込むなど、米長期金利の上昇などをきっかけとしたドル全面高基調が継続する格好に。

 もっとも、ドル円に関しては110円の大台を維持できず、すぐに値を戻すと、週の後半にかけては調整が目立つ展開に。

 注目されたFOMCは、事前見通しのとおり政策金利の現状維持を決定。次回6月での利上げが確実視される中、声明の中でこれまで見られた「インフレの動向を注意深く監視」という表現が外されるなど、追加利上げに向けて前向きな姿勢が垣間見えるものとなった。しかし、市場の想定を外れるものではなく、イベント後は調整の動きが強まる格好に。

 もう一つの注目材料、米雇用統計は失業率が予想を超えて低下し、ITバブル(用語説明1)真っただ中の2000年12月につけて以来となる4%割れを示現。もっとも、より注目度の高い非農業部門雇用者数(NFP)は予想を下回る数字となり、発表直後はドル売りが強まる展開に。2日に110円を付けて以来、調整ムードが広がっていたこと、平均時給の数字が予想を下回ったことなども、ドル売りが入りやすい要因となった。

 もっとも、すぐに109円台を回復するなど、下値ではドル買いの意欲が見られる展開に。ユーロドルが1.20を割り込んだ水準で推移するなど、ドル全面高の流れは変わっておらず、調整の動きが限定的に。

 3月末からのドル高円安進行の勢いが強く、若干買い遅れがみられることなども、下がったところでのドル買いにつながっている。

 ユーロドルは1.20近辺が重くなっており、頭の重い(ユーロ安ドル高)流れが継続。今年の最高値を更新したドルインデックスも高値圏でのもみ合いが続くなど、ドル全面高基調が続いている。

今週の見通し

 熱狂は落ち着いたものの、ドル高基調は継続する見込み。

 米長期債利回りの上昇傾向がひと段落しているものの、高値圏での維持が続いている。主要通貨及び本来は高金利で知られる豪ドルやNZドルなどとの長期金利の金利差拡大傾向の継続が見込まれており、ドルは基本的にしっかりの展開。

 米雇用統計は決して強い数字ではなかったが、下値トライが限定的なものにとどまるなど、下値でのドル買い意欲が継続。

 今週は注目度の高い米物価統計、特に消費者物価指数の発表を控えており、週前半は積極的な上値トライに慎重な姿勢も見込まれるが、下値しっかり感が続く場合、109円台を中心にしたもみ合いから、上値トライを試す流れに。

 ユーロやポンドなどは対ドルでの売り意欲が継続か。ユーロは直近の指標の弱さが重石。消費者物価指数が予想以上に弱い数字となり、今年後半の出口戦略に向けた動きに対する期待が後退している。ECBは現行の量的緩和政策(債券購入プログラム・用語説明2)について、少なくとも9月まで同規模での継続を決定しており、市場はその後12月までにかけて徐々に減らして終了するテーパリングを期待している。しかし、直近の数字の弱さから、テーパリングの時期をもう少し長期化して、緩和姿勢を継続する可能性が意識されており、ユーロ売りにつながっている。対ドルで1.20が重くなっており、1.19割れをトライも。

 ポンドは10日のスーパーサーズデー(四半期インフレ報告が同時に発表される金融政策会合の結果発表日)を控えて頭の重い展開に。もともとは今回の会合での利上げが織り込まれる勢いを見せていたが、先月発表された重要指標が軒並み弱く、カーニー総裁も慎重な姿勢を示したことで、利上げ期待は少数派となっている。もっともゼロにはなっておらず、据え置き決定及び四半期インフレ報告での慎重な見通しの提示でポンド売りが強まる可能性も。金利差拡大懸念が強まる対米ドルでのポンド売りが中心も、ポンド円も頭の重い展開となる可能性。ポンド安の流れが継続する限り、ドル高基調は続く可能性が高い。ポンドドルは1.35をしっかりと割り込むと、1.33近辺までの下げもありそう。

 

用語の解説

ITバブル 2000年前後にアメリカを中心に世界的に強まったIT関連企業の株価高騰や設備投資などを含めた実需投資の活発な状況と、その影響を受けた景気の拡大を指す。インターネット関連企業が中心となったことから、米国ではドットコムバブル(Dot-com bubble)と呼ばれた。期間は1999年から2000年にかけての約2年間。日本では1999年2月から2000年11月の景気拡張期を差すことが多い。
ECB債券購入プログラム ECBによる量的緩和政策。2014年9月にABS(資産担保証券)やカバードボンド(担保付銀行債)などの買い入れによる購入プログラムを開始。翌15年1月には国債・政府機関債などを軸とした公的部門買入プログラム(PSPP)を本格的にスタートした。PSPPが始まった当初、月額債券購入額は計600億ユーロとなっていたが、16年3月にいったん800億ユーロまで拡大。16年12月に600億ユーロに戻し(減額開始は17年3月から)、17年10月に現行の300億ユーロに減額して(減額開始は18年1月から)、少なくとも18年9月まで延長すると発表された。

今週の注目指標

NZ中銀政策金利発表
5月10日06:00 
☆☆☆
 NZ中銀の政策金利であるオフィシャルキャッシュレートが10日に発表される。現行の1.75%で据え置き見込み。3月26日にNZ中銀はこれまでのインフレターゲットに加え、持続可能な雇用の最大化を中銀の責務に追加し、翌27日から就任したオア新総裁のもとで、二つの責務を意識した政策運営が始まった。これにより利上げのハードルがかなり上がったとみられており、年内は金利の据え置きが見込まれている。声明などで慎重姿勢を強調してくると、来年以降の金利据え置き期待などが強まり、NZドル売りに。特に金利差の逆転・さらにその後の差の拡大が懸念される対米ドルに対する売り材料となりそう。何度か試している0.70割れをしっかりと示現し、0.6850に向けた動きも期待されるところ。
英中銀金融政策会合(MPC)
5月10日20:00
☆☆☆
 英中銀金融政策会合の結果発表・議事要旨公表が10日20時に行われる。今回は同時に四半期インフレ報告が発表される、いわゆるスーパーサーズデーの回にあたっている。そのため、元々は今回の会合で利上げを実施するとの見通しが広がっていた。金利先物市場動向から見た利上げ割合は一時90%に達し、ほぼ利上げを織り込む勢いであった。しかし、ここにきて物価の鈍化、GDPの鈍い数字など、主要指標が軒並みの停滞。カーニー英中銀総裁からの慎重な発言もあって、利上げ期待は相当後退し、ほぼ据え置きを見込む動きとなりつつある。もっとも、一部で利上げの期待が残っている分、結果次第でポンドは大きく動く可能性。また、四半期インフレ報告で前向きな物価見通しが示されるかどうかなどもポイントに。利上げ実施もしくは強気なインフレ見通しの発表でポンド買いに。ポンド円は149円から150円にかけての上値抵抗水準を試せるか。
米消費者物価指数(4月)
5月10日21:30
☆☆☆
 先週のFOMCでは、これまで声明の中でみられたインフレ警戒の文言が削除されるなど、ここにきて当局は物価上昇傾向に自信を示している。米国のインフレターゲットの対象であるPCEデフレータが目標値2.0%に到達するなど、順調に物価上昇が続く中、今週は、9日に米生産者物価指数、10日に米消費者物価指数が発表される。特に注目は消費者物価指数。PCEデフレータよりも発表が早く、傾向はほぼ似ているため、PCEデフレータの先行指標として、PCEデフレータ以上に市場の注目を集めている。今回の見通しは前年比2.5%、食品・エネルギーを除くコアが2.2%と、ともに前回よりも強い数字が見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドル買いが加速する可能性。ドル円が110円台にしっかり乗せて上を試すきっかけとなる可能性も。

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