2018年08月27日号

(2018年08月20日~2018年08月24日)

先週の為替相場

週の後半に円安強まる

 20日からのドル円相場は、週の前半に円高の勢いが強まり、6月以来となる109円台を付ける場面が見られた。しかし、週の後半には一転して円安の流れが優勢となり、111円台を回復する展開となった。

 その前の週まで市場の注目を集めていたトルコリラ動向は、トルコ市場が犠牲祭(用語説明1)に伴う祝日で火曜日から金曜日まで休場、月曜日も短縮取引で参加者が非常に少なくなったこともあり、いったん様子見ムードが広がった。

 週の初めは、トランプ大統領発言がドル売りを誘った。大統領はパウエルFRB議長の利上げ路線を批判。中国と欧州は為替を操作しているなどの発言もあり、ドル売りが強まる材料となった。この影響で火曜日にドル円が節目である110円の大台を割り込むなどの動きが見られた。

 しかし110円割れではドル買い意欲が健在で、すぐに値を戻すと、日経平均が火曜日から4連騰になるなど、株高の動きにも支えられて、一転して円安が優勢な展開となった。

 23日のFOMC議事録でのタカ派姿勢維持なども材料となり、ドル円はしっかり。金曜日のジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長講演を前にした期待感も、ドル高円安の流れを支えた。

 議長講演では、基本的には従来の姿勢が維持されたものの、インフレが2%を超えて加速する明らかな兆候はなく、過熱リスクは高まっていないなどの発言があり、市場はドル売りで反応。ドル円は111円台を維持したものの、頭の重い展開に。

 ユーロドルは堅調地合いを維持。トルコ情勢への懸念が一服し、ユーロの買い戻しが入ったことや、トランプ大統領発言を受けてのドル売りの流れなどに1.13台から1.16台を付けるところまで買いが入った。

 新興国通貨売りの動きは継続。トルコリラは休場で動きが目立たなかったが、人民元、南アランドなどの売りが対ドル対円で優勢となった。

 特に南アランドは、白人農場主からの土地収用問題(用語説明2)をトランプ大統領に批判されたことで、米国との関係悪化が意識されて売りが出る場面も見られた。

 

今週の見通し

 やや材料不足の中、次の流れを探る展開となりそう。

 注目されたジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエル議長の講演は、物価の過熱リスクを否定するなど、市場が期待したほどのタカ派なものとはならず、来年以降の利上げ継続期待が後退。ドル高の勢いが若干そがれた。

 もっとも、年内後二回の利上げ見通しが後退するほどのものではなく、ドル売りも限定的に。

 今週は目立った経済指標の発表やイベント予定もなく、やや材料不足感。

 上下ともにやややりにくい中で、次の流れを探る展開となりそう。

 先週後半の円安局面で8月15日の高値111円43銭をわずかに超えたものの、ポイントである111円台半ばを超えきれず、目先のターゲットに。

 先週初めの円高トライでポイントである110円を割り込んでいることで、下方向は目先のポイントまで遠く、調整余地が大きいが、流れはどちらかというと上を向いているだけに、どこまで下げられるか。110円80銭近辺がしっかりとしてくると、短期筋のドル買い円売りの動きが強まりそう。

 基本的には111円台前半を中心としたレンジ取引も、上方向への動きを意識する展開か。

 先週の長い休場明けとなるトルコリラ相場動向も注目材料に。米国人牧師の拘束問題での米国とトルコとの対立が続いており、新たな制裁の可能性も意識されることから、再びリラが崩れるような局面があると、要注意。リスク回避の円高が強まった場合、ドル円は110円台前半へ値を落とす可能性も。

用語の解説

犠牲祭 イード・アル=アドハーとも呼ばれるイスラム教の祝日。ラマダン明けの祝日の一つで、太陰暦であるヒジュラ暦の12月10日から4日間がその期間となる。太陰暦のため、一般的に利用されるグレゴリオ暦では毎年日付が変わる。
白人農場主からの土地収用 南アのラマポーザ大統領は公約であった白人所有農地を保証なしで収容することが可能になる憲法の改正方針を先月31日に発表した。南アフリカではかつてのアパルトヘイト政策などの影響で、人口の8%しかいない白人農家が72%の土地を所有する状況となっている。隣国ジンバブエでは同様の収用を2000年から実施し、同国に住んでいた多くの白人が国を去り、農地が荒れたことで、経済が破綻。ジンバブエドルがハイパーインフレを起こす大きな要因となったといわれている。

今週の注目指標

米第2四半期GDP改定値
8月29日21:30
☆☆
 速報値ベースで前期比年率+4.1%と2014年第3四半期以来の高成長を記録した米国のGDP。改定値の予想は+4.0%と速報値から若干低下も、依然としてかなりの高水準。成長を支える個人消費の見通しは+3.9%と、速報値の+4.0%からこちらも若干の調整。もっとも、水準的にはかなり強めで、米国の好景気を意識させる水準を維持している。予想通りの強めの数字が維持されると、ドル買いに安心感も。ドル円は111円台での堅調な動きが見込まれる。
米PCEデフレータ(7月)
8月30日21:30
☆☆☆
 9月及び12月の米利上げに向けて鍵となる物価動向。米国のインフレターゲットの対象であるPCEデフレータが30日に発表される。予想は前年比+2.3%、同コアの前年比+2.0%と、ともに前回6月分よりも強まり、コアでもターゲットである2.0%に乗るとの見込みになっている。10日に発表された米消費者物価指数(CPI)は、前年比が予想及び前回と同じ+2.9%、同コアの前年比が予想及び前回を上回る+2.4%となった。計測方法や対象が違うため水準は異なるが、動向はほぼ似通るPCEデフレータもCPI同様にしっかりとした数字が見込まれるところ。予想通り好結果を示すと、利上げ見通しを支えドル買いにつながりそう。ドル円は112円をターゲットとして意識する展開も。
中国製造業PMI(8月)
8月31日10:00
☆☆
 中国の国家統計局による製造業PMI(購買担当者景気指数)が31日に発表される。米国との通商摩擦の深刻化が重石となっており、前回7月のPMIは2か月連続での低下となる51.2を記録した。今回は51.1と3か月連続の低下が見込まれている。好悪判断の境目となる50.0を上回っているとはいえ、やや厳しい水準となっている。予想をさらに下回り、米国との通商摩擦の影響が大きいとの印象を与えると、リスク回避の円買いにつながる可能性も。対中輸出の大きい豪ドルへの影響も大きいとみられ、豪ドル円は81円を割り込んで値を落とす可能性がある。

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