2018年05月14日号

(2018年05月07日~2018年05月11日)

先週の為替相場

週の半ばにドル高トライも、その後は調整が優勢に

 7日からのドル円相場は、週の半ばにかけてドル高の流れが強まり、ドル円は110円台を付けるなどの動きが見られた。

 米10年債利回りが再び3%台に乗せるなど、米長期金利の上昇が目立ったことや、武田薬品やリクルートなどのM&A関連報道が好感されて、買収資金手当て期待でのドル買い円売りが入ったことなどが、ドル円を支える格好に。

 英四半期インフレ報告において、今年の経済成長見通しや今年から2020年にかけての物価見通しが引き下げられ、利上げ期待が後退したことによるポンド売りドル買いの動きなども、ドル全面高基調に寄与した。

 もっとも、週の後半にかけてはドル高の調整が優勢に。

 先週もっとも注目された材料である米消費者物価指数(4月)が予想を下回ったことで、ドルに失望売りの動きが見られた。米国の物価はインフレターゲットの対象であるPCEデフレータが目標値の2.0%に達するなど、堅調な動きを見せており、今回の消費者物価指数次第では、利上げペースが早まるとの期待が見られただけに、市場の失望感を誘った。

 ドル円が109円台前半に落とされたほか、ユーロドルが1.19台後半を付けるなど、ドル全面高基調に対する調整が目立った。週の半ばに上昇していた米長期金利が低下したことも、ドル売りに寄与した。

 その他材料では、オア総裁(用語説明1)にとって初となる中銀金融政策発表を受けてのNZドル売りが目立った。NZ中銀は10日にオフィシャルキャッシュレートを事前見通しのとおり現行の1.75%で維持すると発表。声明では、追加利下げの可能性を残したほか、今後の利上げ時期の見通しの先送りを発表して、NZドル売りが強まった。

今週の見通し

 ドル円はレンジの中で次の方向性を探る展開か。

 5月2日に続いて、10日にも110円台を示現したことで、やや一服感が出ている。大台超えからの買いに慎重な姿勢がみられることで、短期筋が買いにくい面も。

 このところのユーロ指標の弱さや、先週の英四半期インフレ報告の慎重な見通しなどで、欧州通貨売りの動きが広がっていたが、こちらも先週末にかけて一服の動きとなっており、ドル全面高の流れが落ち着いている。

 もっとも、下値は依然としてしっかり。M&Aがらみの買いの期待もあって、ドル円は堅調地合いを継続するとみられる。

 109円台前半でのもみ合いを中心にレンジ取引が続くと、タイミングを見て110円台を付けに行く可能性も。

 直近二回頭を抑えた110円超え直ぐの水準を超えて、110円台にしっかり乗せると、レンジが切り替わり、さらに上値をトライする流れも期待されるところ。

 ターゲットは110円台半ば。

 リスクは新興国通貨売りの流れ。

 話題となったアルゼンチンペソ(用語説明2)やトルコリラの下げは、当局による通貨安防衛の動きで一服するかと期待されたが、週末にかけて再び通貨安の動きが広がっており、警戒感が継続。再び通貨売りの流れが強まるようだと、世界的なリスク警戒感からの円買いが強まる可能性も。108円台半ばを付けに行くようだと要警戒。108円割れまで売りが加速する可能性も。

 

用語の解説

オア総裁 エイドリアン・オア(Adrian Orr)NZ中銀総裁。ウィーラー前総裁が2017年9月に退任した後、すぐに後任が決まらず、スペンサー副総裁が代行を務める中で、17年12月に元副総裁で老齢年金基金のトップであったオア氏が指名され、今年3月27日に就任した。昨年秋の総選挙で政権握った労働党は、中銀の責務にこれまでの物価の安定に加えて、雇用の最大化を求める姿勢を明らかにし、中銀と政府間で合意した政策目標協定(PTA)のもと、3月26日に正式に責務を追加。オア新総裁がその責務のもとで政策運営を行う中で、今回初めての金融政策発表となった。
アルゼンチンペソ アルゼンチンはこれまで複数回にわたるデフォルトを起こしており、通貨に対する信頼感が低下。直近では2014年7月に約13年半ぶりのデフォルトを記録した。その後、公定レートと民間の実勢レートの乖離が激しい情勢が続いていたが、15年11月に発足したマクリ政権のもとで公定レートが廃止され、1ドル=14ペソ前後の実勢レートに収束した後は、一旦ゆっくりとしたペソ安進行となった。もっとも、経済成長が年約3%前後なのに対して、物価上昇率が年25%前後という状況では、基本的な通貨安の流れが止まらず、昨年末の17台から今年前半に1ドル=20ペソ超えを記録。さらに4月末から一気にペソ安が進んでおり、1ドル=23ペソ超えという事態に陥っている。中央銀行はこの状況を受けて8日で3回、計12.75%という利上げを実施し、通貨防衛を狙っている。

今週の注目指標

米小売売上高(4月)
5月15日21:30 
☆☆☆
 米経済成長への信頼感は継続しているものの、今月発表された直近の雇用統計で、雇用者数の増加は2カ月続けてやや弱めのものとなった。そうした状況だけに、雇用情勢と密接に結びつく個人消費動向に注目が集まっており、その動向をまともに表す小売売上高に対する注目度も高い。12月から2月にかけて弱めに出ていた小売売上高は、前回の3月分で一気に改善。米景気への信頼感を押し上げた。今回は新車販売がやや鈍い分、総合では前回の+0.6%に届かない+0.3%の見込みとなっているが、水準的には十分に高い。また、自動車を除いたコアは前回の+0.2%から+0.5%へ延びると期待されており、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドル買いを誘いそう。ドル円が110円台に乗せるきっかけとなる可能性も。
豪雇用者数(4月)
5月17日10:30
☆☆☆
 前回3月の豪雇用者数は、予想の2.00万人増を大きく下回る0.49万人増にとどまった。内訳も、フルタイムが1.99万人減、パートタイム雇用が2.48万人増での全体のプラスと厳しい内容に。また、2月の雇用者数も、速報時点の雇用増から0.63万人減に大きく下方修正されるなど、総じて厳しい数字となった。今回はその反動もあって+2.00万人増が期待されており、期待通りの高数字が出てくると、豪ドルの支えとなりそう。現状の低金利が当面維持される見通しが強まる中で、対米ドルとの金利差拡大懸念が豪ドルの重石となっているが、雇用統計が強めに出てくると、少し調整を誘う可能性も。対米ドルで0.77を目指す可能性も。
日本消費者物価指数(4月)
5月18日08:30
 黒田日銀総裁のもとで緩和政策の長期維持が見込まれている日本。そのカギを握る消費者物価指数が18日に発表される。今回は、総合、生鮮食品除くコアともに前回3月分から鈍化が見込まれている。物価低迷の長期化に、片岡委員などからのさらなる追加緩和要請が強まるとみられ、予想通りもしくはそれよりも弱めの数字が出てくると、円売りの材料となりそう。影響は限定的とみられるが、109円台維持を支える材料となる可能性も。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。