2018年07月02日号
先週の為替相場
円安進行
25日からのドル円相場は、通商問題などの懸念が残りながらも、週の後半を中心にドル高円安の流れが強まり、110円90銭台まで一時上値を伸ばした。
週の始まりは米中、米欧の通商摩擦を懸念する形でドル売り円買いの流れとなり、109円台前半の安値圏での推移となった。
月曜日朝には米国による欧州に対する追加関税の示唆が報じられたほか、中国からのIT・ハイテク・航空などの分野に対する投資制限を検討する報道もあり、警戒感が強まった。
投資制限観測に関しては、株の大幅安を誘ったこともあり、ナバロ国家通商会議(NTC)委員長から否定的な発言が出て、いったん警戒感が後退。対中強硬派として知られる同氏からの発言ということで、市場に安心感が広がり、110円台を一時回復。トランプ大統領からも投資制限には慎重な姿勢がみられた。実際に週末に発表された報告書では、既存の対米外国投資委員会(CFIUS)を有効活用するとの姿勢が示され、強硬策が見送られる結果となった。
こうした状況がドル買い円売りの流れを誘い、ドル円は週の後半にかけてしっかりに。
木・金曜日に行われたEU首脳会議(EUサミット・用語説明1)において、紛糾していた移民問題に関して全体の合意が発表されたことも、リスク警戒感を後退させる形で円安につながった。
今回のEUサミットが初参加となるコンテ・イタリア首相が従来の移民に対する合意(ダブリン合意)を強く批判し、合意に回らないとの姿勢を示していたこともあり、当初は警戒感が広がっていた。しかし、第三国に移民流入施設を設置するなどの提案を受けて、全体の合意がなされ、ユーロが急騰する場面がみられた。
ユーロドルは一気の上昇が一服した後も高値圏推移。ユーロ円も127円台から129円台に乗せるなど、ユーロ買いが優勢に。
今週の見通し
ドル高円安への期待感が広がる展開となっている。
下値しっかり感が強く、下がったところでは買い意欲が出ている。
通商問題への懸念は継続しており、世界的な貿易戦争への懸念も広がっているが、ドル円の頭を抑える材料とはなっても、下押しには至っていない。
今週は6日に米雇用統計が控えており、結果次第では利上げ期待がもう一段強まる可能性も。今年二回の利上げを実施した米国は、先月のFOMCで発表されたFOMCメンバーによる政策金利見通しで、年4回(年内あと2回)の利上げ見通しが大勢として示されたが、金利市場での織り込み具合は依然として年3回(年内あと1回)が大勢となっている。雇用統計次第で市場見通しが年4回に押し上げられると、ドル高の勢いが強まる可能性も。
5日NY市場午後(日本時間6日午前3時)には、先月のFOMCの議事要旨が発表される。利上げに至った前回のFOMCでの、今後の利上げに向けたメンバーの姿勢などがどこまで確認できるか。前回のFOMCではメンバーによる経済成長見通しや物価見通しの引き上げも見られたことから、前向きな姿勢が確認できる可能性がある。この場合、ドル高が強まる可能性も。
ドル円はこうした強気の材料を背景に112円を目指す動きも期待されるところに。
懸念材料はドイツの政局。メルケル首相率いるCDUと長年にわたって協力関係にあり、連立を組んでいるCSU(用語説明2)は、より厳しい移民政策をメルケル首相に要求していた。先週末のEUサミットで合意に至った移民問題の対応は、CSUの要求を満たしていないとして、同党の党首であるゼーホーファー内相は内相の辞任と党首の辞任を申し出ている。
CSU自体が連立から抜けるようなことがあると、現在の連立与党(CDU,CSU,SPDによる連立)は、過半数を割り込む形となり、政権基盤が不安定に、最悪解散もありうる事態となる。
こうした状況がユーロの重石となる可能性。ユーロドルは展開次第では1.15割れも。
用語の解説
EU首脳会議 | EUを構成する28の加盟国すべての首脳が集う会議で、EUサミットとも呼ばれる。正式な名称は欧州理事会。1974年に加盟各国首脳による非公式会合として始まり、1992年のEU条約で正式に発足。2009年にEUの機関として条約に規定され、それまでの持ち回りによる議長から、常任議長を制定。欧州理事会常任議長は通称EU大統領とも呼ばれる。現在の議長はトゥスク元ポーランド首相。 |
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CSU | キリスト教社会同盟(Christlich-Soziale Union in Bayern)、ドイツ南部バイエルン州の地方政党。現最大政党であるCDU(キリスト教民主同盟)とは長年にわたって協力関係にあり、CSUがバイエルン州以外では活動しない一方、CDUはバイエルン州では活動しておらず、実質上はCDUのバイエルン支部という見方をされることが多い。もっとも、その政治姿勢は若干異なっており、中道右派であるCDUに対して、より保守的な姿勢が強い。2008年から現在の党首であるゼーホーファー内相が党首を務めている。 |
今週の注目指標
豪中銀金融政策発表 7月3日 13:30 ☆☆ | 豪州にとって史上最低水準である1.50%で政策金利を維持する豪中銀。当面の据え置きが示されており、波乱要素は少ない。注目は声明の内容で、当面の据え置きを再度強調することがほぼ確実視されているほか、豪ドル高についての警戒をどこまで示してくるのかなどが注目材料に。米中をはじめとする通商摩擦が第1次産品の需要減につながる可能性があり、こうした面に対する警戒をどこまで示してくるのかなども注目材料に。慎重姿勢が目立つようだと豪ドル売りが広がる可能性も。豪ドル円は80円台へ再び値を落とす可能性も。 |
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FOMC議事録 7月6日03:00 ☆☆☆ | 今年二回目の利上げを実施した先月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が発表される。利上げ事態は予想通りであったが、同時に発表されるFOMCメンバーによる今後の政策金利水準、経済成長率、物価などの見通しが軒並み引き上げられ、失業率見通しが引き下げられるという、かなり強めの予想が示された。こうした見通しの変化に至った状況が議事録で示されると、ドル買いに安心感が広がると期待される。翌日に米雇用統計を控えているだけに反応は限定的なものにとどまる可能性があるが、雇用統計が好結果となった場合に、ドル買いに安心感を与えそう。ドル円を下支えし、雇用統計次第で112円超えに向かう動きのきっかけとなる可能性も。 |
米雇用統計(6月) 7月6日21:30 ☆☆☆ | 米国の指標の中で、もっとも市場の注目度が高いといわれる米雇用統計。米FOMCは責務として物価の安定と雇用の最大化が求められており、雇用状況は金融政策動向に直結していることが背景にある。前回は非農業部門雇用者数が前月比+22.3万人と、予想を超え、節目といわれる20万人の大台も超える好結果となった。失業率もITバブル全盛の2004年4月以来18年1か月ぶりの低水準である3.8%まで低下するなど、好調な米雇用情勢を示す結果となった。今回は非農業部門雇用者の予想が+19.8万人と若干鈍化も水準的にはまずまずの数字が見込まれている。失業率は前回と同じ3.8%の見込み。十分に強めの見通しだけに予想前後の結果が出てくるとドル買いにつながると期待される。ドル円は112円に向けた動きを強める可能性。 |
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