2018年06月25日号

(2018年06月18日~2018年06月22日)

先週の為替相場

通商問題が重石

 18日からのドル円相場は、通商問題などを材料にやや不安定な展開となった。

 12日、13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、今後の利上げ見通しが引き上げられたことなどを受けて、週初はドル高円安が進行。いったん値を落とした後、再びドル高円安が進行するなど、堅調な動きを見せる場面も見られたが続かず。

 19日の東京市場朝に、トランプ大統領による「2000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の調査をUSTR(米通商代表部・用語説明1)に指示した」とのツイートがきっかけとなり、一気にドル売り円買いに。

 米中通商摩擦が強まるとの懸念が中国だけでなく世界的な株安を招き、リスク回避での債券高(利回りの低下)なども加わって、ドル売り円買いとなり、ドル円は一時109円50銭台に。

 もっとも、翌日には勢いが収まり、一転して調整の動きが広がり、ドル円も110円台を回復。ユーロドルなどその他通貨ペアでもドル買いの動きが目立っており、トランプ大統領発言の影響がいったんは打ち消される格好に。

 その後は110円台後半では売りが入るなど、上値トライにも慎重な姿勢がみられる中、週末を前にした調整などもあって、109円台に値を落として週の取引を終えている。

 その他目立ったのがポンドの動き。

 ブレグジットがらみでリスク警戒感が広がり、週前半は頭の重い展開に。ECB理事会でユーロ圏の政策金利が少なくとも来夏まで据え置かれることが判明したことなどを受けて、ユーロが対ドルを中心に売られたことなども重石に。

 動きが一転したのが21日の英中銀金融政策会合(MPC)を受けて。今回のMPCは四半期インフレ報告の発表のない回であり、無風で通過すると見込まれていた。確かに政策金利などは現状維持となったが、その際の投票がそれまでの7対2から6対3に変更された。

 チーフエコノミストのホールデン委員(用語説明2)が利上げに回る格好に。これを受けて次回8月のMPCで利上げするとの見通しが一気に強まり、ポンド買いが強まった。ポンドドルは1.31ちょうど近辺から1.32台に乗せ、その後1.33台まで上昇。

今週の見通し

 通商問題への懸念が広がっている。

 トランプ大統領は中国や欧州に対する追加関税賦課の姿勢を示している。これまでの米国の関税賦課姿勢に対して、対抗関税を賦課する方針を示してきたことが背景に。

 中国に対しては前回の500億ドル相当に追加して、2000億ドル相当の中国製品を新たな関税対象とする可能性を示した。この金額は昨年の中国の米国からの輸入総額を超えており、中国側としては前回の関税賦課に対抗して示した同額相当の米国からの輸入品に対して関税を付加するという姿勢を示すことはできない。かといって、税率を引き上げると、貿易戦争待ったなしになるという状況。

 こうした状況は世界経済の縮小を招きかねないだけに注意が必要。当面ドル円は下値リスクを意識する展開に。

 もっとも、FOMC後の利上げ期待拡大を受けたドルの買い意欲も健在。

 下がったところでは買いが出る流れとなっており、下値トライにも慎重な姿勢がみられる。

 基本的にはレンジ取引となりそう。109円台から110円台前半を中心としたレンジ取引の中で、どちらの方向を試すのかを見極める動きに。

 中期的にはまだ上方向の動きが期待されるところで、下げ止まりがみられるようならば、上方向への期待も。

 先週の上昇が110円台後半で抑えられたこともあり、その手前、110円半ば手前あたりからは売りが入る可能性があるが、期待はこうした売りをこなしての111円トライか。

 下方向は108円80銭が目先のポイント。ここを割り込むようだといったん様子見も。

用語の解説

USTR USTR(Office of the United States Trade Representative)、米国通商代表部。1963年に設立された通商政策に関して大統領を補佐するための機関で、その代表は閣僚級ポストとなり、特命全権大使として、WTOやOECDなどに際して、米国の政府代表として、外交交渉を行う権限を有する。
ホールデン委員 アンディ・ホールデン(Andy Haldane)、英国のエコノミスト、中銀金融政策会合委員。英ワーウィック大学で経済学の修士を取得後、英国銀行(英中銀)に入行。IMFへ出向していた時期などがあるものの、基本的には英中銀一筋のプロパー。2009年から英中銀の金融安定化に関する責任者。2014年6月から英中銀金融政策会合の内部委員及びチーフエコノミスト。

今週の注目指標

米耐久財受注(5月) 6月27日
21:30
☆☆
 米GDPにも大きく影響する米耐久財受注が27日に発表される。前回4月分は-1.6%と3か月ぶりに減少を示した。もっとも変動の激しい輸送関連が減少しただけで、輸送を除くコアは+0.9%。月ごとの変動が激しい航空機部門が大きく下げた恰好で、全体は好調となっている。今回も総合の数字は-0.9%と冴えない見込みも、輸送関連を除くと+0.5%とプラス圏を維持する見込み。前回+1.0%となった航空機を除く非国防資本財も含め、コア部門がしっかりした数字を示すと、米第2四半期GDPへの期待にもつながりドル買いに。ドル円は110円台へしっかりと乗せるきっかけになる可能性も。
NZ中銀政策金利
6月28日06:00
 NZ中銀の政策金利が28日に発表される。NZ中銀はこれまで当面の金利政策の現状維持姿勢を示しており、政策金利は現行の+1.75%で維持される見込み。注目は前回利上げ時期の見通し先送りなどがあった声明の内容。前回変更したところであり、今回利上げ時期見通しの変更はないとみられ、政策金利については今後しばらくの間現水準にとどまるとの従来表現を踏襲するとみられている。追加利下げの可能性が注目される。低インフレへの警戒感を強く示し、追加利下げの可能性をしっかりと示唆してくると、NZドル売りに。NZドル円は75円を割り込む動きも。
PCEデフレータ(5月)
6月29日21:30
☆☆☆
 今月のFOMCで年内の利上げ見通しが引き上げられるとともに、経済成長見通し、物価見通しも引き上げられた。FRBは物価の安定と雇用の最大化を責務として与えられているが、雇用に関してはほぼ完全雇用状態となっているだけに、今後期待通り利上げが実施されるかどうかの焦点は物価状況にある。
 12日に発表された消費者物価指数は前年比+2.8%、同コア前年比+2.2%とかなり強めの結果となった。インフレターゲットの対象であるPCEデフレータが同様に強めに出てくると、利上げへの期待感を後押ししてくるとみられる。予想は前年比+2.2%と、ターゲットの2.0%を上回る見込みとなっている。予想通りもしくはそれ以上の強めの数字が出てくると、ドル高の動きが強まり、ドル円は111円をトライする可能性も。

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