2018年07月09日号

(2018年07月02日~2018年07月06日)

先週の為替相場

円安進行

 2日からのドル円相場は、週の前半に小じっかりとした展開となったが、上値トライが限定的なものにとどまったこともあり、その後調整が目立つ展開を見せた。

 米中通商摩擦などへの懸念が継続していたものの、新規の材料に欠けたことや、力強い米経済への信頼から週末の雇用統計の好結果が期待されたことなどもあり、ドル円は111円台を付けるなどの動きがみられた。

 もっとも、111円台からの積極的な買いに慎重な姿勢が見られたことや、政治相場の中で要人発言などを警戒して7月4日の独立記念日での米国市場休場をまたいだドル買いポジション維持に警戒感が出たことなどを受けて、いったん調整が優勢に。

 110円台前半でのもみ合いが続いた後、大陽日酸(用語説明1)による米国同業大手プラクスエアの欧州事業部門買収の報道で、ユーロが買われ、ドル円も110円台後半へ持ち上げられる展開に。

 5日のFOMC議事録は通商摩擦への警戒感が示されるなどの材料がみられたが、市場の反応は特に目立たず、6日の米国による中国への追加関税発動と雇用統計待ちに。

 米国による追加関税の発動と中国からの対抗関税発動は事前見通しのとおりということもあり、反応は限定的に。

 米雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を超える増加を示したものの、失業率が前回及び予想値の3.8%から、予想外に4.0%へ悪化。4%に乗せたというインパクトもあり、ドル売りがやや優勢となって、110円台半ばを割り込んで週の取引を終えている。

 もっとも、失業率の低下は労働参加率の上昇による部分が大きく(用語説明2)、それほど悪い数字ではないとの思惑もあり、値幅的には限定的な影響にとどまっている。

 ユーロはメルケル首相率いるCDUと長年連立を組んでいるCSU(バイエルン州の地方政党)の党首で内相を務めるゼーホーファー氏が、メルケル首相の移民政策に反対して辞任を申し出た問題で、週の前半に売りが出る場面がみられたが、その後メルケル首相による説得により辞任が撤回され、ユーロ売りも一服。

 その後5日に報じられた大陽日酸によるM&A報道でユーロ買いが入る展開に。

 米雇用統計を受けてのドル売りも、ユーロドルでのユーロ高ドル安につながり、週末に一時1.17台後半まで上昇する場面がみられた。ユーロ円も128円台半ばから、週末に130円に迫る動きとなっている。

  

今週の見通し

 次の材料探しの展開に。

 イベント目白押しとなった先週後半の市場を無難にこなしたことで、次の動意探しとなっている。

 米国の雇用統計は若干弱めも、今後の利上げ基調を崩すものではない。金利先物市場動向から見た年内の利上げ確率も、年3回(年内は9月にあと一回)と年4回(年内は9月と12月に計二回)で見通しが分かれる状況で変わっておらず、利上げ確率もほぼ同水準を維持している。金利面では依然としてドルは堅調地合いに。

 もっとも、米中・米欧の通商摩擦を受けての警戒感は継続。先週末に発動した米中の追加関税の影響を意識する動きもあり、ドル買いには慎重な姿勢も。

 基本は110円台を中心としたレンジ取引となりそう。

 一時売りが目立っていた世界の株式市場に、先週末から買い戻し傾向が強まっており、110円の大台維持が続く中で、リスク選好の動きが強まると、ドル円は111円台を再びトライに行き、上値を試す期待も。

 指標面でもドル買いが意識されそう。雇用市場がしっかりとしている中で、米国の利上げの鍵は物価動向が握っている。今週は12日に米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されているが、前回よりも強めの数字が期待されており、予想通りもしくはそれ以上に強い数字が出てくるとドル買いも。

 レンジ取引が中心の展開も、期待は上方向、ターゲットは111円50銭。ここをしっかり超えると、中期的にもう一段上を期待できそう。

用語の解説

大陽日酸株式会社 東証一部に上場する日本の産業ガスメーカー。産業ガス部門でエア・ウォーターと国内1位を争っている。2016年6月に同部門の世界最大手フランスのエア・リキード社の米国事業部門の一部を買収。同社が米国の同業エアガスを買収するにあたって、独禁法抵触を避けて売却したもの。これにより米国内での事業を拡大。今回同業2位ドイツのリンデと同業3位米国のプラクスエアが合併するにあたり、プラクスエアが欧州委員会から譲渡を求められていた欧州事業部門を買収し、欧州事業の拡大を図る形となった。また、これによりリンデとプラクスエアの3兆円を超える大型合併への動きが加速すると期待される。
失業率と労働参加率 失業率は一般的に労働力人口のうちの失業者の割合を指す。失業者のうち、就業をあきらめて求職活動を行っていない者は、労働力人口の計算から除外される。雇用市場が上向くと、こうした者が改めて求職活動を行うことで、労働力人口が増加するが、すぐには雇用に結びつかないこともあり、一時的に失業率は悪化することとなる。労働力人口の変化は総人口における労働力人口の割合である労働参加率の変化で確認することができる。雇用市場が上向くと、労働参加率が上昇し、失業率も低下するが、両者の変化にはタイムラグがあり、一時的には労働参加率が上昇し、失業率も上昇、その後失業率が低下するという流れが生じる。

今週の注目指標

NATO首脳会議 7月11日
☆☆
 NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議が11日、12日の日程でNATOの本部があるベルギー・ブリュッセルで開催される。トランプ大統領は欧州各国に軍事費の応分の負担を要求しており、その欧州側の対応が注目される。NATOは加盟国の軍事費をGDP比2%以上にすることを目標として掲げているが、今年時点で29か国中8か国の達成にとどまる見込みで、トランプ大統領の不満は大きい。もっとも、欧州側としても、貿易摩擦を受けて米国との対立姿勢が強まっており、米欧関係の一段の悪化につながると、市場でもリスク警戒の動きが広がる可能性。ドル円は110円割れを意識する展開も。
カナダ中銀政策金利
7月11日23:00
☆☆☆
 カナダ中銀の政策金利発表が11日23時に予定されている。今年1月に追加利上げを実施したカナダ中銀。その後は据え置きを続けてきたが、前回の会合での声明で、1-3月期のカナダ経済は想定を多少上回っていると示しており、今回の会合での追加利上げが期待される状況に。金利先物市場動向からの利上げ割合は80%を超えており、利上げ見通しが大勢という状況。もっとも、米国との通商摩擦が強まる中で、今回は見送るとの見通しも一定程度残っており、利上げ、据え置きどちらに決まったとしても市場の反応は大きなものとなりそう。大方の予想通り利上げをした場合はカナダ高に、カナダ円は節目の85円を超えての上昇が期待されるところ。
米消費者物価指数(6月)
7月12日21:30
☆☆☆
 米FRBは連邦準備改革法の下で雇用の最大化、物価の安定、穏やかな長期金利という責務が与えられている(穏やかな長期金利には物価の安定が不可避のため、事実上二つの責務)。先週発表された雇用統計で、雇用市場はこれまで通りの堅調さを示したこともあり、物価動向が金融政策の鍵を握る状況となっている。米国のインフレターゲットはPCEデフレータであるが、発表がより早く、傾向がほぼ同じの消費者物価指数に注目が集まる傾向がある。今回は前年比+2.9%、同コアの前年比+2.3%と、ともに前回から上昇見込み。物価の上昇傾向が示されることで、ドル高の大きな材料となる可能性。ドル円は111円台への上昇が期待されるところ。

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