2018年08月13日号

(2018年08月06日~2018年08月10日)

先週の為替相場

ドル高優勢も、週末にかけリスク警戒

 6日からのドル円相場は、じりじりとした円高に押される展開となった。

 市場全体ではドル高の動きが優勢で、ドルインデックスが約1年1か月振りとなる96台を付けるなど、ドル円を除くとドルはほぼ全面高の展開に。

 一方でリスク警戒感からの円高の動きも優勢で、ドル円はドル買いと円買いに挟まれる中で、じりじりと値を落とした。

 週の半ばまではポンドなどの売りがドル買いを主導。ポンドドルは合意なきブレグジットへの流れが強まったとの警戒感が売りを誘い、1.30を割り込んで11か月ぶりの安値圏に。

 その後いったん値を戻したが、ドル高の流れが継続する中で、頭の重い展開に。

 NZ中銀が声明で2020年いっぱいまで政策金利を据え置きとの姿勢を示したことなども、NZドル売り米ドル買いから、ドルを支えた。

 9日からはトルコリラ主導の展開に。関税関連の通商問題に加え、米国人牧師の拘束問題で対立が見られた米国とトルコ。トルコの代表団が訪米して協議を行っていたが、牧師の解放を確約しないなど、状況の改善が見られず、警戒感からのトルコリラ売りに。

 10日に入って、リラ売りの動きが加速し、トランプ大統領によるトルコに対する鉄鋼・アルミニウムの関税率を倍にするとの発言もあって、一気に値を崩した。

 ドルリラは一日で約20%の下落と、大きな暴落に。

 こうした動きが世界経済の混乱を招くとの懸念もあり、世界的に株安が進行。リスク回避の円高を誘った。

 また、トルコに対するエクスポージャー(用語説明1)が懸念されてユーロ売りの材料となった。英紙FTが、ECBはスペインのBBVA(用語説明2)、フランスのBNPパリバ、イタリアのウニクレジットという3行についてトルコのエクスポージャーの大きさを懸念していると報じたことがきっかけ。実際トルコのエクスポージャーに関しては、米国や日本などに比べてユーロ圏が大きいとみられることから、リラの暴落がユーロ売りに直結した格好に。

 名指しされた3行は株価も急落、特にBBVAは5%以上株安となる展開が見られた。

 今年5月、6月と二度のユーロ安局面を支え、今月に入っても下値を支える水準となってきた1.15をしっかり割り込んだことで、下げが加速し、ユーロドルは1.13台まで値を落としている。

 

今週の見通し

 トルコリラリスク継続。

 今週は先週後半に相場が荒れる要因となったトルコリラの影響が残り、不安定な展開が予想される。

 一気に値を崩したトルコリラだが、エルドアン大統領はきっかけとなったトランプ米大統領との対立姿勢を週末も維持している。リラ急落の対応手段として有用であると考えられる利上げについても否定的な発言を行っており、市場はリラ安の流れがどこまで続くのか、状況を見守る展開に。

 また、リラ安が他の新興国市場に向かう可能性も考慮したいところ。

 トルコリラの流動性の低さが目立ち、取引に際してスプレッドが大きく広がるなどの状況が生じると、他の新興国通貨に対する懸念につながり、売りが出る可能性も。

 この場合、世界的なリスク警戒感から、ドル円は下方向を強く意識した展開となる。当面はしっかりとした円売りが難しい相場が続きそうで。110円の大台割れも十分に視野に入っている。

 目先のターゲットは109円台前半か。

 先週半ばの129円台から2営業日で125円台まで値を落としたユーロ円は、ドル円以上に下方向のリスクが高い展開に。

 トルコのエクスポージャーがらみの警戒感が継続しており、ユーロ円はもう一段下を試す可能性が十分にありそう。122円をターゲットに下を意識。

用語の解説

エクスポージャー エクスポージャー(Exposure)とは、金融資産ポートフォリオの中で、マーケットの価格変動リスクにさらされている資産の割合を指す金融用語。金融機関の持つエクスポージャーという場合は、投融資や保証など与信の総額を指す。
BBVAビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(Banco Bilbao Vizcaya Argentaria)、スペインを代表する銀行の一つで、サンタンデール銀行に次いで同国で二番目の規模を誇る。米アラバマ州にあるCombassBancsharesを買収したことで、米国南部でも金融業を行っている。

今週の注目指標

独ZEW景況感指数(8月)
8月14日18:00
☆☆
 前回2012年以来の低水準である-24.7を記録した独ZEW。米欧の通商摩擦問題を受けて、欧州通貨危機時代と並ぶ企業の先行き不透明感が示されたかたち。今回は-21.3と前回からは少し改善も、水準的には厳しい数字となっている。ある程度は織り込み済みも、予想を超えて、前回並みの数字が出てくると、トルコリラ暴落でユーロ売りの動きが強まっている局面でもあり、ユーロ売りの流れに拍車がかかる可能性も。ユーロドルは1.12台への下げも意識されるところ。
英消費者物価指数(CPI・7月)
8月15日17:30
☆☆
 今月の金融政策会合(MPC)で利上げに踏み切った英中銀。当面は金利の据え置きが見込まれているが、来年の後半には追加利上げを実施してくるのではとの期待が広がっている状況。利上げの材料となった物価動向について、今回はCPI前年比+2.5%と、前回の+2.4%から0.1ポイント強まると見込まれている。ある程度の物価上昇は想定内も、予想を超えて上昇が強まるようだとポンドの買い戻しにつながる可能性。ポンドドルは1.30回復に向けた動きを期待。
米小売売上高(7月)
8月15日21:30
☆☆☆
 米国の個人消費の力強さを反映して、直近の米小売売上高は比較的好調。前回の6月分も前月比+0.5%とまずまずな数字となった。今回は月ごとに変動が激しい自動車部門で、7月の新車販売が振るわなかったこともあり、+0.1%とやや弱めの数字が見込まれているが、自動車を除くコアは+0.4%と前回と同じ強めの数字が期待されている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、米経済の力強さからドル買いに安心感が出て、ドル円もしっかりとなる可能性。ドル円は111円台への回復も期待される。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。