2018年06月11日号

(2018年06月04日~2018年06月08日)

先週の為替相場

イベント控え神経質に

 4日からのドル円相場は、これまでリスク要因となってきたイタリアやスペインの政局動向が落ち着いたこともあり、週の半ばにかけてリスク選好での円売りが優勢となる場面が見られた。しかし、イベントを前に週末には値を落とし、一方向の動きとはならなかった。

 イタリア・スペインでともに新政権が誕生し、政局の先行き不透明感が後退。ポピュリズム色の強いイタリアの新政権への不安感などは残るものの、一時の警戒感が薄れる形で、リスク選好の流れに。

 世界的な株高の影響もあって、ドル円は一時110円20銭台まで上値を伸ばす場面が見られた。

 もっとも、週末のG7首脳議会(G7サミット)を警戒して、積極的なドル買いにも慎重な姿勢が見られた。欧州やカナダに対する鉄鋼・アルミニウム関税の賦課を開始したことで、米国と欧州・カナダとの対立が懸念され、高値圏でのドル買いを躊躇する動きにつながった。

 ドル円は週末にかけて109円20銭近辺まで値を落とし、水曜日の高値から1円超の下落に。

 ユーロは、6日に強気な要人発言が相次ぎ、14日のECB理事会への期待感が強まる形でユーロが買われる場面が見られた。6日にドイツの首都ベルリンで行われたシンポジウムに参加したブラートECB専務理事は、今回の理事会について量的緩和終了に向けて予断なく討議すると発言した。さらに同シンポジウムにビデオ参加したバイトマン独連銀総裁が、「年内で量的緩和が終了するという市場の予想は妥当」ともう一歩踏み込んだ発言を行い、さらにその後、オランダのハーグで講演を行ったクノット・オランダ連銀総裁は早期に量的緩和終了を発表することが合理的と発言した。

 バイトマン総裁、クノット総裁といった金融引き締めに前向きなタカ派メンバーだけからではなく、プラート専務理事というチーフエコノミストを兼ねるメンバーからの発言だけに市場の期待感を誘った格好に。

 ユーロドルは5日の1.16台半ば近辺から1.1840近辺まで上昇。ユーロ円にいたってはリスク選好での円売りもあって、127円80銭近辺から130円20銭台まで大きく上昇する展開を見せた。

 もっとも、週末にかけてのリスク警戒感に、128円10銭台まで大きく調整が入るなど、振幅の激しい展開に。

 サプライズもあり大きく動いたのはトルコリラ。7日に行われたトルコ中銀金融政策会合は、4月に実施された前回の定例会合で利上げを実施した後、5月に二回の臨時総会を開き、ともに金融引き締めを実施したこともあって、据え置き見通しが半数強という状況になっていた。しかし、中銀は1.25%の利上げを実施。利上げ見通しを示す専門家も、それなりにいたが、0.5%~1.0%までの予想で、1.25%は予想外の大幅な利上げになった。

 トルコリラはこの発表を受けて急騰。トルコリラ円は23円90銭台から24円60銭まで一時買いが入った。

今週の見通し

 イベント目白押しで警戒感。

 12日の米朝首脳会談、12日、13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、14日のECB理事会、14日、15日の日銀金融政策決定会合など重要イベントが目白押し。経済指標を見ても、12日の米消費者物価指数、13日の英消費者物価指数(用語説明2)、14日の豪雇用統計と米小売売上高など、相場に対する影響力の強い指標が目白押しとなっている。

 こうしたイベントを控えて、市場はやや警戒感を強める展開に。FOMCでは利上げが確定的、ECB理事会では量的緩和の年内終了に向けたガイダンスが出てくる可能性があるなど、前向きな期待を持たせる状況。それだけに、ドル円の下値はしっかり感が強いと期待されるものの、上値トライにも慎重姿勢か。

 今後の米FOMCでの利上げ基調に影響を与えそうな12日の米消費者物価指数(5月分)は、前年比+2.7%とかなり強めの印象があった前回の+2.5%からさらに0.2%の上昇という強めの数字が期待されている。食品とエネルギーを除いたコア部分でも前年比+2.2%と前回の+2.1%から上昇と期待されており、予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、米FOMC声明やメンバーによる見通しにも影響を与えそう。

 現状年3回(3月、今週と続いて、あと1回)の利上げが大勢の見通しとなっているが、物価動向を受けて年4回の見通しが大勢となるようだとドルが大きく上昇も。

 ドル円は111円台を意識する展開も。

 ユーロは上昇基調が期待される。木曜日の理事会で終了に向けてのフォワードガイダンスの変更がある可能性はそれなりにあると見ている。

 タカ派で知られるバイトマン独連銀総裁などはともかく、チーフエコノミストであるプラート専務理事が終了に向けた話し合いに前向きな姿勢を示したことはかなり大きい。理事会の声明内容にもよるが、1.19台への上昇を期待したい。

用語の解説

プラート専務理事 ピーター・プラート(Peter Praet)、ECB専務理事、チーフエコノミスト。ベルギーとドイツのハーフで、両国の国境近くで生まれ、ベルギーで育っている。ベルギーのフォルティスバンクでのチーフエコノミストを経て、レイドナー・ベルギー財務大臣(当時)の主席スタッフに。その後ベルギー中銀の幹部(エグゼクティブ・ディレクター)を長く務め、2011年からECBのメンバーに転じ、経済関連部門を管掌している。金融政策に関しては、経済成長などを重視するハト派的な姿勢で知られている。
英消費者物価指数 CPI(Consumer Price Index)、英国の最終消費段階での財やサービスの価格動向を、英国国家統計局が調査し、示した指数。英国は1992年と先進国中でも比較的古くからインフレターゲットを採用しており、2003年に当初対象とされていた小売物価指数から消費者物価指数に対象が変更され、前年比2%がその水準となっている。英中銀はかつてインフレファイターと呼ばれていたほど、インフレを抑制しようという意欲が強いこともあり、英国の指標の中でも注目度が高い指標になった。

今週の注目指標

米朝首脳会議
6月12日10:00頃
☆☆☆
 トランプ米大統領と金朝鮮労働党委員長が12日、シンガポール南部のセントーサ島にあるカペラホテルで行われる。日本時間午前10時頃からの予定となっているが、時間のズレが生じる可能性も。
 北朝鮮の非核化問題が主要議題。今回で話がまとまる可能性は低いが、次回の会合予定などが示され、前向き姿勢が強調されると、リスク警戒感後退で円売りが強まる可能性も。ドル円は111円台前半が目先のターゲットなりそう。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月14日03:00
☆☆☆
 今回のFOMCでは3月以来の利上げがほぼ確実視されている。金利先物市場動向などから見ても、利上げをほぼ織り込み済みで、サプライズ要素は少ない。注目は参加メンバーによる経済・物価・金利などの見通し。各メンバーの年末次点での金利見通しをドットで示したドットプロットが特に注目される。前回3月時点でのドットプロットは年3回の利上げと年4回の利上げ見通しがともに6名で同数。それより低い現行水準のまま年末まで推移という見通しが2名、年5回の利上げを見込む参加者が1名という状況で、平均すると年3回が大勢という形になった。今回はこの見通しどのように変化しているかが注目ポイント。物価上昇が予想以上に進んでいるだけに、今回は年4回の見通しが多数となる可能性は十分にある。この場合ドルに対して中期的にかなり大きな回圧力がかかり、ドル円は112円を目指す動きを見せる可能性も。
ECB理事会
6月14日20:45
☆☆☆
 先週、ハト派で知られるプラートECB専務理事が量的緩和終了について余談なく討議と発言したことで、市場の期待感が強まる展開となっている。現行の量的緩和については、現行規模を維持して少なくとも9月末まで継続することが確定しており、結果としての波乱要素は少ないが、声明などで終了のタイミングに向けたガイダンスが出てくる可能性がある。10月、11月、12月と債券購入額を減らしていって(テーパリング)、年末時点で終了という市場のメインシナリオに沿ったガイダンスが出てくるかどうかがポイントに。基本的に慎重なドラギ総裁が夏頃まで討議を続けることを選択する可能性は十分にあり、この場合大きなユーロ売り材料となりそう。ユーロドルは1.15が視野に入ってくる。

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