2018年06月18日号

(2018年06月11日~2018年06月15日)

先週の為替相場

ドル高やや優勢に

 11日からのドル円相場は、米朝首脳会談、米連邦公開市場委員会(FOMC)、ECB理事会、日銀金融政策決定会合など、相場動向に影響を与える重要なイベントが目白押しとなる中で、若干ドル高円安の動きが優勢な展開となった。

 週明け、109円台前半で始まったドル円は、米朝首脳会談や米FOMCなどへの期待感から、堅調な地合いとなり、イベントを前に110円台を回復。

 米朝会談は、前向き姿勢を印象付けたものの、基本的には今後に期待という流れ。事前の市場の想定範囲内で、影響は限定的に。

 FOMCでは、事前見通し通り政策金利であるFF金利翌日物誘導目標をこれまでの1.50%-1.75%から1.75%-2.00%のレンジへ0.25%(25BP)引き上げた。この利上げはほぼ完全に織り込まれており、市場の注目は参加メンバーによる経済成長・物価・雇用・金利などの見通し(Projection)に集まっていた。中でも注目度が高いメンバー各々の年末時点での政策金利水準見通しをドットで示したドットプロット(用語説明1)は、中央値が前回の2.00%-2.25%から2.25%-2.50%に引き上げられた。これは年内3回の利上げから年内4回(9月と12月のFOMCで利上げ実施)に見通しが引き上げられたことを意味している。今年年末時点での経済成長・物価見通しが引き上げられ、失業率見通しが引き下げられるなど、その他の見通しもかなり強めのものとなった。

 この結果を受けてドル円は110円85銭近辺まで上昇。もっとも111円手前の売りを崩しきれず。すぐに値を戻す格好に。

 中国に対する追加関税適用へとの米紙報道が重石となり、FOMC後のドル買いが抑えられ、さらにいったん110円を割り込むところまで調整が入る展開に。

 その後ECB理事会後の大きなユーロ売りドル買いに、ドルが全面高となり、ドル円もしっかり。110円台後半を回復。

 日銀金融政策決定会合はほぼ想定通りも、現状の物価に対する評価を引き下げたことが、今後の緩和長期化につながるとの見方から、やや円売りに。

 大きく動いたのはユーロ。14日の理事会では現行規模で9月末まで継続が決まっている資産購入プログラム(APP・量的緩和策)(用語説明2)について、10月から規模を減額して12月末まで実施し、そこで終了すると発表。政策金利については少なくとも来年夏までは継続とのガイダンスを示した。

 量的緩和の終了を示したことはユーロ買い材料で、瞬間ユーロ買いドル売りが出たものの、利上げ時期が市場の見通しよりも先送りされたことで、一転して一気にユーロ売りが強まり、ユーロドルは1.1850近辺から1.15台へ値を落としている。

今週の見通し

 次の流れを模索する展開となっている。

 先週の米FOMCを受けて、今後の利上げ期待が強まったことで、ドルは基本的にしっかりの展開へ。

 一方で、対中貿易摩擦などに対する懸念が重石に。トランプ大統領は欧州、カナダなどに対する鉄鋼、アルミニウムへの関税賦課適用を発表しており、世界的な貿易戦争への懸念が円高を誘っている。

 上下ともにやや動きにくい展開。先週イベントが集中していたこともあり、材料出尽くしでの一服感もあって、レンジ取引が続きそう。

 とはいえ、基調は上方向か。ユーロ圏・日本が金利に対する慎重さを見せる中で、米国の利上げ見通し引き上げの影響は中期的に出てくると期待される。

 目先のターゲットは111円台半ば。

 ユーロドルは1.15ちょうど近辺が注目ポイント。先週木曜日に1.15台を付けた後、週末前のポジション調整で1.16台を回復。もっともあくまで調整の動きで、流れはまだ下方向。1年以上の金利据え置きが示されたユーロと、年内の利上げ回数見通しが強まった米国との対照的な状況が重石となっている。

 1.15手前には買い意欲も、1.15割れをトライし、1.1350-1.1400を目指す可能性は十分にありそう。

用語の解説

ドットプロット 年8回行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)のうち、半分の4回(2018年の場合、3月、6月、9月、12月のFOMC)で公表される参加メンバーによる年末時点での予想政策金利水準。各メンバーの予想値をドットの形でチャートに示す。この場合のメンバーはFOMCでの投票権を持つメンバーに限らず、議長などを含むFRB理事と、すべての地区連銀総裁で、6月18日時点では15名となる。3月時点でのドットプロットでの分布は、1.50-1.75%が2名、2.00-2.25%が6名、2.25-2.50%が6名、2.50-2.75%が1名となっており、平均すると2.00-2.25%(年内3回の利上げ)が大勢となっていた。今回は1.75-2.00%が2名、2.00-2.25%が5名、2.25-2.50%が7名、2.50-2.75%が1名となった。3月時点の1.50-1.75%での打ち止め主張していた2名が、今回の利上げで打ち止めに見通しを修正。前回2.00-2.25%と主張していたうちの1名が2.25-2.50%に見通しを引き上げたものとみられる(各ドットが誰を指しているのかの説明はないため、あくまで推論)。
資産購入プログラム 資産購入プログラム(Asset purchase Program)は、ECBによる量的緩和政策手段。2015年3月より始まった。最大月額800億ユーロ規模まで拡大していたが、2017年10月の理事会において、2018年1月から現行の月額300億ユーロで少なくとも9月まで継続すると発表された。今回の理事会で10月より月額150億ユーロに減額して12月末まで実行し、そこで終了することが発表された。すでに保有している国債については、満期償還を迎えた分を再投資に回し、バランスシートを当面維持するとしている。

今週の注目指標

ECBフォーラム
6月18日~20日
☆☆☆
 ポルトガルのシントラでECB主催の年次フォーラムが開催される。例年世界各国の中銀関係者・著名な教授などを招いて行われる同フォーラム。今年も豪華なメンバーによる講演・パネルディスカッションなどが予定されている。特に注目を集めているのが、現地時間20日14時半(日本時間20日22時半)から行われるパウエルFRB議長、ドラギECB総裁、黒田日銀総裁、ロウ豪中銀総裁によるパネルディスカッション。米FOMCが年内の利上げ見通しを引き上げ、ECBが年内の量的緩和終了と利上げについては来年夏以降と公表したタイミングだけに、かなりの注目を集めている。米欧の政策姿勢の違いが印象的になるとユーロ売りドル買いが強まると見られる。ユーロドルは1.15割れが意識される展開に。
日本消費者物価指数(5月)
6月22日08:30
 22日に5月の日本消費者物価指数が発表される。前回は生鮮食料品を除くコアが前年比0.7%まで低下し、日銀金融政策決定会合で現行の物価に対する評価が概ね1%前後から0%台後半に引き下げられる要因となった。今回は前回と同じ0.7%が見込まれている。だが、予想外にさらに鈍化するようだと、現行の長短金利操作付き量的質的緩和の長期化と、状況次第では一段の緩和に向かう可能性が意識されて円売りに。ドル円は111円超えも。
OPEC総会
6月22日
☆☆☆
 22日にオーストリアのウィーンで半期に一度のOPEC総会が開催される。現在OPECとロシアなど非OPEC主要産油国による協調減産について、サウジアラビアやロシアは増産に転じることで合意している。しかし、イランやベネズエラなどは増産に強く反対しており、かなり厳しい総会となりそう。増産決定を見送ると原油高を誘う可能性が高い。先進国唯一の純産油国であるカナダや、資源大国である豪州、南アなどにとっては通貨高材料に。豪ドル円は83円超えの動きが期待される。

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