2018年08月20日号

(2018年08月13日~2018年08月17日)

先週の為替相場

トルコ情勢などに翻弄

 13日からのドル円相場は、前週の急落以降、市場の注目を集めたトルコリラ及び新興国通貨市場の動向をみながらの展開となった。

 9日、10日のリラ安を受けた週明け13日の市場では、オセアニア市場でリラ安がさらに進行。その後値を戻したものの、新興国通貨売りの動きが波及する形で南アランドが一時対ドルで約10%も下げるなど、神経質な動きが見られた。

 ドル円も110円11銭近辺を付けるなど、リスク警戒の動きが広がった。

 しかし、その後リラ安の動きが一服すると、リスク警戒の円買いに対する調整が優勢となる展開となり、ドル円は111円台を回復。トルコ政府による為替スワップ取引の規制や流動性の供給など、混乱回避の動きがリラ売りの動きを抑えた格好。

 もっとも、その後も新興国通貨の神経質な動きが継続。中国インターネットサービス大手テンセントホールディングスの決算が弱めに出たことや、中国当局の新規ゲーム承認凍結の動きなどが重石となって、中国株安が進み、さらに人民元安も大きく進む中で、ドル円は111円を割り込む動きに。

 さらに、中国売りの流れが需要減退を懸念した銅先物の下落やNY原油先物の下落などを誘い、リスク回避の動きからドル円が110円台半ばを割り込むなど、頭の重い展開に。

 その後、111円台を回復する場面もドル買い円売りは続かず、ドル円は110円台に落として週の取引を終えた。

 スペインやイタリアの金融機関のトルコに対するエクスポージャーの大きさから、リラ安局面で売りが入ったユーロドルは、一時1.1300近くまで値を落とすなど、軟調地合いが目立った。しかし、リラ売りの動きが落ち着いたこともあり、週後半には1.14台を回復する動きとなった。

 

今週の見通し

 ジャクソンホール経済シンポジウム(用語説明1)などに注目の流れ。

 注目を集めるトルコ市場は、21日から24日まで犠牲祭の祝日で休場、20日も犠牲祭前日で短縮取引となっており、取引参加者が極端に少ないこともあり、様子見ムードが広がると見込まれている。

 トルコ政府に拘束されている米国人牧師の問題などへの注目は継続も、値動きは限定的か。

 市場の注目は米中の通商問題とジャクソンホール経済シンポジウムを前にした主要国の金融政策見通し動向となりそう。

 米中の通商問題については、11月末のG20 での米中首脳会談に向けて解消に向けたロードマップを作成との報道が先週末に流れた。

 今週22日、23日に米中両国の事務レベル協議(用語説明2)が米国で行われる予定となっており、進展などが注目される。

 また、23日は米国が中国製品160億ドル相当に対する関税賦課を実施する見込みとなっており、この点も注目されるところに。

 もっとも、米中問題については交渉進展がまだ先との思惑が広がっており、大きな対立が目立たない限り市場の影響は限定的か。

 ドル円の110円台中心としたレンジを崩す材料となるかは微妙。

 23日から25日にかけてジャクソンホール経済シンポジウムが開催される。注目はパウエルFRB議長が出席する24日。金融政策の今後についての話が出てくる見込みで、年内あと2回の利上げに向けた力強い内容が出てくると、ドル買いの動きも。ドル円が111円台までしっかりと回復する支えとなりそう。

用語の解説

ジャクソンホール経済シンポジウム カンザスシティ連銀が主催し、ワイオミング州ジャクソンホールで毎年8月下旬に開かれている経済シンポジウム。大きな理由がない限りFRB議長が出席することで知られている。また、多くの主要国中銀総裁なども出席することが多い。具体的な出席者や個別の講演などでのテーマはシンポジウム開催日である23日現地時間午後8時まで公表されないが、FRB議長の出欠や他の中銀総裁の出欠は、各国が公式スケジュールを公表する中でわかることが多い。
 今年のシンポジウム全体のテーマは「変化する市場構造と金融政策の影響」。全体テーマは毎年変わるが、金融政策関連であることは共通。2010年に当時のバーナンキFRB議長がQE2開始をシンポジウムで示唆、2014年にはドラギECB総裁が資産購入プログラム導入を示唆するなど、金融政策動向を世界にアピールする場となっていることもあり、注目度が高い。
米中事務レベル協議 米中通商摩擦問題に関して、11月末のG20の場で予定されている米中首脳会談や、その前に開催が期待される閣僚級協議への地ならしを目的として、今週22日、23日に両国の事務レベルでの協議が行われる。中国商務省の王受文商務次官が訪米し、米国のマルパス財務次官(国際問題担当)と協議を行う予定。協議中の23日現地時間午前0時から米国の中国製品160億ドル相当の追加関税賦課が実施される見込みで、中国側からも即時に同規模の関税賦課実施が示されるとみられるなど、緊張感が高まる中での実施となる。

今週の注目指標

米国の対中追加関税実施
8月23日00:00
☆☆
 23日午前0時をもって、米国による中国製品への160億ドル相当279品目に対して、25%の追加関税が発動する予定。中国の知的財産侵害に対する制裁関税として示された500億ドルの追加関税のうち、7月6日にすでに発動した340億ドル相当に続く、残りの部分。半導体、電子機器、プラスチック製品などが対象となっている。中国側は同規模の関税での対抗措置を発表している。中国製の半導体の原料であるチップは米国からの輸入が大きいため、米経済への悪影響が大きくなるという懸念もある。すでに発表済みの事項だけに影響は限定的とみられるが、株式市場などで懸念が広がるようだとドル売りも、ドル円は110円ちょうどを試す展開も。
FOMC議事録
8月23日03:00
☆☆
 7月31日、8月1日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公表される。事前の見通し通り政策金利を据え置いた当回のFOMC。声明では景気判断について従来の「堅調なペース」という表現を「強いペースで拡大」に引き上げた。また、インフレ動向についても前回の(ターゲットである)「2%に一段と近づいた」から「引き続き2%付近で推移」と上方修正されるなど、前向きな姿勢が目立った。一方で、市場が懸念した通商問題などに対する警戒感が目立たず、こうしたネガティブ面での動向の確認が議事録の大きなポイントとなりそう。議事録を確認しても前向き姿勢を強調という印象が継続すると、ドル買いにつながると見込まれる。ドル円は111円台回復に向けた動きが期待される。
パウエル米FRB議長講演
8月24日
☆☆☆
 ジャクソンホール経済シンポジウムで、米国のパウエルFRB議長が24日に講演すると、FRBが公式ページで明らかにしている。シンポジウムの全体テーマである「変化する市場構造と金融政策の影響」に沿ったものとなる見込みだが、さらに個別テーマとして細分化される可能性も。議長は年内後2回の利上げに前向きな姿勢をこれまで示してきており、今回も前向きな発言が出てくると期待される。今回も論調は同じとみられ、影響は限定的なものにとどまりそう。年内2回の利上げはともかく、来年以降の利上げについては慎重な姿勢を示してくると、市場はドル売りで反応の可能性も。この場合ドル円は110円を割り込んでの売りが見込まれる。

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