2018年05月21日号

(2018年05月14日~2018年05月18日)

先週の為替相場

ドル全面高継続、ドル円は一時111円台

 14日からのドル円相場は、米債利回りの上昇に支えられる形で、一時111円台に乗せるなど、ドル高の動きが強まった。ドル円が111円台を付けるのは1月23日以来約4か月ぶり。

 ユーロドルが1.17台に値を落とすなど、ドルはほぼ全面高。

 このところ目立つ米長期債利回りの上昇が加速。10年債利回りが2011年7月以来となる3.12%を付ける動きを見せる中で、ドル買いの動きが広がった。

 ユーロに関してはイタリアの新政権樹立への動きも売り材料となった。

 イタリアは3月の総選挙で単独過半数を獲得する政党及び政党グループが出ず、その後の各グループ間の連立交渉が難航していた。一時は大統領管轄の暫定政権の下で早期の再選挙に向かうという見通しが広がっていたが、先週に入って「五つ星運動」と「同盟」(用語説明2)の間で連立の合意に向けた動きが急速に広がり、18日に正式に合意した。

 両党ともにポピュリズム的な姿勢が目立つ政党であること、反ユーロ色が強いこと、五つ星運動が選挙戦の中でECBに対する債務減免要求を行っていたこと(連立合意の中でいったん棚上げとなった)などから、市場では新政権への警戒感が広がっており、ユーロ売りの材料となった。

 また両党は二重通貨制度を以前から主張していることもあり、ユーロの制度的な枠組みを崩すものとしての警戒感も見られる。

 

 ポンドは、ブレグジットがらみの報道で振幅後、対ドルで売りが出た。英紙テレグラフがEU離脱後も関税同盟に留まる方針を報じたことで、いったんポンド買いの動き。しかし、英政権から報道が否定され、関税同盟からの離脱方針が改めて示されたことで、ポンド売りとなった。

 その他目立ったのは新興国通貨の売り。米長期金利の上昇が、新興国通貨との金利差縮小を招き、新興国通貨からドルへという資金の流れを誘った。中でも、トルコリラは、エルドアン大統領が低金利志向を示したことで、売りが加速する場面が見られた。

 

今週の見通し

 ドル高基調は継続へ。

 111円台を付けてきたドル円。水準的には警戒感も出ているが、ドル高の背景となっている米長期金利の上昇傾向が続いており、下値しっかり感が強い。

 週末を前にした、金曜日NY市場でのドル高の調整も、値幅はかなり抑えられており、下値しっかり感を印象付ける展開に。

 イタリアの政局がらみで対ユーロでドル買いが強まっていることも、ドル全面高を誘っており、ドル円の水準感だけでは流れを止めることは難しい。

 111円台からは本邦輸出勢などの実需がらみの売りが本格化する可能性があり、一気の上昇は難しいが、振幅を交えながら、流れはまだ上方向。

 15日に110円をしっかり超えてからの110円、17日に110円台半ばをしっかり超えてからの110円台半ばと、上昇局面での上値抵抗水準が、それぞれ下値サポートとして作用する、かなり力強い流れとなっており、上昇の勢いを感じさせる展開に。

 長期的に115円を視野に入れた動きとなっており、当面はドルのしっかり感が続くか。

 ユーロはイタリアの政局がらみで不安定な動きに。

 新政権を担う五つ星・同盟の動きが不透明で、リスク回避のユーロ売りが出やすい。EUの財政規律見直し要求、ロシア制裁解除、年金改革撤廃などの方針が示されているが、実現が困難なもの(専門家試算で16兆円超の費用が必要)なだけに、今後現実的にどうすり合わせていくのかが不透明で、市場の警戒感を誘っている。

 首相人事もまだ発表されていない段階だけに、市場の反応はまだ始まったところで、もう一段のユーロ売りが強まる可能性も。

用語の解説

五つ星運動 MoVimento 5 Stelle(英名:Five Star Movement)、イタリアの政党。同国の人気コメディアンであるグリッロ氏が政治運動家のカザレッジョ氏らと結党。ポピュリズム的な姿勢から、雇用の安定とEUなどへの公的債務のデフォルトなどを主張し、人気を集めた。昨年9月に現党首であるディ・マイオ氏がグリッロ前党首の指名を受ける形で党首に就任。ポピュリズム色を抑え、債務削減などを軸とする主張を行い、2018年3月の総選挙で、単独政党としては1位の票を獲得した(政党グループとしては中道右派連合に次ぐ2番目)。
同盟 Lega、イタリアの政党。経済的に優位に立つイタリア北部を中心とした地域政党であった北部同盟(LegaNord)が母体。地域政党から全国政党への脱皮を狙い、今年の総選挙を前に北部の文言を外し、同盟に改名した。北部同盟時代は反移民主義などを強く打ち出していたことから、極右政党として認識されていたが、全国政党へと変化するに従い、極端な姿勢を後退させ、ポピュリズム的な姿勢を強めている。反ユーロ的な姿勢は残っており、財務省証券であるmini-BOTを準通貨とする二重通貨制度を提唱している。3月の総選挙では、第一党となった中道右派連合の中でトップの議席数を獲得。単独政党としても2番目の議席数を獲得した。連立交渉が難航する中で、中道右派連合を外れ、五つ星運動との連立に動いた。

今週の注目指標

イタリア新政権発足に向けた正式要請
5月21日
☆☆☆
 3月の総選挙で、中道右派連合、中道左派連合、独立系の五つ星運動などがいずれも単独過半数を取れず、連立交渉が難航していたイタリア。五つ星運動と、単独右派連合の一員であった同盟とが連立で合意し、18日に合意書に署名。21日にマッタレッラ大統領に政権樹立に向けた正式な要請を行い、組閣を提案する。新首相について、両党とも党首がその任に就かないことを明らかにしており、大統領への申請時に明らかにするとしている。また、減税・財政支出拡大・年金改革の撤廃などについても説明があると見られる。
 新政権の主張をそのまま実施すると、巨額な財政赤字が生じる可能性が高く、ユーロ安を誘っている。当初はこれらの主張を強く示してくると見られ、ユーロドルは1.15などに向けた大きな売りにつながる可能性も。
英消費者物価指数(CPI)(4月)
5月23日17:30
☆☆☆
 前回3月のCPIが予想を下回る鈍化となり、それまで盛り上がっていた早期の利上げ期待が後退。実際に今月の金融政策委員会(MPC)では利上げが見送られた。MPCの結果と同時に発表された四半期インフレ報告でのインフレ見通しなどの弱さに、今後の利上げについても期待感が後退するなど、慎重な見通しが広がっている。そうした中で、利上げの鍵を握る最新の物価統計が発表される。今回のCPIの予想は前年比+2.5%と前回と同水準。前月比では伸びが強まる見込みで、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、年内には利上げとの見通しが広がり、ポンドの買い戻しに。ポンドドルは1.35をターゲットに上昇の可能性も。
米FOMC議事録(5月1日、2日開催分)
5月24日03:00
☆☆☆
 来月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げがほぼ確実視される中、前回5月のFOMC議事録が公表される。この時の声明では、物価について中期的にターゲットである2%近辺で推移するとの自信が示され、経済見通しについても、これまで見られた短期的な下振れリスクへの言及が省かれ、強気なものとなった。議事録でもこうした前向き姿勢が確認されるとドル買いをサポート。113円に向けた大きなドル円の上昇トレンドを支える材料となる可能性も。

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