2018年07月17日号
先週の為替相場
ドル高円安傾向が強まる
9日からのドル円相場は、週後半に112円台後半を一時つけるなど、しっかりとした展開がみられた。
週初は6日の米雇用統計での失業率上昇などの影響もあり、110円台前半でもみ合う場面がみられたが、110円の大台を維持し、下げ渋ったこともあり、上昇に転じる展開に。
5日に米国が中国製品2000億ドルを対象とする追加関税リストを公表。すでに公表済みの500億ドル(うち340億ドルが発動済)と合わせ2500億ドル規模と、昨年ベースの中国からの輸入額の約半分にあたる金額での関税賦課方針を決めた。中国からはすぐ対抗姿勢が示されたが、中国への米国からの輸出額は1300億ドル程度で、すべての輸入品を関税対象としても足らず、M&Aの承認を遅らせるなどの非関税障壁での対抗の可能性が報じられた。
もっとも、米国が中国の対応をやり返すと、結局ダメージが大きいのは中国との見方もあり、通商問題でこれまでのようにドル安が進まないとの期待感がドル買いに安心感を与えた。
世界的な株高傾向を受けてのリスク選好の動きも、ドル円、クロス円を支える展開となり、ドル円は週の後半にかけて上昇基調を維持。
週末を前に金曜日のNY市場でポジション調整が入る場面がみられたが、112円台を維持した。
ポンドはブレグジットがらみで不安定になった。メイ首相が志向するソフトブレグジット(用語説明1)を進める形で閣僚の取りまとめを図ったが、その方針に反対するジョンソン外相(用語説明2)とデービスEU離脱担当相が辞任。強硬派の代表格であり、英国民からの人気も高いジョンソン外相の辞任が政局への不安を招く一方、ソフトブレグジット路線自体は市場から好評という展開に。
カナダは事前の見通しどおり金利の据え置きを決めた11日の金融政策会合で、今年のインフレ見通し引き上げなどを示し、カナダ買いが進む場面がみられた。一方原油安がカナダ売り材料となるなど、不安定な展開に。
今週の見通し
ドル買い円売りの基調が継続へ。
ドル円は高値追いに慎重な姿勢がみられるものの、基本的にはしっかりの展開となっている。
通商問題などの悪材料に関わらず、世界的な株高の流れは変わっておらず、リスク選好の動きにつながっている。
米中の通商摩擦に関しては、先週米国が2000億ドル規模の追加関税リスト公表に踏み切ったあたりから流れが変わっており、それまでのドル売りの材料としてのとらえ方が後退している。
中国が有効的な対抗策をとりにくいとの認識が広がっており、人民元売りドル買いの流れから、ドル全般の買いにつながる展開に。
日本の株高などを受けてのクロス円での円売りも見られ、ドル円はかなりしっかりとした展開を見せている。
ドル円は売りをこなしながら113円を試す展開か。半期議会証言などがドル上昇のきっかけとなる可能性も。イベントなどで一気の上昇がなくとも、112円台での推移が続くと、じっくりと売りをこなしていきそうな動きに。
113円の大台を超えるとターゲットは114円から115円の大きな上値抵抗水準へ。
用語の解説
ソフトブレグジット | 英国がEUを離脱(Brexit)するにあたり、欧州単一市場へのアクセスを継続する形で実施するというもの。その見返りとして移民政策などについてEU側からの主張を相当程度認める必要があるとされる。メイ氏はブレグジットの実施が国民投票で決定した後に首相に就任したときから、同方針を主張している。ただ、ブレグジットの動きが強まった大きな要因として移民問題があるため、同方針に反対しハードブレグジットを主張する強硬派もいる。 |
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ジョンソン外相 | 英保守党に所属する政治家(庶民院)。保守色の強い英紙デイリーテレグラフなどで記者を務めた後、2001年から庶民院議員。2008年にロンドン市長に転じ、2016年まで市長を務めた。市長在職中の2015年5月から再び庶民院議員となった。 ジャーナリスト時代から欧州懐疑派として知られており、2016年のブレグジットに関する国民投票においても、離脱派の代表格として活動した。 過激な言動などで知られる一方で、国民的な人気は高く、世論調査などで次期首相候補としてたびたび支持率一位となっている。 |
今週の注目指標
FRB半期金融報告 7月17日 23:00 ☆☆☆ | パウエルFRB議長が、上院銀行委員会で半期金融報告を行う。ハンフリーホーキンス法に基づいて、年に2回実施されるもので、現状の金融政策の説明、今後の見通しなどが示される。翌日18日には下院金融サービス委員会でも実施されるが、報告の際のテキストは同じものとなり、初日の報告に注目が集まる(上院と下院のどちらが先になるかは慣習的に交互で調整されている)。今年すでに2回の利上げに踏み切ったFRB。前回6月のFOMCでの参加メンバーによる政策金利見通しでは、年内あと2回の利上げが、1回の利上げをやや上回ったが、1回の利上げと主張するメンバーもまだ十分に残っている状況。市場の見通しもほぼ半々となる中で、今後の利上げペースに関するヒントが出てくるのかが注目されるところ。年内あと2回の見通しが強まるような前向きな話が出てくると、ドル高が強まりそう。ドル円は113円台に向かう可能性がある。 |
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英消費者物価指数(CPI) 7月18日 17:30 ☆☆☆ | 来月の英金融政策会合は四半期インフレ報告が同時に発表されるスーパーサーズデーにあたっており、政策金利の変更が起こりやすい回ということもあり、以前から追加利上げへの期待が広がっていた。4月ごろにいったん9割に達した金利市場動向から見た利上げ割合は、その後の物価鈍化でいったん低下も、ここにきて8割を回復するところまで戻していた。しかし、先週ブレグジットに対する警戒感が広がったこともあり、直近再び期待感が後退するなど、不安定な状況。利上げの鍵となる物価動向への注目度がかなり高くなっている。現状では前年比+2.6%と久しぶりに前回よりも0.2ポイント上昇見込み。見通しどおりもしくはそれ以上の数字が出てくると、ポンド買いに。ポンド円は150円を意識する展開も。 |
豪雇用統計(6月) 7月19日10:30 ☆☆☆ | 前回の豪雇用統計は雇用者数全体が予想を若干下回る弱いものとなったことに加え、内訳をみると、正規雇用が2.06万人減少し、非正規雇用が増加するという弱めのものとなっていた。労働参加率の低下も見られるなど、やや厳しい数字に。豪ドルの利上げ時期が先送りされるのではとの思惑にもつながり、豪ドルの重石となる結果に。今回の見通しは雇用者数が1.65万人増と、前回よりも強めの数字が期待されている。正規雇用の雇用増を含めた内容的にも強めのものとなると、豪ドル買いに寄与すると見込まれる。豪ドル円は85円を目標に上昇する期待も。 |
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