2018年09月03日号

(2018年08月27日~2018年08月31日)

先週の為替相場

週の後半に円安強まる

 27日からのドル円相場は、堅調地合いから週の半ばにかけてドル高円安が強まる場面が見られたが、週の終わりにかけて雰囲気が一変して値を落とすという展開が見られた。

 24日のジャクソンホール経済シンポジウムでのパウエルFRB議長の講演を受けたリスク選好の動きが、世界的な株高につながる形で、ドル円、クロス円を支え、ドル円は111円台での推移が続いた。

 29日には米第2四半期GDP改定値が予想外に速報値から上方修正となったことや、バルニエEU首席交渉官(用語説明1)が、ブレグジットに関するラーブ英離脱担当相との協議で、「EUは前例のない協力関係を英国に提案する用意がある」と発言したことを受けての欧州通貨高円安の動きなどに、ドル円は111円80銭台まで上値を伸ばす展開となった。

 その後もEUが米国との通商交渉の中で、自動車関税撤廃に前向きなどの報道が流れ、ドル円はしっかりの展開となったが、30日のNY市場で雰囲気が一変。

 トランプ大統領が来週にも中国に対して2000憶ドル規模の追加関税の発動を表明するとの関係者筋情報が報じられ、リスク警戒での円高の動きに。

 ドル円は111円を割り込む動きとなり、一時110円60銭台まで。週末にかけてのポジション調整で111円台を回復して引けているが、頭の重い展開に。

 ドル円以外で目立ったのはポンドの振幅。上述のバルニエEU首席交渉官発言でいったん上昇したポンド。ポンド円は143円台前半から145円台後半まで大きく上昇する展開を見せた。しかし、その後じりじりと値を落とし、上昇分を解消する動きとなった。

バルニエ氏が合意なき英国のEU離脱も準備の一つという発言を行ったことなどが重石となった。

 新興国通貨売りの動きも活発となった。高いインフレ率への懸念に加え、米国との関係悪化もあって売りが続くトルコリラだけでなく、南アランド、インドルピー、インドネシアルピア、アルゼンチンペソなどが大きく売られる展開に。中でもアルゼンチンペソは緊急会合で政策金利を60%(用語説明2)とする通貨防衛措置も下げ止まらずという展開が見られ、世界的なリスク警戒の動きを誘った。

今週の見通し

 週後半の材料をにらむ展開に。

 先週、それまでのドル高の流れを変えた米国の中国製品2000億ドル規模の追加関税発動に関しては、木曜日の発動が見込まれている。

 知的財産権侵害をめぐる対中制裁第3弾となる同追加関税については、産業界からの意見公募手続きが6日木曜日までとなっており、この期限が過ぎ次第関税を発動する見込み。

 中国もすぐに対抗措置をとる見込みとなっているが、2000億ドルは中国の米国からの輸入総額を超える水準となるため、600億ドル相当の製品に対する追加関税を発動する見込みで、関税率などで調整してくる可能性がある。ただし、関税率を高くした場合、米国がさらに対抗してくる可能性もあり、状況は不透明。

 こうした通商摩擦問題への懸念が資源国通貨や新興国通貨に対する売りにつながるようだと、リスク警戒の円買いが強まる可能性も。ドル円以外ではドル高となるため、ドル円の下げ幅は微妙となる可能性があるが、110円台半ばを試す展開も予想される。

 週後半のもう一つの大きな材料は金曜日の米雇用統計(8月)。

 今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げがほぼ確実視される状況。市場のFOMCに対する注目は、12月にも期待される追加利上げに向けたFRBの姿勢がFOMCの声明などでどのように示されるか。

 そうした中、利上げペースの決定に大きな影響を与える雇用情勢について、今月のFOMC前最後となる今回の雇用統計に注目が集まる。

 前回7月分の発表で前月比+15.3万人にとどまった非農業部門雇用者数については、+19.3万人と改善が見込まれている。弱めに見える7月分の数字にしても、6月分、5月分の上方修正が影響した格好で、決して弱いものではなく、さらに予想通り堅調な数字が出てくるようだと、ドル買いの動きが強まりそう。

 前回の3.9%に比べて0.1%の低下(低いほうが強い数字)期待のある失業率なども含め、予想通りしっかりとした数字が出てくるようだと、ドル買いに安心感も。112円手前の売りを試す展開も期待されるところ。

用語の解説

バルニエEU首席交渉官ミシェル・バルニエ(Michel Barnier)欧州委員。フランスのラファラン内閣で外務大臣などを務めたフランスの政治家。1999年から2004年までと、2010年から欧州委員会で委員を務めている。英国のEU離脱問題について、EU側の交渉担当責任者としてユンケル欧州委員長に指名される形で首席交渉官となっている。
アルゼンチンペソ 政策金利 財政赤字と経常赤字の拡大や高いインフレ率を受けて、アルゼンチンペソ安の流れが継続する中で、今年春ごろからの新興国通貨全般に対する売りもあって、アルゼンチン中銀は4月27日から5月4日までのわずか9日間で3度の緊急利上げを発表。政策金利はそれまでの27.25%から、4月27日の臨時会合で30.25%に、5月3日の臨時会合で33.25%に、5月4日の臨時会合で40%に引き上げられた。トルコリラ安などを受けて、夏ごろから新興国通貨安の動きが加速すると、8月17日の臨時会合で45%に引き上げ、さらに8月31日の臨時会合で60%まで引き上げるという措置をとっている。なお、60%への利上げを決めた31日もペソ安は継続しており、利上げ発表後に史上最安値となる1ドル42ペソ近辺までドル高ペソ安が進行している。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(8月)
9月4日23:00
☆☆
 米ISM製造業景気指数は、前回58.1と前々回の60.2から低下した。通商摩擦問題などが米企業の景況感に悪影響を与えている可能性があるとして、警戒感を誘う結果となった。今回は57.6とさらに低下の見込み。予想通りだとすると、通商摩擦問題への懸念拡大などにつながって、ドル売り円買いの動きも。週末の米雇用統計などを前に反応は限定的となる可能性があるが、ドル円は111円台が重くなる可能性も。
中国向け2000億ドル規模追加関税に関する意見聴取手続き期限 9月6日
☆☆☆
 中国の知的財産権侵害に対する追加制裁として米政府が計画する2000億ドル規模の追加関税実施に関する産業界からの意見聴取手続きの期限が9月6日までとなっている。トランプ政権は期限切れをもって、追加関税の発動に踏み切る見込みで、早ければ6日の発動決定が見込まれている。これまでに賦課された500億ドルの関税と合わせ2500億ドル規模が対象となると、昨年の中国からの米国の輸入の約半分が対象となることになる。中国からの対抗関税の実施が見込まれているが、500億ドル規模の関税賦課の時と同様に同額同率での対抗関税賦課は、中国の米国からの輸入額を超えるために不可能となっており、関税率引き上げなどでの対抗が見込まれるところ。ある程度は想定済みとなっているが、株安などの動きが広がるようだと、リスク警戒の円買いも。逆に追加関税について、実施方針は示されても実際の賦課までに時間があるようだと、いったん円売りが広がる可能性も。この場合ドル円は111円台半ばをトライする可能性。
米雇用統計(8月)
9月7日21:30
☆☆☆
 前回の7月分は予想の+19.3万人を大きく下回る+15.7万人にとどまった米非農業部門雇用者数。5月分、6月分が合わせて5.9万人の上方修正となっており、ならすと堅調な状況を維持。今回は+19.1万人と数字自体も回復が見込まれている。前回予想通りとはいえ0.1%低下して3.9%となった失業率は、今回3.8%とさらなる低下が見込まれている。平均時給なども併せて総じて強めの数字が見込まれており、ドル買いの動きにつながると期待されている。もっとも、非農業部門雇用者数の数字などはやや不安定な面がある。とくに8月分は新学期を前に教育関連などで雇用調整が起きやすい月(ある程度は季節調整されている)だけに、予想外に弱めの数字となる可能性も。その場合は110円ちょうど割れを意識するドル売りにつながる可能性も。

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