2018年05月28日号

(2018年05月21日~2018年05月25日)

先週の為替相場

円高優勢に、一時108円台まで

 21日からのドル円相場は、リスク警戒感が強まる形で円高が進み、週初の111円台から一時108円台まで値を落とす展開が見られた。

 6月12日に予定されていた米朝首脳会談について、事前協議の難航などからトランプ大統領が24日にいったん中止を発表。その後、中止が撤回され、会合実施を目指して前向きに協議が進むという流れに。混乱が生じる中で、リスク回避の円高が一時進行する展開となった。

 米中通商問題もリスク回避の動きを誘った。中国が自動車関税の引き下げを示したものの、米国側は自動車関税の25%への引き上げ方針を示すなど、溝がかなり深い状況に。一時解決に向かうと見られたZTEへの制裁に関しても、継続が一時示され、25日になってトランプ大統領が罰金支払いを条件に制裁を緩和する方針を示すなど、通商問題関連での米中の対立姿勢が継続。ドル売り円買いの流れを誘った。

 イタリアの新政権問題もリスク警戒を誘った。連立を決めた「五つ星運動」と「同盟」が指名したコンテ・フィレンツェ大教授は、経済相に反ユーロ的な姿勢で知られるサボーナ元産業相を推薦。任命権(用語説明1)を持つマッタレッラ大統領が反対するなど、混乱が生じた。

 コンテ氏は、大統領の反対による組閣失敗を受けて、27日に首相指名返上を表明。これによりマッタレッラ大統領が指名するコッタレッリ元IMF財務局長を首相候補とする組閣がスタートするが、議会を通過する可能性が高くなく、再選挙の動きが広がっている。

 こうした一連の混乱からユーロは大きく売りが出る展開に。ユーロドルは1.18台から1.16台半ば割れまで。ユーロ円は131円台から127円15銭近辺まで売りが強まる場面が見られた。

 その他目立った動きを見せたのはトルコリラ。

 23日午前中に東京外為市場でフラッシュクラッシュ(用語説明2)を起こす形で、リラ売りが進行。リラ円が23円台後半から22円台半ば近くまで急落し、その後少し戻すものの、海外勢がさらに売り込む形で22円25銭近辺まで売りが出るといった流れに。

 この動きを受けてトルコ中銀は23日に緊急会合を実施。実質上、上限金利となっている後期流動性貸出金利を3.0%引き上げた。これにより一旦リラの買い戻しも、再びリラ売りが強まる場面が見られるなど、不安定な展開が続いている。

今週の見通し

 リスク警戒続く

 ドル円はいったん調整ムードに。

 世界的なリスク警戒の動きがドル売り円買いを誘っている。もっとも、調整一服後は再びドル買いが優勢な展開が期待されるだけに、どこまで調整を見込むかは微妙か。

 北朝鮮問題は、再び決裂する可能性があるだけに、積極的なドル買い円売りで反応しにくいものの、目先の懸念が後退したという点では買い材料に。

 大きなリスク要因である原油安の流れが止まらず、リスク警戒の動きに。石油関連株の売りを通じて、株式市場全体の重石となっている面もあり、円高の流れが続いている。

 もっともイタリアの反ユーロ政権が拒否されたことなどは買い材料。一気のドル売り円買いは難しい状況。

 109円台でのレンジ取引を基本に、上下どちらかに抜けるチャンスをうかがう展開に。

 今週は金曜日に米雇用統計が控えており、週の半ばからは米経済動向などに市場の関心が移る可能性も。30日に発表予定のADP雇用者数などもにらみながら、次の流れを見極めていきたい。期待はやや上方向で、ターゲットは111円近辺。

用語の解説

大統領任命権 議会の投票で選出されるイタリアの大統領は、普段は政治などに関わらず、象徴的な役割が大きい。ただ、議会の解散権、首相および閣僚の任命権、軍隊の指揮権などを有している。もっとも、象徴的な役割から任命権が行使されるケースはそれほど多くない。今回のケースでは、コンテ首相候補の提出した閣僚名簿における財務相人事に反対。コンテ首相候補は名簿の修正を拒否し、候補指名を返上した。こうした場合、大統領は独自に首相候補を任命し、指名された候補者が組閣を行る形となる。ただし、大統領が指名した首相および閣僚候補については、イタリア上下両院の賛成多数による信任が必要となり、信任されない場合は、再選挙となる。
フラッシュクラッシュ flash crash 閃光、ひらめき、瞬間的な、たちまちなどを意味するフラッシュと、衝突、相場の急落などの意味を持つクラッシュを組み合わせた相場用語。瞬間的な急落という意味。2010年5月6日にNY証券取引所でダウ平均株価が数分で約1000ドルの下げを記録し、取引時間中の過去最大の下げ幅を更新した事態をフラッシュクラッシュと呼んだのが最初といわれる。アルゴリズム取引による一方向の注文の急増や、相場自体の流動性の欠如など、複数の状況が組み合わさって起こるといわれている。

今週の注目指標

米PCEデフレータ(4月)
5月31日21:30
☆☆☆
 米国のインフレターゲットであるPCEデフレータは、前回4月分でターゲットである前年比2.0%に到達。変動の激しい食品やエネルギーを除いたコア部分も1.9%とターゲットに迫るなど、米国の物価上昇を印象付け、6月の利上げ期待を押し上げた。今回も堅調な数字が期待されており、PCEデフレータは2.0%維持。同コアは0.1%鈍化も1.8%見込みと、まずまずな水準が期待されている。予想通りの数字が出てくると、6月の利上げを確実なものとしてドルを支える材料に。雇用統計を控えて、予想通りの数字でドル高進行は難しいと見られるが、予想を超える高水準となった場合は、今年後半の追加利上げペース加速の期待にもつながり、ドル円が110円を大きく超える上昇を見せる可能性も。
米雇用統計・非農業部門雇用者数(5月)
6月1日21:30
☆☆☆
 前回の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回る16.8万人にとどまり、二か月連続で比較的弱めの数字となった。もっとも、3月に大きく落ち込んだ建設業が+1.7万人と回復。変動の激しい小売業が+0.8万人、雇用全体の先行指標として知られるテンポラリー雇用(派遣など)が+1.03万人と、内訳はまずまずであった。今回は+19.0万人と回復が期待されている。節目といわれる20万人の大台には乗らないものの、完全雇用に近いといわれる今の状況で、予想前後の水準の雇用増はかなり堅調という印象を与えるもので、ドルを押し上げる可能性。前回2012年以来の3%台を記録した失業率とともに好結果を記録すると、ドル円が110円を再び超えて、大きく上昇する材料となりそう。
米ISM製造業景気指数(5月)
6月1日23:00
☆☆☆
 米供給管理教会(ISM、Institute for Supply Management)が、米国の300社以上の製造業の購買担当者(もしくは供給管理責任者)に対して行うアンケート調査をもとに発表される経済指標。速報性に優れることから市場の注目度が高い。前回は57.3と市場の予想を下回り、二か月連続での低下となった。今回は58.0と回復が期待されている。前回も弱めとはいえ、注目度の高い新規受注が60超えを維持するなど、内訳はまずまずで、今回全体の回復が見られると、米景気への安心感につながりそう。市場見通し通りもしくはそれ以上の好結果でドル円は110円超えの期待も。

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